【北の大空洞】 |
ザックス | クラウド…?どうしたんだ、クラウド。しっかりしろ…! |
クラウド | ……お前は誰だ…? |
ザックス | 何、言ってんだよ。仲間の顔を忘れたのか? |
クラウド | ……俺には仲間なんていない。友達も……一人もいない……。 |
ザックス | クラウド……? |
妖精 | エアリスはまだ戻らないのか?もうすぐ日が暮れるぞ。 |
ザックス | 何かあったのかも知れない。どうにかして、俺たちもこの先に進めないのか? |
妖精 | 俺の力を一時的に分けてやれば、何とかなるけど…。 |
| でも、そんな事をする位なら、俺が行った方が早い。 |
ザックス | だけど、もしお前の身に何かあったら、俺たち全員、戻れなくなっちまうんじゃないのか? |
| 橋が無かったら、とても戻れないからな。 |
妖精 | 良く判ったな。お前、思ったより馬鹿じゃないんだな。 |
ザックス | お前なぁ……。 |
| それよりお前、橋を維持する為に向こう岸から動けないって言ってなかったか? |
妖精 | ああ。本体は向こうにいる。この姿は幻影みたいなものだ。 |
ザックス | 妖精って、便利に出来てるんだな…。 |
妖精 | お前たち人間が不自由なだけだ。 |
ザックス | それより、俺に力を分けてくれ。エアリスが心配だ。 |
| 判った。 |
ザックス | クラウド、お前も一緒に行くぞ。 |
クラウド | ……どうして俺が……? |
ザックス | 何を言ってるんだよ。エアリスが危ないかも知れないんだぞ? |
クラウド | …エアリスなんて知らない…。俺には関係ない……。 |
ザックス | クラウド…。お前、どうしちまったんだよ? |
妖精 | 瘴気にやられたようだな。 |
ザックス | 瘴気? |
妖精 | この大空洞には妖魔の強い気が満ちているから、影響を受けやすい人間は、それだけで魂を抜かれたような状態になるんだ。 |
ザックス | それって…ここから離れたらちゃんと元に戻るんだよな? |
妖精 | 普通はな。 |
ザックス | じゃあ、クラウドの事は後回しだ。とにかく、エアリスを助けに行く。 |
妖精 | 日没までにはここを出なければならない。必ずそれまでに戻れ。 |
ザックス | だけど…こんな洞窟の中にいて、日没なんてどうやって知るんだ? |
妖精 | それはエアリスが判るから大丈夫だ。 |
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--ザックスの身体が光る |
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妖精 | これで暫くは大丈夫だ。エアリスを頼んだぞ。 |
ザックス | 任せとけ! |
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【魔術師の館】 |
王弟 | この奥に魔術師が住んでいるのか。 |
騎士 | これより先は我らだけで参ります。殿下はここでお待ちを…。 |
王弟 | 向こうは俺に直接、来いと言ったのだろう? |
騎士 | ですが……。 |
王弟 | 時間が無い。行くぞ。 |
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--魔物と戦う |
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騎士 | (さすがは『伝説の英雄』の再来と謳われるお方だ…) |
魔術師 | 私の庭先を騒がせていたのはお前か。 |
騎士 | 貴様…王弟殿下に対し、何と無礼な…! |
王弟 | お前たちは黙って控えていろ。 |
騎士 | ……御意。 |
王弟 | 何度も使者を遣わしたから、用件は判っていると思うが。 |
魔術師 | 妖魔退治に協力してくれ、という話か。興味が無いな。 |
王弟 | 金銀にも権力にも名声にも無関心だそうだな。他に望むものは無いのか? |
魔術師 | 私の望みは何ものにも囚われず自由に生きる事だ。そして私は望むままに生きている。 |
王弟 | 最高の魔術師とまで謳われる力を持ちながら、それを何かに役立てようとは思わないのか? |
魔術師 | いかにも人間が言いそうな事だな。 |
王弟 | …何? |
魔術師 | 国の為だとか家族や友人の為だとか、そういった言葉を人間は好む。 |
| 所詮、無力な人間の自己満足に過ぎないのに、誰かの為という言葉で飾れば崇高であるかのように思い込むのだ。 |
王弟 | 俺はただ、妖魔に苦しめられている民を救いたいだけだ。 |
魔術師 | お前の考えを否定したい訳ではない。ただ、私には関係の無い事だ。 |
王弟 | ならば何故、俺に直接、来いと言ったのだ? |
魔術師 | お前自身に、興味があるからだ。 |
王弟 | …と言うと? |
魔術師 | 『伝説の英雄』の再来と謳われる最強の騎士の実力、この目で見てみたい。 |
王弟 | 俺が勝てば、協力してくれるのか? |
魔術師 | 約束はしない。約束すれば、それに縛られる事になるからな。 |
騎士 | 殿下、おやめ下さい…!そのような者の言葉に耳を貸す必要はございません。 |
魔術師 | どうする?私は別に、どちらでも構わないが。 |
王弟 | …良いだろう。 |
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--王弟対魔術師の戦い |
--王弟が圧勝する |
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魔術師 | (あり得ない…。私の魔術が通用しないなどと……) |
| それだけの力があるなら、どうして自ら妖魔と戦わない? |
王弟 | そうしたいのは山々だが…。兄上が許可してくれない。 |
| 尤も、それが本当の理由では無いが。 |
魔術師 | 本当の理由とは何だ? |
王弟 | ……俺が戦で勝利する度に、民は英雄として賞賛してくれる。だが兄上は生まれながらに病弱で、戦どころか馬にも乗れない。 |
魔術師 | 民の多くは病弱な王より、英雄の誉れ高い弟が王位に就く事を望んでいるらしいな。 |
王弟 | 俺が妖魔を倒せば、その声は一層、高まるだろうな…。 |
魔術師 | だから兄に遠慮して目立つ行動を避けているのか?だが、それならば自分が王になろうとは思わないのか? |
王弟 | 俺の役目は兄上を補佐する事だ。子供の頃からずっとそうして来たし、それを不満に思った事は無い。 |
魔術師 | ……。 |
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--王弟の身体が光る |
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王弟 | 今の光は…? |
魔術師 | 何でもない。お前の話は判った。実力の程も…な。 |
王弟 | では、協力してくれるのか? |
魔術師 | ……少し、考えさせてくれ。 |
王弟 | 良い返事を期待している。 |
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--王弟一行、退場 |
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魔術師 | (噂どおり、非の打ち所の無い人物だな) |
| (心を覗いて見ても、一点の曇りも無い) |
| (だがそれならば何故、この私が圧倒される程の禍々しい気を持っているのだ…?) |