雑記帳さま主催『なるとで好奇心アンケート』に基づいた『勝手に検証』コーナー イルカ先生を幸せにできる人。 いったい誰でせう? | |
身を呈して恋人に尽くす | イビキ |
包容力抜群! | アスマ |
気持ちは判るけど… | ミズキ |
シ○タでも火影 | 四代目 |
新興里長の野望と自信 | 大蛇丸 |
若さと元気じゃ誰にも負けない! | ナルト |
老いてますます盛ん | 三代目 |
夢を叶えてくれるヒト | カカシ |
絶対いい人だと思います、イビキさん 「イルカ、今帰ったぞ」 暗部拷問尋問部隊隊長・森乃イビキ。その肩書きと傷だらけの面構えから、仲間の忍からも密かに恐れられている男__と、同一人物とはとても思えない明るい口調で、イビキは恋人の家のドアを開けた。 「お帰りなさい、イビキさん」 棒読み?ってくらい冷淡な口調で答えたのはイビキのスイート・ハートにして木の葉のアイドルのイルカだ。 いつもなら一瞬で疲れが吹き飛ぶような笑顔で迎えてくれるのだが、今日は虫の居所が悪いらしい。 イルカの不機嫌そうな様子に、イビキは感情を害し……たりはしなかった。 むしろ彼は、ふつふつと湧き上がる喜びに内心、打ち震えた。 暗部拷問尋問部隊隊長のイビキはあらゆる拷問術に長けているだけではなく、人間心理の隅々まで知り尽くしている。虫の居所が悪い恋人のご機嫌取りなどお手の物だ。 「イルカ!これで俺をぶってくれ!」 いきなり服を脱ぎ捨てると、その下は奴隷衣装(?) 半端で無い数と種類の傷跡だらけのカラダに、棘のついた首輪と破れた皮の腰布がマッチして、アヤシイ雰囲気をかもし出している。 「……そうですね。イビキさんがそう、おっしゃるなら……」 言って、イビキの手から鞭を取ったイルカの眼は据わっていた。 検証 癒し系のイルカにも、腹の立つ事もあれば、苛立つ時もある。 癒し系アイドルのストレス解消に、身を呈して思いっきり八つ当たりさせてくれるイビキは、中々お似合いかも知れない。 |
包容力はありそうな髭熊・アスマ兄ちゃん ミズキに唆されたナルトが巻物を持ち出した事件の数日後。 「痛っ…」 「大丈夫か、イルカ?」 短く呻いたイルカの肩を抱いて、アスマが声をかける。 途端にイルカは赤くなった。 「な…何するんですか、アスマさん。ここはアカデミーですよ?誰かに見られたら……」 二人がいるのはアカデミーの中庭。 授業の終わった後、一緒に帰ろうとアスマがイルカを迎えに来たのだが、イルカにはまだやり残しの仕事があった。 「ガキどもは帰ったし、遅くまで残って仕事をしようなんてのはお前だけだろ。ったく、働き過ぎなんだよ、お前は」 火影のじじいに頼んで仕事を減らしてもらう__そう言ったアスマを、イルカは慌てて止めた。 「駄目ですよ、アスマさん。いくらあなたが三代目の甥でも、仕事に私情を持ち込むのは止めて下さい」 「背中の傷が治るまでって事なら、文句無いだろ?」 「でも…背中の傷はもう、治ってるんですよ」 イルカの傷の治りは早い。 事件の後、早々に職場復帰できたのも、そのお陰だ。 「背中の傷でなきゃ、どこが痛むんだ?」 「…そ…れは……アスマさんが昨夜、あんなに締め付けたから……」 ぼそぼそと、聞こえるか聞こえないかくらいの声で言ったイルカの言葉に、今度はアスマが真っ赤になった。 「あんなにきつかったんだから、アスマさん、痛かったんじゃないですか?」 「…いや、俺は……その…大丈夫…だ…」 耳まで赤くなって俯く髭熊の姿に、イルカはくすりと笑った。 「アスマさんのそういう可愛いところが好きですよ?」 言って、イルカはアスマの頬に軽く口づけた。 検証 両親を亡くして以来、寂しがり屋になったイルカを、アスマの包容力で優しく包んであげれば二人とも幸せになれるだろう。 包容力=包み容れる力がこんな意味で無い事は、言うまでも無いが。 |
