「イッルカ先せ…じゃないな、イルカちゃんv イ・ル・カvv」 上忍は壊れていた。5・6才の子供を一人占めして、にたにたと笑み崩れている。 「………あれが…私達の上司、なのよね……」 「言うな」 「俺もイルカ先生と遊びたいってばよ」 部下の少年少女達が呆れるのも目に入っていない。 「お、そういえば」 あまりの崩れように呆然としていたイビキが我に返った。 「カカシ、あまりその子にかまうな。名前もちゃんと偽名の方を呼べ」 「サディストがなんか言ってまちゅねー」 無視して仔イルカで遊ぶカカシにイビキの額に青筋が立った。 「この馬……」 怒鳴りかけた時。 「まあv なーんて可愛いの。想像以上っ!!」 カカシの手から仔イルカをひっさらう紅がいたりした。 「なんだ、紅。こいつのことは一応極秘になってるはずだぞ?」 イビキが言うと、紅は仔イルカに頬擦りしながら答えた。ちなみに銀髪の上忍は紅に蹴り飛ばされた後、子供達の手によってグルグル巻きにされている。もちろん猿轡つき。 「んー、任務よ、任務。アスマから声かけられたの。カカシを1人で押えるのなんて無理だからって」 そういうアスマはイルカを元に戻す方法を探すという理由を作って、カカシ押え班から抜け出ていた。 「じゃあ、いろいろ聞いているな」 紅は真剣な顔をしてうなずいた。 「ええ。こうなった理由も、今後のことも。イルカ先生が元に戻っても記憶は残るはずだから、今のうちに刷り込み放題だってことも」 「ちょっと待てーーーーーー!!!」 縄抜けしたカカシが猿轡を引き千切った。 「刷り込むって、おまえ、まさかっ!!!」 焦るカカシに対して、紅は嫣然と笑う。 「うふふふふー。あんたは知らないかもしれないけど、イルカ先生は結婚したい男NO1なのよ? 優しいし、そこそこの実力はあるし、火影様の覚えもよろしいし。中忍だから収入にはちょっと不満があるけど、上忍なら自分が稼げばいいだけのこと! イルカ先生がこんなんなってるってわかったら、さぞかし女の子が群がるでしょうねぇ」 だからその前に私が唾つけとくのよっ! 紅の言葉にカカシがパニックを起こした。 「俺のなのっ。イルカ先生は俺の! 絶対絶対絶対女なんかには渡さないんだからなっ」 サクラがきょとんとしているナルトの耳を覆った。突如カカシにライバル心を起こして拳を握り締めているサスケのことは見なかったことにする。 「おい、おまえら。子供達がいるんだぞ?」 控えめーに声をかけるイビキを無視して、上忍2人はヒートアップしていた。 「ふふーん、イルカちゃんがどちらを選ぶか、わかりきったことじゃない。変態と美人。あんたの負け確実ね」 「何をおー。俺だって美人系って言われるんだぞ。こんな小さい子供に欲情しているお前のが変態だっ」 「だーれが、そんなことしてるってえ? あんたと違うわよ。私はただ将来の投資をしてるだけ」 「そ、そういって、何も知らないイルカちゃんにあーんなことしたり、こーんなことしたりで傷物にして、大人に戻ったイルカ先生に『責任とって』なんて迫るんだろ」 「それやりたがってるのはあんたでしょ! 私は違うって!!!」 「いいかげんにしろ、おまえら!」 イビキの怒声が響き渡った。 「イルカがこうなったのをどうして極秘にしてるかおまえら、わかってるのか?」 イビキの説教をカカシはむくれた顔して聞き流していた。 「イルカ先生を狙うハイエナ女どもから、守るため。俺もよーくわかった。さっきの名前、イサギちゃんでいいか?」 「……わかったのはありがたいが、お前なあ……」 その理由は違う。イビキは泣きたくなった。 「あら、私はわかってるわよ。イルカが火影様の秘書っぽいことやってるからでしょ?」 イビキは、『なんでお前が呼び捨てにっ』、『こんな可愛い子供に先生ってつけるのは変態だけよ』、と再び争いかけた二人に拳骨を放ってため息をついた。 「わかってんならいいけどよ。ならさっきの騒ぎは何なんだよ…」 「ちゃんとした理由を言うより、カカシには納得させやすいからに決まってるじゃない」 胸を張って説明した紅はよくわからなくて首を傾げている子供たちに目をやった。 「あのね、イルカは火影様の秘書っぽいことをやってるって、さっきも言ったわよね。だから、重要機密とか知ってるのよ、いろいろと」 少なくともそう思われている。あ、とサクラが目を見開く。 「今のイルカ先生…イサギちゃんだったら簡単に攫えるから……」 攫っておいて大人に戻してからその機密を聞き出せばいい。大人のままのイルカを攫うより、確実性が高い。 「そ。わかったかしら」 にっこりと紅は笑った。そして次の説明を聞いた瞬間、サクラは引きつっていた。 「わ、わかりましたけど、でも」 今の姿だとイルカだとばれてしまう可能性高いから変装させましょう、ってのもいい。だが。 「わ、私の小さい時の服って……?」 「私のはさすがにもう残ってないのよ。サクラちゃん、まだ取ってある?」 「あの、女の子ものですよ、私の服だから」 おずおずとサクラは指摘した。 「そうよー。性別変えるってのは、一番の基本じゃない」 違うと思うとサクラは首を振ったが、紅は聞いちゃいなかった。 「ふふふふふ、燃えるわ。こんな可愛い子にいろいろできちゃうなんてv 何色が似合うかしらねー。色が結構白いからピンク色とか水色とか……。なにやってんの、サクラちゃん。早く服持ってきて」 助けを求めようにも、イビキとナルトは硬直していた。サスケは何を考えているのか、妄想に赤くなっている。そしてカカシは。 「どうしよう。サクラと一緒に行って可愛い服を見繕うか……、でもそうしたら紅がイルカちゃんに何するかわかんねーし。でもイルカちゃんに服をーーー」 真剣に悩んでいる。 サクラは諦めて家に向かって駆け出した。 「あーん、やっぱり髪の毛は下ろした方がっ!」 「リボンよりピンで細かく留めたほうがいいわよねっ」 「紅先生、お化粧は止めておいたほうがいいわ。イルカちゃんの年だとかえって不自然です」 「こら、サクラ! イルカちゃんは駄目って言ったでしょ。ちゃんと偽名っ!」 「えー、でも、可愛いのにイサギって男名前はあんまり……」 「じゃあ、『ミナモ』。イルカ先生のお母さんなんだけどね、上忍ですっごく綺麗な人でー」 ミイラ取りがミイラ。結局夢中になったサクラも交えて、紅と2人でイルカファッションショーを繰り広げ。 「あのさー、イルカ先生がイルカ先生ってばれるの駄目ってのはわかったけどさ」 こんなに騒いで、なんかバレバレだってばよ。ナルトにまで突っ込まれてしまったり。ついでに大人に戻って今のこと覚えているなら、カカシも紅もサクラも思い切りイルカに引かれるんじゃ? back / next |