(5)

「だから俺、ホールじゃまずいって言ったじゃねえか」
お騒がせな4人組が帰った後、プライヴェートルームで、オラトリオは言った。
「だって…ここで服を脱いだりしたら、お前、変な気、起こすだろう?」
恨めしそうにオラトリオを睨み、オラクルは言った。
「変な気って……」
それはホールにいても変わらない。ただ、『プライヴェートエリア以外では駄目』とオラクルから何度も釘を刺されているから、必死になって衝動を抑えているに過ぎない。
が、そんな事を言ってしまえば不必要(?)にオラクルを警戒させてしまう。
「それより、まだ痛むのか?」
「うん…すごく痛いって訳じゃないけど、痛痒いっていうか…」
見せてみろよ__言われて、オラクルはオラトリオに背を向けた。そして、ローブと黒衣を半ば脱ぎ、左肩を剥き出しにする。
左の肩甲骨の下あたりが、虫にでも刺されたように赤くなり、僅かに腫れている。
改めて、オラトリオはウイルスチェックをした。4人が乱入して来たのは、1回目にチェックをした直後だったのだ。

「ちょっとしたプログラムの損傷みてえだな。心配はいらねえぜ。この程度なら、俺にも治せる」
慎重にウイルスという言葉を避けて、オラトリオは言った。
侵入者にトラウマを持つオラクルは、『ウイルス』や『侵入者』という言葉だけでも恐怖を感じ、怯えるのだ。
「お前があんまり強く…ったりするから…」
オラトリオの言葉に安心したのか、少し拗ねたようにオラクルは言った。オラトリオは即座に修復プログラムを作り、オラクルの背に舌を這わせた。
「丸1日経っても痕が残るほど強くは吸ってねえぜ?」
囁く様に言いながら、赤く腫れた辺りを丁寧に舐める。
オラクルは、背筋がぞくりとするのを覚えた。
オラトリオはオラクルのわき腹を軽く押さえ、柔らかく舌で触れた先から修復プログラムを送り込む。
「…腫れは引いたみてえだが?」
「ん…有難う、オラトリオ。もう何とも無いよ」
言って服を着ようとしたオラクルを、オラトリオは押し止めた。
「まだ他にも痛ぇとこ、あるだろ?」
にやりと笑った人の悪い表情に、オラクルの頬が赤く染まる。
「も…もう、どこも痛くないよ。大丈夫だってば」
「大丈夫かどうか、ちゃんと確かめねえとな。お前の全てを護るのが俺の役目なんだから」
「オラト__っあ…」
ベッドに沈められ、オラクルは軽く抗議の声を上げた。間近に見つめて来る紫の瞳は、とても優しく、同時に荒々しい。
見つめられているだけで、身体が奥から熱くなってゆくのをオラクルは感じた。
「この辺…痛ぇだろ…?」
言いながら、オラトリオはオラクルの鎖骨に軽く歯を立てた。
「痛くな__痛っ…」
少し強く噛まれ、オラクルは小さく悲鳴を上げた。
「だーかーら。無理すんなって」
「ば…馬鹿!それはお前が噛んだか…ら…」
黒衣の下に忍び込んだオラトリオの手の動きに、オラクルの声がうわずる。
「…ここは?」
胸元に唇を這わせ、囁くようにオラトリオは聞いた。
「い…痛い…」
痛くないと言えばまた噛まれると思って、オラクルは言った。オラトリオは軽く笑い、ゆっくりと舌を蠢かす。
しなやかなそこは、愛撫に反応してたちまち硬く尖った。
「他にも痛ぇとこ、あんだろ?…言っちまえよ。治してやるからさ…」
「厭__ぁあっ……」
オラトリオはオラクルの黒衣を脱がしながら、柔らかな肌に舌を這わせた。時折、強く吸って、雪のような白い肌の上に赤く痕を残す。
「__トリオ…そん……又、プログラムが…」
「そん時ゃ、また治してやるぜ」
オラクルの耳元で優しく囁き、オラトリオは愛撫を続けた。






翌日、現実空間に戻ったオラトリオは、T・A研究所内の行く先々で白い目で見られた。
オラトリオがオラクルを『夜な夜な食べている』のだと、ちびが言いふらしたのが原因である事は、言うまでもない。






コメント
7000を踏まれた阿鬼羅さんに捧げる「もう一生やってなさいってくらいにらぶらぶでいちゃいちゃでほのぼので、でも、ばっちり裏行き決定な『長編』のO2」です。
「少なくとも5話以上」というご指定でしたので何とか頑張ってみましたが…
『不幸』とか『トリオいぢめ』とかの要素抜きで長く書くのって苦手なんです〜;;
と言う訳で、こんなんになりましたが、これで納得してやって頂けますか……?(脱兎)


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