ナルトそそのかしはイルカのためにやったのよね、のミズキ 「くぅっ…」 「イルカ……!」 ナルトを庇って自分の投げた手裏剣をまともに喰らったイルカに、ミズキは慌てて駆け寄った。 「イルカ!大丈夫か、イルカ!俺はこんな積りじゃ__」 「ミズキ…どうしてナルトを唆したり、巻物を盗んだりしたんだ…?」 「全て…全て、お前の為なんだ…!」 ミズキの言葉に、イルカは改めて相手を見た。 「ナルトを庇ってるって事でお前が周囲から白い眼で見られてるのが、俺には耐えられない。ナルトが犯罪者になってしまえばお前がナルトを庇うこともなくなるだろうし、巻物を手に入れて強くなればお前が俺を認めてくれるようになって、一石二鳥だと思ったんだ」 「ミズキ…どうしてお前、俺の事をそんなに…」 不審そうに問うてくるイルカの両腕を、ミズキは掴んだ。 「イルカ…。俺、子供の頃からずっとお前のことが好き__」 「イルカ先生に手ぇ、出すな」 地を這うような低い声。 と殆ど同時に、ミズキは凄まじいチャクラの力に翻弄され、木に叩きつけられた。 「イルカ先生!大丈夫かよ!?」 「ああ……。それにしても」 イルカは倒れている同僚を見下ろした。 「顔は良いけど、昔からやる事がどっかズレてる奴だったよな……」 検証 この後、ミズキは再起不能となり、その姿を見るものはいなくなった。 ミズキが再起不能に陥ったのは、ナルトにボコられたからでも、「木の葉のアイドル」に怪我をさせたせいでイルカ・ファンの群れに簀巻きにされたからでも無く、イルカの冷たい一言が原因だったのは、言うまでもない。 |
肝心の四代目、忘れてましたわ… 「しめなわ先生、こんにちはー」 「イルカちゃん、よく来たね〜♪今日は口寄せの術を教えてあげるよv」 満面の笑顔で、四代目火影候補は仔イルカを迎えた。 その様子を物陰から見つめるのは四代目(候補)の弟子たち。 「…ったく先生の奴、また俺たちの事ほっといて、あんなチビに術を教えてるし」 「でもあのイルカって子、可愛いから先生の気持ちも判るよなー」 「オビト…!お前まで何を言い出すんだよ?」 カカシの抗議に、オビトは軽く肩を竦めた。 「良いじゃないか。俺たちはもう、中忍なんだ。先生にべったり指導して貰わなくても自分たちで修行くらい出来る」 「何言ってんだ。あのチビはまだアカデミーにも行っていないほんのお子様なんだぞ?そんな子に先生、この前なんか禁術まで教えてたし」 「もしかしてカカシ、イルカの事が心配だから怒ってんのか?」 オビトの言葉に、カカシは真っ赤になった。 「君たち、こんな物陰で何やってんのかな〜?」 慌ててカカシがオビトの言葉を否定しようとした時、彼らの目の前に四代目(候補)が現れた。 「せっ…先生こそ、アカデミー生でもないチビに術を教えるなんて、何考えてんのさ?」 「チビって言うけど、イルカちゃんはカカシ君と一つ違いだよ?」 カカシ6歳。 イルカ5歳。 充分に『チビ』だと、カカシとオビトは思った。 「イルカちゃんはねー、将来、先生のお嫁さんになる大切な人なんだ。だからアカデミーには入れずに直々に術を伝授するのさ」 仔イルカの肩を抱き寄せ、嬉しそうに宣言した師匠に、弟子二人は固まった。 「…でも僕、男の子だよー?」 不思議そうに四代目(候補)を見上げ、仔イルカは言った。 「大丈夫。僕が火影になったら、男同士でも結婚できるように法改正するから」 「んー、でも僕、やっぱり男の子だし…」 ちょっと悩んだ仔イルカは、すぐに何かを思いついたらしくぱあっと笑顔を見せた。 「わかった!しめなわ先生が僕のお嫁さんになってくれれば良いんだ♪」 …何の解決にもなって無いぞ; 「年下攻めも萌えだよね〜」 …良いのか、それで? ってか、アンタ本当に火影候補か!? 弟子二人の心のツッコミを他所に、四代目(候補)と仔イルカは楽しそうに見つめ合っていた。 検証 火影になるには術や技が優れているだけではなく人望も必要な筈だが、5歳の幼児に懸想するしめなわ先生がそれでも火影になれたのは、男同士の結婚を有効にする法改正を望んだ者が多かったからなのか。 九尾事件が無ければ、この20年後に25歳攻めと38歳(推定)受けのカップルが成立していた事になる。しめなわ先生は気が若く、イルカ先生はしっかり者なので、結構うまくやっていけた事だろう。 |
