Sephiroth -セフィロト-

(6)



【北の大空洞】
ザックスクラウド…?どうしたんだ、クラウド。しっかりしろ…!
クラウド……お前は誰だ…?
ザックス何、言ってんだよ。仲間の顔を忘れたのか?
クラウド……俺には仲間なんていない。友達も……一人もいない……。
ザックスクラウド……?
妖精エアリスはまだ戻らないのか?もうすぐ日が暮れるぞ。
ザックス何かあったのかも知れない。どうにかして、俺たちもこの先に進めないのか?
妖精俺の力を一時的に分けてやれば、何とかなるけど…。
でも、そんな事をする位なら、俺が行った方が早い。
ザックスだけど、もしお前の身に何かあったら、俺たち全員、戻れなくなっちまうんじゃないのか?
橋が無かったら、とても戻れないからな。
妖精良く判ったな。お前、思ったより馬鹿じゃないんだな。
ザックスお前なぁ……。
それよりお前、橋を維持する為に向こう岸から動けないって言ってなかったか?
妖精ああ。本体は向こうにいる。この姿は幻影みたいなものだ。
ザックス妖精って、便利に出来てるんだな…。
妖精お前たち人間が不自由なだけだ。
ザックスそれより、俺に力を分けてくれ。エアリスが心配だ。
判った。
ザックスクラウド、お前も一緒に行くぞ。
クラウド……どうして俺が……?
ザックス何を言ってるんだよ。エアリスが危ないかも知れないんだぞ?
クラウド…エアリスなんて知らない…。俺には関係ない……。
ザックスクラウド…。お前、どうしちまったんだよ?
妖精瘴気にやられたようだな。
ザックス瘴気?
妖精この大空洞には妖魔の強い気が満ちているから、影響を受けやすい人間は、それだけで魂を抜かれたような状態になるんだ。
ザックスそれって…ここから離れたらちゃんと元に戻るんだよな?
妖精普通はな。
ザックスじゃあ、クラウドの事は後回しだ。とにかく、エアリスを助けに行く。
妖精日没までにはここを出なければならない。必ずそれまでに戻れ。
ザックスだけど…こんな洞窟の中にいて、日没なんてどうやって知るんだ?
妖精それはエアリスが判るから大丈夫だ。
 
--ザックスの身体が光る
 
妖精これで暫くは大丈夫だ。エアリスを頼んだぞ。
ザックス任せとけ!
 
 
【魔術師の館】
王弟この奥に魔術師が住んでいるのか。
騎士これより先は我らだけで参ります。殿下はここでお待ちを…。
王弟向こうは俺に直接、来いと言ったのだろう?
騎士ですが……。
王弟時間が無い。行くぞ。
 
--魔物と戦う
 
騎士(さすがは『伝説の英雄』の再来と謳われるお方だ…)
魔術師私の庭先を騒がせていたのはお前か。
騎士貴様…王弟殿下に対し、何と無礼な…!
王弟お前たちは黙って控えていろ。
騎士……御意。
王弟何度も使者を遣わしたから、用件は判っていると思うが。
魔術師妖魔退治に協力してくれ、という話か。興味が無いな。
王弟金銀にも権力にも名声にも無関心だそうだな。他に望むものは無いのか?
魔術師私の望みは何ものにも囚われず自由に生きる事だ。そして私は望むままに生きている。
王弟最高の魔術師とまで謳われる力を持ちながら、それを何かに役立てようとは思わないのか?
魔術師いかにも人間が言いそうな事だな。
王弟…何?
魔術師国の為だとか家族や友人の為だとか、そういった言葉を人間は好む。
所詮、無力な人間の自己満足に過ぎないのに、誰かの為という言葉で飾れば崇高であるかのように思い込むのだ。
王弟俺はただ、妖魔に苦しめられている民を救いたいだけだ。
魔術師お前の考えを否定したい訳ではない。ただ、私には関係の無い事だ。
王弟ならば何故、俺に直接、来いと言ったのだ?
魔術師お前自身に、興味があるからだ。
王弟…と言うと?
魔術師『伝説の英雄』の再来と謳われる最強の騎士の実力、この目で見てみたい。
王弟俺が勝てば、協力してくれるのか?
魔術師約束はしない。約束すれば、それに縛られる事になるからな。
騎士殿下、おやめ下さい…!そのような者の言葉に耳を貸す必要はございません。
魔術師どうする?私は別に、どちらでも構わないが。
王弟…良いだろう。
 
--王弟対魔術師の戦い
--王弟が圧勝する
 
魔術師(あり得ない…。私の魔術が通用しないなどと……)
それだけの力があるなら、どうして自ら妖魔と戦わない?
王弟そうしたいのは山々だが…。兄上が許可してくれない。
尤も、それが本当の理由では無いが。
魔術師本当の理由とは何だ?
王弟……俺が戦で勝利する度に、民は英雄として賞賛してくれる。だが兄上は生まれながらに病弱で、戦どころか馬にも乗れない。
魔術師民の多くは病弱な王より、英雄の誉れ高い弟が王位に就く事を望んでいるらしいな。
王弟俺が妖魔を倒せば、その声は一層、高まるだろうな…。
魔術師だから兄に遠慮して目立つ行動を避けているのか?だが、それならば自分が王になろうとは思わないのか?
王弟俺の役目は兄上を補佐する事だ。子供の頃からずっとそうして来たし、それを不満に思った事は無い。
魔術師……。
 
--王弟の身体が光る
 
王弟今の光は…?
魔術師何でもない。お前の話は判った。実力の程も…な。
王弟では、協力してくれるのか?
魔術師……少し、考えさせてくれ。
王弟良い返事を期待している。
 
--王弟一行、退場
 
魔術師(噂どおり、非の打ち所の無い人物だな)
(心を覗いて見ても、一点の曇りも無い)
(だがそれならば何故、この私が圧倒される程の禍々しい気を持っているのだ…?)






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