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【宿屋】 |
妖精 | 何を驚いているんだ、お前たち。妖精なんだから、空くらい飛べて当然だろう。 |
ザックス | 妖精…!? |
妖精 | 俺を見ても妖精だって判らないのか?無能な魔術師だな。 |
エアリス | セフィ…。ザックス達は、魔術師じゃないんだよ。 |
妖精 | そうなのか?友だちだって言ったから、てっきり魔術師仲間かと思った。 |
ザックス | 魔術師仲間って……もしかして、エアリスは魔術師なのか…? |
エアリス | …うん。隠してて、ごめん。 |
ザックス | じゃあ、花売りっていうのは…。 |
エアリス | それも嘘じゃない。でもどっちかって言うと、魔術師が本業かな。 |
| ただ魔術師って言うと偏見を持つ人がいるから、自分が魔術師なのは隠してるの。 |
ザックス | ……俺、偏見持ってたかも。魔術師っていうのは、妖魔に近い存在だと思ってた…。 |
エアリス | それも間違いじゃない。魔術にのめりこみすぎて、本当に妖魔になってしまう魔術師もいるから。でも、そういうのは黒魔術の話で、私のは白魔術なんだ。 |
クラウド | …どう違うんだ? |
エアリス | 一番大きな違いは、白魔術は自然の力を借りる魔術で、黒魔術は自然を支配しようとする魔術って事かな。 |
| 例えば病気を治そうとする時、白魔術師はその人が持っている自然治癒力を高める魔法を使うけど、黒魔術師は他の人から生気を奪って病人に与えるの。 |
クラウド | 黒魔術師のやり方は、妖魔が人間の生命を奪って使い魔に与えるのと同じなんだな…。 |
ザックス | それは判ったけど…親父さんの病気を治すのに、魔法は使えないのか? |
エアリス | 今も言った通り、元々、備わっている自然治癒力を高めるのが白魔術だから、病人自身にその力が無ければ、白魔術ではどうにもならないんだ…。 |
ザックス | そっか……。 |
クラウド | 妖魔と妖精の違いも、黒魔術と白魔術の違いみたいなものなのか? |
エアリス | それとはちょっと違うかな。妖魔は闇の存在だけど、妖精は闇と光、両方の属性を持っているから…。 |
妖精 | 黒魔術と白魔術は対照的な魔術で、双方が相容れる事は無い。 |
| だが妖精には、妖魔と通じる部分もある。 |
エアリス | ただ…それは人間も同じなんだ。人間は皆、闇と光、両方の属性を持っている。 |
| 妖魔は人間の心の闇に付け込んで、操ったり従わせたりするのよ。 |
クラウド | (心の闇……か) |
妖精 | とにかく、今度こそ出発するぞ。闇は魔物の力を高めるからな。 |
| 日が高い内に向こうに着かないと…。 |
ザックス | 判った。じゃあ、武器屋に寄ってから行こうぜ。 |
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--武器屋で買い物 |
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【王弟の部屋】 |
騎士 | 例の薬の出所は、どうやら王城のようです。 |
王弟 | やはりそうか…。 |
騎士 | 残念ながら、確たる証拠はいまだ得られておりませんが…。 |
王弟 | 向こうもそう簡単に尻尾を出すまい。何しろ、殆どの貴族は大臣の味方だ。 |
| それだけの人脈があれば、不正を隠すのもたやすかろう。 |
騎士 | あのような奸臣どもをいつまでものさばらせておいては、国王陛下の御為にもこの国の為にもなりません。 |
| 我ら騎士団は、何があろうと殿下に忠誠を誓います。殿下のご命令さえあれば、我らはいついかなる時にでも―― |
王弟 | そう、焦るな。 |
| いくら疑わしくても、確たる証拠も無いのに動く訳には行かない。 |
騎士 | ですが、問題は薬の事だけに留まりません。民から集めた税を、大臣たちが着服しているとの噂もございます。 |
王弟 | 判っている。それどころか、大臣と侍医が結託して、故意に兄上の治癒を妨げているのだという噂もある。 |
| だが、全ては噂に過ぎないのだ。 |
| 確たる証拠も無いのに、兄上が信頼している大臣や侍医を取り調べる事は出来ない。 |
騎士 | ですが…殿下の口から、兄君に申し上げれば…。 |
王弟 | もう何年も前、大臣たちの動きに最初に不審を感じた時に話した。 |
| だが、兄上の不興を買っただけだった。 |
| 大臣夫人は俺達の叔母上で昔から兄上を可愛がっていたし、侍医は兄上が幼い頃からずっと治療にあたっているからな。 |
騎士 | ですが侍医は外国人で、余り素性がはっきりしないとの噂もありますが…。 |
王弟 | ああ。だが昔、兄上が危篤に陥り、他の全ての医者が匙を投げた時に助けたのがあの男なのだ。 |
| それ以来、王家から絶大な信頼を得ている。 |
騎士 | ……判りました。それでは、薬の件に関して、引き続き捜査を続けます。 |
| 魔術師の件ですが、どうにも交渉が捗りません。 |