その他この人なら!の番外編・大蛇丸 「君は良いわよね…。もう、手に入れたんだからね…」 サスケの呪印を封印したカカシは、その場に現れた伝説の三忍・大蛇丸の姿に身構えた。 「まさか、アンタ…」 「クク…」 「アンタもイルカ先生を狙っているのか!?」 「……は?」 固まる大蛇丸。 「イルカ先生は絶対、絶対、ぜえ〜ったい誰にも渡さないぞ!並み居るライバルをかき分けて、木の葉のアイドルをゲットするのにどんなに苦労したと思ってるんだ!」 「……カカシ君。私が欲しいのは写輪眼、うちはの力よ?」 「…目的は何だ?」 「最近、出来た音隠れの里。あれは私の里でね…。これだけ言えば、判るわよね?」 強大で邪悪なチャクラを揺るがせながら冷笑した大蛇丸に、カカシは愕然とした。 「そうか…矢張り、狙いはイルカ先生だな?」 「……だから。何でそうなるのよ?」 「新しく出来た里では人材育成は焦眉の急務。となれば抜群のバランス感覚と生徒に慕われる公正さで理想の教師であるイルカ先生は、真っ先に手に入れたい人材の筈だ」 カカシの言葉に、腕を組み、思案する大蛇丸。 「それに出来たばかりの里は何かと情勢不安定になりやすい。そういう時こそ、癒し系アイドルの存在は里をまとめる何よりの力になる」 「…良い事を聞いたわ」 「……へ?」 大蛇丸の言葉に、今度はカカシが固まった。 「決めたわ。イルカちゃんを里に連れ帰って、私の腹心、いいえ秘書として働いて貰うわ」 「そんな事、させてたまるか!」 カカシは印を結び、チャクラを右手に集中させた。 「いくらアンタがあの三忍の一人でも、今の俺ならアンタと刺し違える事くらいは出来るぞ…!」 何より、とカカシは続けた。 「愛しいイルカ先生をアンタみたいな邪悪な奴に渡してなるものか!」 「君みたいなヘタレ変態上忍に言われたく無いわよ」 大蛇丸の言葉に、カカシは詰まった。 「里に連れて帰ったらイルカちゃんのこと、とっても大切にしてあげるわよ。専用のプール付き別荘と送迎用リムジンを用意して、上げ膳据え膳三食昼寝にメイド・執事付き昇給年2回、賞与年4回の高給優遇よ?ここにいて教師と受付の仕事に忙殺されているより、よっぽど幸せじゃない?」 それに、と大蛇丸は続けた。 「私は元々仔イルカちゃんに目をつけていたのに、三代目と四代目がこぞって邪魔してくれて…。思い出してもムカつくわ」 「もしかして…アンタが里を抜けたのは__」 「そうよ。でも今度こそ、イルカちゃんは私が貰うわ」 大蛇丸は不敵な笑みを口元に浮かべ、カカシの雷切を軽く無視して踵を返した。 「イルカちゃんは必ず私を求める。高給優遇を求めて…ね」 強大なチャクラに圧倒され、為すすべも無く去ってゆく大蛇丸を見送ったカカシの脳裏にあったのは、『恋人の自慢はするな__貸し出す積りが無いならば』という異国の格言だった。 検証 真面目で働き者のイルカ先生も人の子。上げ膳据え膳三食昼寝付きの高給優遇にはそれなりに惹かれるだろう。音の里の忍たちは皆どこか心が歪んでるっぽいので、彼らを矯正し、まっとうな人の道に導く仕事に生き甲斐を見出す可能性も低くない。 『捨て駒』に対しては冷たい大蛇丸様も、イルカ先生には優しいに違いない。 大穴と言うより、落とし穴(?)的にお似合いのカップルと言えるだろう。 |
