(4)

その日、オラトリオはいつものようにオラクルの仕事を手伝っていた。
「こっちの整理、終ったぞ」
「じゃあ、お茶にしようか」
にっこり微笑んで、オラクルは言った。
程なく、オラクルはティーセットを銀のトレイに載せて戻ってきた。ティーポットから香り高いダージリンをカップに注ぐ。
「この前、エモーションに貰ったクッキーの残りがまだあるけど。食べる?」
思い出したようにオラクルが言うと、オラトリオはにやりと笑った。
「クッキーなんぞより、お前が食いてえ」
オラクルは真っ赤になった。
「ば…何、馬鹿なこと言ってるんだ」
「良いじゃねえか__痛くしねえからさ」
オラトリオはオラクルの肩に腕を回して抱き寄せ、耳元で囁く。
「だけど…お前が食べちゃったから、もう私にはケーブルが一本も残ってないんだぞ」
恨めしそうに言うと、オラクルは黒衣の裾を少しめくった。外見上は脚があるようにふくらんでいるが、黒衣の中には何も無い。まるで銀○鉄道999の車掌さんのようである。
「全部、喰っちまったんだっけ?沢山あったから、まだ残ってるかと思ったがな」
美味かったよなーと、暢気に笑うオラトリオを、オラクルは恨めしそうに見上げた。そのオラクルを、オラトリオは間近に見つめる。
「なあ…もうちっと、良いだろ?」
「駄目だってば!これ以上、食べられたら__」
「顔とか手とか、見えるとこだけ残しときゃ良いだろうが」
言いながら、オラトリオはオラクルの首筋に唇を這わせた。肩のラインに沿って口づけを繰り返し、時折、軽く噛む。
「やっ……あ…っ」
逃れようとするオラクルをしっかりと抱きしめながら、オラトリオは尚も口づけを繰り返した。その一方で、巧みにローブを脱がせ、黒衣をはだけさせる。
オラクルの肩と腕が露になる。
真っ白で滑らかで、とても柔らかそうだ。
オラトリオは舌なめずりをした。
「頂きます♪」
そして__



オラトリオお兄さんて、人喰い鬼さんだったんですか!」
恐怖に固まりつつ、ちびは叫んだ。
残りの面々も、固まっている。
「…あのさあ、ちび。それは違うよ」
いち早く回復したのは、意外(?)にもシグナルだった。
「オラクルにはちゃんと脚、あるよ。僕、確かめたこと、あるし」
「確かめただと!?貴様、それは一体どういう事だ!」
シグナルの訳の判らない発言に、コードは更に訳の判らない反応を示した。
「返答次第によってはただではおかんぞ!」
訳の判らない勢いのまま、細雪を抜き放つ。
「……あんたら、いい加減にして下さい……」
コードを止めたのは、地の底を這うようなオラトリオの声だった。
来訪者4人ははっと我に返ってオラトリオを見た。
思いがけないシーンを目撃し、思わずハイになってぶっ飛んでいたのだが、漸く冷静さを取り戻したのだ。
見れば、オラトリオはコートを身に着けたいつもの格好に戻っている。が、オラクルの姿は無い。
「オラトリオ様…オラクル様は…?」
「あんた達が訳の判らねえ事で騒ぎ立てたから、居たたまれなくなって奥に引っ込んじまったんですよ」
これじゃ、仕事にも何にもなりゃしねえ__思いっきり不機嫌なオラトリオの言葉に、4人は顔を見合わせた。
「だ…だが、俺様は__」
「俺はオラクルに狼藉を働いても誘われても押し倒しても喰ってもいませんぜ!勝手な妄想で騒ぐのは止めてください」
コードは尚も不満そうだったが、エモーションに袖を引かれた。
「お仕事のお邪魔をしてはいけませんから、そろそろお暇いたしましょう」
「……うむ」
渋々と、コードは頷いた。
「オラトリオ様、これ…ケーキを焼いて持って参りましたの。オラクル様とお二人で召し上がってくださいましね」
「それは良かったです!ケーキがあれば、オラクル君、食べられなくて済みます!」
元気良く言い切ったちびの口をシグナルが押さえ、エモーションはケーキの箱をオラトリオに押し付けるようにして手渡し、そそくさと4人の騒がしい来訪者は帰っていった。
「……疲れた……」
思いっきり溜め息を吐き、オラトリオは言った。
そして……



next/back