Sephiroth -セフィロト-

(9)



【魔術師の館】
ザックスここにエアリスの兄ちゃんが住んでるのか。
クラウドなんだかおどろおどろしい場所だな…。
ザックスとにかく、行くぞ。
妖精気をつけろ。お前たちには見えないだろうが、魔物があちこちに潜んでいる。
ザックス判ってる。
 
--魔物と戦う
 
魔術師…妖精が人間と一緒に現れるとはな。何の用だ?
ザックスエアリスが妖魔にさらわれちまったんだ。助け出すのに力を貸して欲しい。
魔術師何故、私が力など貸さなくてはならない?
ザックス何故…って、あんたエアリスの兄ちゃんなんだろう?
いや…色々、事情があるのはセフィに聞いた。けど、エアリスは悪くない筈だ。
妖精ザックス。こいつにそんな言い方をしても無駄だ。
お前、強い相手と戦うのが好きなんだろう?強力な妖魔に興味は無いのか?
魔術師…王弟と言い、お前たちと言い、煩わしい連中だな。
ザックス王弟?まさか、セフィロス王子がここに来たのか?
魔術師ああ、昨夜な。私に、妖魔と戦ってくれと要請しに来た。
クラウド承諾したのか?
魔術師…思案中だ。
妖精お前は興味の無い事に対しては指一本、動かさないって噂だからな。
思案中と言うなら、興味があるという事だろう?
魔術師…私が興味を持ったのは王弟の方であって、妖魔では無い。
ザックスどういう事だ?
魔術師昨夜、私は王弟と手合わせしたが…この私の魔術が、一切、通用しなかった。
ザックス(コイツ、実は弱いんじゃねーの?)
魔術師…聞こえているぞ。
ザックス…え?俺、声に出して言った?
妖精そいつは人の心が読めるんだ。
クラウドあんたは黒魔術と白魔術の両方が使えるらしいけど、両方とも通用しなかったのか?
魔術師白魔術までは試してみなかったが…。
クラウド魔術が通用しないのは、どんな時なんだ?
妖精相手の魔術が勝っている時だな。
魔術師私以上の魔術師など、存在する筈が無い――人間ならば…な。
ザックスだってセフィロス王子は人間だろう?もしかして本当に『伝説の英雄』の再来だったりしてな。
もしそうなら神様なんだから、魔術が通用しないのは当然って事になるけど。
魔術師…それは私も考えた。だが王弟は、とてつもなく強くそして禍々しい気を持っていた。
あれは、闇と深い関わりを持つ者だ。
ザックスまさか…。だって、英雄だぜ?
クラウド……俺、王子に会った事がある気がしたんだが……。
ザックスそれは気のせいだったんじゃないのか?
名前は同じセフィロスでも、お前が追ってる仇は妖魔の方なんだし。
魔術師妖魔を追っているとは、どういう意味だ?
いや…話す必要は無い。お前の記憶を読む。
 
--クラウドの身体が光る
 
魔術師(これは……)
ザックスそれで、協力してくれるのか?
魔術師エアリスを助けたがっているのはお前たちだろう?お前たちが妖魔と戦えば良い。
ザックス俺たちに力があったら、とっくにそうしてるぜ。
魔術師…ならば、力を得る方法を教えてやろうか?
ザックス本当か?ぜひ、教えてくれ…!
魔術師だが、危険だぞ。生命がけになる。
ザックス構わない。それで、エアリスを助け出せるんだったら何でもやる。
魔術師お前はどうだ?
クラウド…え?ああ……勿論、俺もなんだってやる。
魔術師ならば教えてやろう。
妖精……。
 
 
【王の間】
セフィロス。昨夜はどこに行っていたのだ?
王弟…俺が外出した事、誰に聞いたんだ?
誰でも良い。それより、私の質問に答えろ。
王弟…国境の森だ。
魔術師に会いに行ったのか?
王弟…何故、そこまで知っているんだ?俺の側近の他は、誰も知らない筈なのに…。
お前が信頼している者たちは、その信頼に値しないようだな。
それより、何故、魔術師に会いになど行った?
王弟…妖魔と戦ってくれるよう、要請しに行った。
これ以上、民が苦しむのを放ってはおけない。
…そうだな。お前が黒魔術を使って妖魔を呼び出し、民を苦しめるような真似をする筈が無い。
だがお前の側近たちは、別だ。
王弟…兄上?何の話だ?
呼び出したのが誰であれ、お前が妖魔を倒せば、お前を王にと望む民の声は、一層、高まるだろう。
王弟俺は王位なんか欲しくない。
……お前は子供の頃から欲が無かったからな。だが、全てを手に入れていた。
輝かしい才能に満ちていて文武両道に長け、まだ幼い頃から教育係たちに『教える事は何もない』と言わしめた。
軍を率いて戦に赴けば全戦全勝。その勇猛さは、『伝説の英雄』の再来と謳われる程だ。
王弟……。
私は王家の嫡男として生まれたが故に、将来、王となるべく帝王学を修めねばならなかった。
生まれながらに病弱であるが故に、健康な人間の何倍もの努力を強いられた。
お前が勝手に城を抜け出して気ままに遠乗りを楽しんでいる間も、私は部屋に篭りきりでいなければならなかった。
王弟…あの頃は、兄上を見習って分別ある行動をしろと、よく窘められた。
私は幼い頃から常に言い聞かされ続けていたのだ。将来、王になるのだから…と。
体調の良い時には気晴らしもしたかったが、望んではならぬ事だと諦めていた。
王になるのだから厳しく自らを律しなければならないと、自らに言い聞かせていたのだ。
王弟…誰が何と言おうが、兄上は立派な王だ。
…だが私は知らなかったのだ。私よりもお前を王にと望んでいるのは、下々の者だけでは無い…と。
父上や母上まで、同じ事を望んでいたのだ。
王弟そんな筈はない。父上と母上は、いつも兄上の事を気遣っていた。
ならば問うが、本来、嫡男だけが受け継ぐべきセフィロスの名を、何故、次男であるお前も与えられたのだ?
王弟……それは……。
私はもっと早く気づくべきだったのだ。生まれつき病弱である私など、すぐに死ぬものと思われていたのだ…と。
ただ形式を整える為に私が王太子の称号を授けられたが、父上が世継ぎに望んでいたのはお前だったのだ。
王弟……父上が俺にもセフィロスと名づけたのは、兄上が万が一、夭逝した時の事を考えたからだろう。兄上自身に期待していなかった訳では――
あの時、私は聞いてしまったのだ。私を産んだのは間違いだったと、母上が父上に謝罪しているのを……。
 
--回想シーン
 
先王確かにあの子は厄介者だが……。そなたの罪では無い。
先王妃ですが私は、どうにも不安でならないのです。あの子が側にいれば、もう一人のセフィロスにも害が及ぶのでは…と。
先王……確かに、あの子は禍根だ。
先王そして、禍根は断たねばならぬ……。
 
私は聞いた話を侍医に伝えた。私の身を護ってくれる、唯一の存在に。
後は、全て侍医が処理してくれた。
王弟まさか…15年前に父上と母上が急逝したのは……。
……。






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