年下の彼・ナルト少年 「俺はもう、ガキじゃないんだぜ?」 中忍選抜第三試験で無茶をするのでは無いかと心配したイルカに、ナルトは言い放った。 「イルカ先生も認めてくれた、忍なんだ!」 その姿を見て、「成長したな」と、イルカは思った。 嬉しくもあり、少々、寂しくもある。 手塩にかけて育てた子供たちが立派な忍になるのは嬉しい。 だがそれは同時に、彼らを危険な任務に駆り立てる事にもなるのだ。 「イルカ先生。俺は、火影になる男だってばよ」 「…ああ…そうだな、ナルト」 「でもって、里中の奴らに、俺とイルカ先生の仲を認めさせるんだってばよ!」 「「……は?」」 側で聞いていたサスケとサクラは、ナルトの宣言に固まった。 「こ…こら、ナルト。サスケやサクラの前で__」 「隠すことねぇじゃねーか、イルカ先生!別にハズカシイ事、してる訳じゃねーし」 子供特有の天真爛漫さで言い切るナルトに、イルカは幾分かうろたえた。 「…い…嫌、何て言うか……俺も一応、教師な訳だし、青少年保護条例に違反してるのが公になるのはマズイかと…」 「「…これだから大人なんてキライだ/フケツよ!」」 サスケとサクラの冷たい眼差しにイルカは困惑したが、ナルトは構わずイルカに抱きついた。 「中忍になれば木の葉の里では年齢に関係なく成人扱い。だから先生、俺、頑張って中忍になるんだってばよ!」 「俺も楽しみにしてるぞ、ナルト…!」 「「…ホモヤローどもが…」」 楽しそうに抱き合うイルカとナルトの姿にすっかり当てられた二人は、他人の台詞をダブルでパクルのであった。 検証 イルカ先生は真面目なので、この時点ではせいぜいキスどまりであろう。子供であるが故に大胆、何も知らないが故に積極的なナルトに今はやや押され気味だが、ナルト中忍合格の暁には知る人ぞ知る絶○ぶりでナルトをリードするに違いない。 ある意味、本命カップル。 |
その他この人なら!の番外編その2・三代目 「三代目、お呼びですか?」 「おお、イルカ。来たか」 火影執務室に現れたイルカの姿に三代目は相好を崩した。 「美味い菓子が手に入ってな。一緒に食べよう」 「じゃあ、俺お茶を淹れますね」 言ってイルカは微笑んだが、その笑顔に幽かな翳りがあるのを三代目は見逃さなかった。 「どうした、イルカ。何か悩み事でもあるのか?」 「…流石ですね。三代目の前では隠し事は出来ません」 苦笑して、イルカは続けた。 「俺も25歳。そろそろ所帯でも持ちたいと思っているんですが、中々決められなくて…」 実は何人かからプロポーズされているのだが、一人に決めかねているのだとイルカは言った。 「三代目なら豊かな人生経験と高い見識をお持ちです。どの人にしたら良いのか、助言を頂けますか?」 「おお、勿論じゃ。で、お主を迷わせている相手とは、誰と誰なんじゃ?」 「イビキさん、アスマさん、ガイさん、カカシさん、ナルトにサスケ。生前の四代目にプロポーズされた事もありました」 幽かに頬を染め、幾分か恥ずかしそうにイルカは言った。 ちなみにミズキはプロポーズする前にナルトにボコられ、再起不能である。 「……イルカよ……」 三代目は固まった。 優しく誠実なイルカは老若男女、誰からも慕われ可愛がられている。 が、それにしても何ゆえプロポーズするのが男限定なのか…… 「それで実際にお付き合いもしてみたんですけど、皆さん良い人ばかりで甲乙付け難いんですよね」 それわつまみ食いと言うのでわ……? 里のエリート上忍を片っ端から喰い散らかし、果ては教え子だった少年たちの味見までするイルカ__三代目はあらぬ妄想をかきたてられ、思わず身体が火照るのを感じた。 68歳とは言え、木の葉の忍の頂点に立つものとして、その気力・体力・妄想力はいまだ衰えてはいない。それどころかイルカのストライク・ゾーンが恐ろしく広い事を知って、初めて恋を知った乙女の様に期待に胸が震える。 「流石に大蛇丸から誘いが来た時は断りましたけどね」 「何…?」 