王弟 | 何故だ?報奨は望みのままだと言ってある筈だが。 |
騎士 | どうにも変わり者の魔術師でして、金銀にも名声にも権力にも関心が無い様なのです。 |
| それならば或いは…と、美女を交渉に遣わしてみましたが、これにも無関心でして。 |
王弟 | 今、この世に存在している中では最高の魔術師だと聞くからな。一筋縄で行くとは思っていなかったが…。 |
| しかし、何とかして協力させる手立ては無いのか? |
騎士 | 恐れながら…王弟殿下が直接、懇願しに来るのであれば、話だけは聞いてやるなどと申しているそうです。 |
王弟 | 何故それを先に言わなかった?そういう事ならば、俺が直接交渉に行く。 |
騎士 | それはなりません…!相手は半人半妖の魔術師です。どんな危険があるか、判ったものではありません。 |
王弟 | 俺が直接、妖魔と戦うのと、どちらが危険だ? |
騎士 | …それは……。 |
王弟 | いずれにしろ、何か手を打たねばならない。もうこれ以上、妖魔に我が国と民を蹂躙されるのは赦せない。 |
騎士 | ですが……国王陛下は、殿下が魔術師の許に自ら赴かれる事など、ご許可なさいますまい。 |
王弟 | ……仕方ない。兄上には黙って行く。 |
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【北の大空洞】 |
ザックス | ここが北の大空洞か。 |
クラウド | …何だか息苦しくないか? |
ザックス | そうか?俺は別に平気だけど。 |
| それより、どうやって先に進むんだ?泳いで渡るのか? |
妖精 | 水の中には魔物がびっしりひしめいている。泳いで渡るどころか、落ちたら確実に死ぬな。 |
ザックス | じゃあ、どうやって…? |
妖精 | 仕方ないな。俺が橋を架けてやる。 |
ザックス | すげー。さすが妖精。 |
| でもさ。何で真っ直ぐに架けなかったんだよ。 |
妖精 | 妖魔の影響が弱い所を選んだからに決まってるだろう。妖魔の影響が強い場所には、魔物がひしめいている。 |
ザックス | そっか。じゃあ、この橋を渡れば楽勝だな。 |
| エアリスは危ないからここで待っててくれ。行くぞ、クラウド! |
エアリス | あ、ザックス、待って……! |
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--魔物登場 |
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ザックス | どうなってんだよ、セフィ。魔物のいる場所は避けて橋を架けたんじゃないのか? |
妖精 | 俺は影響の強い場所を避けたと言ったんだ。 |
| この大空洞はどこもかしこも妖魔の気で満ちている。魔物のいない場所なんて無い。 |
エアリス | セフィは、その中でも魔物が少ない場所を選んで橋を架けてくれたんだよ。 |
| それでもまだ魔物はたくさんいるから、私も一緒に行く。 |
ザックス | だけどそれは―― |
エアリス | 心配しなくて大丈夫。私は魔術師なんだから。 |
妖精 | 俺は橋を維持する為に、ここから動けない。 |
| 橋を維持できるのは日没までだ。必ずその前に戻って来い。 |
エアリス | わかってる。 |
ザックス | よし。じゃあ、先を急ごう。 |
クラウド | (胸が締め付けられるように苦しい……) |
| (どうしてみんな、平気なんだ…?) |
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--魔物との戦いが続く。 |
--クラウドの攻撃は全てミスに終わる。 |
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ザックス | クラウド、大丈夫か?何か、調子悪いみたいだけど。 |
クラウド | あ…ああ。大丈夫だ……。 |
エアリス | ……。 |
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--洞の入り口まで到着。 |
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エアリス | ここから先は、私1人で行く。 |
ザックス | そんなの、駄目だ。 |
エアリス | ここから先は、妖魔の気が強すぎて、普通の人間は入れないんだよ。 |
| すぐに戻って来るから、ここで待ってて。 |
ザックス | ……そういう事なら仕方ない。エアリスの実力もよく判ったけど、無茶はするなよ? |
エアリス | わかってる。 |
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--クラウド、倒れる |
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ザックス | どうしたんだ、クラウド?クラウド……! |