大蛇丸の名に、三代目の表情が強張った。 13歳年上(推定)の四代目はOKでも、25歳年上の大蛇丸はNGなのか? それとも、プロポーズした時の四代目はまだ若かったから良かったが、50歳の大蛇丸では洟も引っ掛けて貰えないのか? それなら43歳年上、70近い自分に可能性は無いのかと、ずーんと落ち込む三代目。 「『専用の別荘を用意して、上げ膳据え膳三食昼寝メイド・執事付きの高給優遇でも不足なら、自家用ヘリとヨットまで付けるから』と言われたんですけど、里を裏切るなんて出来ませんから」 里を裏切ることは出来ない⇒里長を裏切ることは出来ない⇒里長を愛している 明るく笑って言ったイルカの言葉は、三代目の脳内で妄想変換された。 「決めた!イルカよ、わしと結婚してくれ!」 「…三代目…とですか?」 突然のプロポーズに、イルカは驚いて何度か瞬いた。 「わしと結婚すればわしの財産の全てを独り占めに出来るぞ?株や不動産は勿論、禁術の巻物や強力な式神、里の運営の決裁権全てもお主にやろう」 「…何だか楽しそうですね。じゃ、お試しに1週間だけお付き合いしてみますか?」 死亡保険金の受取人も俺にして下さいね__にっこり笑って言ったイルカに、火影は天使の姿をした悪魔を見たのだった。 検証 イビキもアスマもガイもカカシもサスケもナルトも甲乙付け難い……となればこの人しかいないだろう。 大蛇丸同様、権力でイルカを射止めようとするいぢましさは問題だが、ストライク・ゾーンの広いイルカ先生の目には、それもチャーム・ポイント(死語)として映るに違いない。 大蛇丸と三代目のすさまじい死闘がイルカを賭けての戦いだったことは、当事者以外、誰も知らない。 |
変態でもへたれでも一応上忍・カカシ氏 はたけカカシ。 『写輪眼のカカシ』『木の葉一の業師』の通り名を持つ男。 6歳で中忍となった天才。 暗殺戦術特殊部隊出身のエリート。 敵に恐れられるのは勿論、味方からも畏敬の念を抱かれ、操る術は千以上。 口布と額宛に隠された素顔は端整にして秀麗。 里中の女性の憧れの的にして、男たちの羨望の的。 が。 イルカにフラれた。 「イルカ先生、酷いです〜。俺が何をしたって言うんですか?俺のどこが気に入らないんですか?」 思い切り涙目になって縋りつく上忍を、イルカはいかにもウザそうに振り払った。 「気に入らないとかじゃありません。お試し期間が過ぎただけです」 「そんな……」 「最初に言っておいたじゃありませんか。お付き合いするのは1週間だけですって」 カカシの何十回目かのプロポーズの時、イルカは「1週間限定のお試しならば」と、首を縦に振ったのだ。カカシもその事を忘れた訳では無い。 しかしカカシには勝算があった。 それに真面目で誠実なイルカが一度、付き合った相手をそうそう簡単にフル筈は無いと踏んでいたのだ。 が、カカシの読みは甘かった。 イルカは1週間の期限はきっちり守り、それが過ぎたらカカシを家に入れないのは勿論、馴れ馴れしく話すのも厳禁するほど『真面目』で、プロポーズしてくる相手は基本的に皆、平等に扱うくらい『誠実』だったのだ。 「だって、イルカせんせ。『お試し期間』っていうのは試してみて良かったらそのまま続けるからお試し期間なんじゃありませんか。って事は俺のことが気に入らなかったんですか?」 今にも泣き出しそうな声で言ったカカシに、イルカは困ったように眉を顰めた。 この1週間、カカシは確かに努力していた。 『付き合っているのを周りに知られたくない』というイルカの望みを叶える為に、火影や他の上忍たちの前で口論もして見せた。 その後、ナルト達の合格祈願を名目に神社でデートして、フォローするのも忘れなかった。 面倒見は良いが、実は大雑把でちょっと不器用なイルカの為に、毎日料理も作った。 他の男と寝ていた頃は単なる欲求処理と割り切ってマグロだったカカシが、真面目だが実は絶○のイルカの為に、イチャパラで得た知識を総動員して頑張った。 それなのに、あっさりフラれるとは。 「俺の何処が気に入らないんですか?言って下さい、直しますから…」 「カカシさん……」 上忍の癖に、ヘタレで変態なトコロがだよ__普通なら、そう言っているだろう。 だが、イルカは違った。 どんな落ちこぼれでも見棄てずに可能性を信じてやるイルカは、常人には短所と映る点も、その人の個性としか思わないのだ。 「……カカシさんの事が気に入らない訳じゃないんです。でも、俺……」 「何なんですか?言ってください、イルカ先生…!」 「俺…他の方々からもプロポーズされていて、ウェイテイング・リストの後が詰まってるんです!」 「……うぇいていんぐ・りすと……?」 呆けた表情で問い返したカカシに、イルカは頷いた。 「皆さん、俺みたいに平凡な中忍に好きだと言ってくれる、優しくて素晴らしい方々ばかりなんです。だから、どうしても一人に決められなくて……」 カカシさん、済みません__言って去ってゆくイルカの姿を、カカシは呆然と見送った。 検証 「っと待った!俺がこんなコトでイルカ先生を諦める訳ないでショ?」 「イビキ、アスマ、ガイ、ナルト__」 「ナルト!?あいつまでイルカ先生にプロポーズしてたのか?」 情報収集用に訓練された忍犬・パックンの報告に、カカシは半ばブチキレそうになった。 今まで人目も憚らずイルカに抱きつくナルトを妬ましく思っていたのだが、お子様相手に嫉妬など大人気ないと、ぐっと堪えて来たのだ。 それが裏目に出たとは……中忍選抜本試験を前に、ナルトの指導を放棄しようとカカシが心密かに決めたのは、この瞬間だ。 サスケもイルカにはプロポーズしていたのだが、流石のパックンにも調査漏れはあった。 ちなみにナルトとイルカがいちゃつく姿を冷たい目で見ていたのは、『ドベ』に先を越されてエリートのプライドが傷ついたからである。 「大蛇丸と三代目もだ」 「火影様まで__まあ、うちの先生も『イルカちゃん♪』とか鼻の下伸ばしてたしな……」 呟くように言って、カカシはありし日に想いを馳せた。 四代目が可愛がっていた黒髪の少年。 純粋で無垢で、素直だけど負けず嫌いで、笑顔が天使のように愛らしくて__思えば、あれが自分の初恋だったのだ。 本当は仲良くなりたかったけれど四代目に邪魔され、碌に声をかけることも出来なかった。 九尾事件が起きて四代目は死に、カカシは暗部に入った。 そして、イルカの事は忘れた__筈だった。 けれども再会したその日、もう一度、恋に落ちた。 この想いだけは諦められない__絶対に。 「…よし、パックン。次はイルカ先生にプロポーズした身の程知らずどもの身辺調査だ。特に、どこがイルカ先生の気に入ったのかを徹底的に調査するように!」 「…ったく犬遣いの荒い主人だ」 ぼやきながらパックンが踵を返そうとした時、カカシは違和感に気づいた。 首のところにバンダナのような物を巻いている。 しかもそれはふくらんでいて、中に何か入っているようだ。 「パックン。首んとこに巻いてるそれ、何だ?」 「こ…これは……」 問い質され、パックンは幽かに頬を赤らめた。(犬の顔が赤くなるのか?) 「何でもない。ただちょっと__」 「お前の主人は誰だ?」 カカシの言葉に、パックンは幽かに身震いした。 忍犬は、その主人には絶対服従。 命令に逆らうことは、いついかなる状況下であろうとも許されない。 主人と忍犬の間には厚い信頼関係もあるが、厳しい主従関係がある事に変わりは無い。 「これは……イルカに貰ったクッキーだ」 「……は?」 耳まで赤くなりながら(犬の耳が赤くなるのか?)、パックンはイルカからクッキーを貰った経緯を話した。 パックンは密かにイルカの尾行をしていたのだが、イルカに気づかれてしまった。 イルカが犬好きなのを知って、パックンは咄嗟にただのペットの振りをし、イルカにおやつまでもらってしまった。 無論、カカシに気づかれる前にクッキーは食べてしまう積りだったが、調査結果の入手を焦るカカシの口寄せで呼び出された為、証拠隠滅が間に合わなかったのだ。 「……イルカ先生、犬、好きなの?」 「あ…ああ。間違いない。どんな凶暴な犬でも手懐けるくらいの犬好きと見た」 「…ふうん…」 どんな罰を喰らうかと内心、おののいているパックンの前で、カカシは思案気に腕を組んだ。 翌日。 「イ・ル・カ先生〜♪」 「あ、カカシ先生。今日は」 アカデミーの校門前。帰り際のイルカを待っていたカカシは、満面の笑顔でイルカに歩み寄った。 無論、忍犬パックンを従えて。 「あれ?この子、カカシ先生の犬だったんですか?」 可愛いですね、と、しゃがんでパックンの頭を撫でるイルカの姿に、カカシは内心ガッツポーズを取った。 「イルカ先生、犬がお好きなんですね?」 「ええ。俺、ガキの頃、犬を飼うのが夢だったんですよ。でも家は集合住宅だし、両親とも忍で任務で家を空ける事もあるから飼えなくて…」 「イルカ先生。俺がアナタの夢を叶えてあげますよ」 さりげにイルカの手を握り、カカシは言った。 「今、俺のプロポーズを受けてくれれば、もれなく訓練の行き届いた忍犬と、犬の飼える家が付いてきますよ?」 「え?…でも……」 躊躇うイルカ。 カカシがイルカに気づかれないように合図を送ると、パックンは千切れんばかりに尾を振ってイルカに飛びつき、イルカの喉を舐めた。 「うわっ…くすぐった……!」 「おい、パックン。それはやり過ぎ__」 「あはは…やめろってば__はは…可愛い……」 幽かに頬を上気させて犬と戯れるイルカの姿はとても楽しそうで幸せそうで、カカシは少年の頃を思い出した。 まだイルカの両親も、四代目もオビトも生きていた頃の、幸せな記憶を。 あの頃はただ任務に明け暮れるだけだと思っていた。 だが、今思い起こせば確かに幸せだったのだ__大切な人たちが、いたから。 今は皆、逝ってしまった。 目の前の、ただ一人を除けば。 「…イルカ先生…?」 背後からイルカをそっと抱きしめ、カカシは言った。 「俺と…一緒に暮らしませんか?」 「……はい」 「ご飯の時間だぞー」 わんわん、ばうわう♪ イルカの周りを取り囲んで千切れんばかりに尾を振る忍犬たちの姿に、カカシは思いっきりむくれた。 イルカは今はカカシの家で一緒に暮らしている。 朝、出掛けるのも、夕方、帰るのも、途中でスーパーに寄るのも、食事を作るのも一緒だ。 無論、忍犬も。 忍犬たちは異常なまでにイルカに懐きまくり、寝る時までイルカと一緒だ。 主人以外からの餌を拒絶し、主であった忍が死ねば餓死するか野生化するかが常の忍犬が、カカシよりイルカの餌を欲しがって尻尾を振る。 それ自体は、カカシは問題視していない。 問題は、忍犬たちに邪魔されてイルカと思いっきりイチャパラ出来ない事だ。 「…イルカせんせ〜。俺のご飯は〜?」 「ホラ、皆の分、あるんだから慌てるな__何か言いましたか、カカシさん?」 「……俺のご飯」 「カカシさんは自分で勝手に食べれば良いでしょう?」 わんわん、ばうわう♪ 「……イルカせんせい。俺と忍犬と、どっちが大切なんですか?」 「忍犬はそんな事、言いませんよ?」 わんわん、ばうわう♪ 勝ち誇ったように吼える犬たちに八つ当たりする事も出来ず(すればイルカに嫌われる)、カカシは一人、悔恨の涙に暮れるのだった。 検証 身を呈して尽くしてくれる男よりも、抜群の包容力よりも、決死の痛い愛よりも、優秀な青年里長よりも、上げ膳据え膳三食昼寝付きの高給優遇よりも、純粋無垢な弾ける若さよりも、5代目火影の座すら左右できるほどの権力よりも、イルカが望んだのはささやかな幸せであった。 幸せの青い(?)忍犬は、身近なところにいるものである。 |