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【森】<夜> |
ザックス | どうしたんだよ、クラウド。具合でも悪いのか? |
クラウド | 俺は……さっきの男に、会った事がある気がする…… |
ザックス | じゃあ、記憶が戻ったのか? |
クラウド | そうじゃない。ただ、あの男に会った事がある気がしているだけで……。 |
ザックス | でも、むこうはお前の事、知らないみたいだったぞ?それに、お前はこの国に来たばっかりなんだろう? |
クラウド | …ただの思い違いかも知れないし、漠然とした感覚でしか無いんだけど…。 |
| ただ何か……とても厭な感じがする……。 |
ザックス | じゃあまさか、あいつがお前の故郷を焼き払った犯人…? |
| でも、俺には割と感じの良い奴に思えたけどな。 |
クラウド | ……多分、ただの思い過ごしだ。 |
| もう大丈夫だ。森の奥に進もう。 |
ザックス | そう来なくっちゃな。さっきの魔物が手強かったから、ひょっとして怖気づいたのかと心配したぜ。 |
クラウド | そんな事は無い。行こう。 |
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――森の中で戦闘が続く。 |
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ザックス | そろそろ夜明けだ。 |
| 使い魔ばっかりで妖魔には出くわさなかったけど、今夜はまあ、こんなもんだろう。 |
クラウド | じゃあ、戻るのか? |
ザックス | 手ぶらで戻ったんじゃ、賞金が貰えない。魔物を倒した証拠の品を持って帰らないと。 |
クラウド | 証拠の品? |
ザックス | ああ。魔物の首を切り落として、革袋に詰めて持ち帰る。 |
| 今夜は小物ばかりで数が多いから、ちょっと大変だけどな。 |
クラウド | (食欲、失くしそうだ……) |
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――閃光 |
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ザックス | ……! |
クラウド | ……! |
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【エアリスの家】 |
エアリス | 先生、お父さんの容態は? |
医者 | …このままだと、あと1週間しかもたないだろう…。 |
エアリス | そんな…。どうにかして助ける方法は無いの? |
医者 | 普通の薬ではとても無理だ。ウータイの霊薬でも手に入れなければ…。 |
エアリス | ウータイの霊薬? |
医者 | 万能の霊薬と言われているが、ウータイにしか自生しない薬草から作られていて、国外への持ち出しは禁止されている。 |
| だがその霊薬が、最近、この国にも出回っているという噂だ。 |
エアリス | ウータイにしか無い筈の薬が、どうして…? |
医者 | 先ごろのウータイとの戦の折、王弟殿下が戦利品として手に入れたのだそうだ。無論、ご病気の国王陛下の為だが、それが何故か市中に出回っているらしい。 |
エアリス | 王弟殿下が、皆の為に分けて下さったのかな。 |
医者 | 私も噂を聞いただけだから確かな事は判らないが、その薬は陛下の為には使われなかったらしい。おそらく、大臣と侍医が結託して、王弟殿下を欺いているのではないか…と。 |
エアリス | 酷い…。でも、どうして大臣たちがそんな事を? |
医者 | 国王陛下が寝たきりであれば、大臣が好きなように政治を動かせるからな。私利私欲を貪りたい奸臣に取って、王弟殿下は目の上の瘤だ。 |
エアリス | …そんないわくのある薬じゃ、たとえ手に入ったとしてもお父さんの為には使えないわ。王弟殿下が兄君の為に持ち帰った品を、横取りするみたいになるもの。 |
医者 | いずれにしろ、とんでもない高値で少量が取引されているだけらしいから、手に入れるのは無理だろうな。それならまだ北の大空洞にでも行った方が望みがある。 |
エアリス | 北の大空洞に…? |
医者 | さっきも言った通り、霊薬の材料はウータイでしか育たない薬草だが、北の大空洞にはこの世のあらゆる植物が自生しているという噂だ。 |
| と言っても、あの辺りは魔物の巣窟になっているから、近づくのは無理だろうが。 |
エアリス | ……その薬草があれば、お父さんは助かるんだね? |
医者 | エアリス…。まさか北の大空洞に行く積りか…? |
エアリス | その薬草。どんな見た目をしているのか教えて。 |
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【宿】 |
ザックス | くそう…。何だったんだ、あの光は…。 |
エアリス | 何かあったの? |
ザックス | あ…エアリス。昨夜、クラウドと二人がかりで退治した魔物の首を、何者かに奪われちまったんだ。 |
エアリス | 魔物の首を? |
ザックス | ああ。あれを城に持って行けば賞金が貰えるからな。他の賞金稼ぎに横取りされたのかも知れない。 |
エアリス | 相手は大勢いたの? |
クラウド | いや…突然、雷みたいに光って、あっという間に屍骸がなくなっていた。 |
エアリス | …それは、妖魔の仕業かもね。使い魔たちを、取り戻しに来たのかも知れない。 |
ザックス | 取り戻すったって、屍骸だぞ? |
エアリス | とても強力な妖魔は、死んだものを蘇らせる事ができるのよ。 |
| 正確に言えば、人間から生命を奪って、それを魔物に与えるの。 |
ザックス | じゃあ、俺達がいくら魔物を倒してもキリが無いって事か。それどころか、魔物を倒す度に、そいつらを蘇らせる為に人間が殺される事になる……。 |
エアリス | それにしても…妖魔が現れたのに、よくザックスたち無事でいられたね。 |
クラウド | 夜明けが近かったからじゃないかな。妖魔は、光に弱いんだろう? |
エアリス | ……。 |
ザックス | エアリス、どうかしたのか? |
エアリス | …何でもない。とにかく、二人が無事で良かった。 |
ザックス | ところでさ。この国に長い銀髪で背が高くて、すっげー強い騎士っているのか? |
エアリス | その方に会ったの…? |
ザックス | ……あ、誰にも喋らないって約束したの、忘れてた。 |
エアリス | 大丈夫。ここで聞いた事は、誰にも話さないから。 |
ザックス | 昨夜、大物の魔物と戦ってヤバくなった時に、そいつが助けてくれたんだ。 |
| 兄貴に知られたくないから黙っててくれみたいな事を言ってたけど。 |
エアリス | …その方、まず間違いなくこの国の王弟殿下だよ。 |
ザックス | 王弟殿下…って、まさかセフィロス王子……!? |
| 嘘だろ…?俺、憧れの英雄に、カッコ悪いとこ、見られちまった…。 |
クラウド | …王族に失礼な態度を取った方が問題じゃないのか…? |
エアリス | でもお忍びだったんでしょう?王弟殿下は寛大な方だから、その事でザックスを咎めたり悪く思ったりはしないと思う。 |
| …だと良いけど。 |
妖精 | エアリス、こんな所で何をやってるんだ?早く行かないと日が暮れるぞ。 |
エアリス | セフィ…。 |
クラウド | (この子、どこから入って来たんだ…?) |
ザックス | 行くって、どこに? |
エアリス | 北の大空洞って所よ。 |
ザックス | ちょっと待ってくれ。北の大空洞って、魔物の巣窟になってる危険な場所じゃないのか?あそこにだけは近づくなって、他の賞金稼ぎから忠告されたぞ? |
妖精 | だから俺も一緒に行くんだ。 |
ザックス | はあ?何、言ってるんだ。お前みたいな子供が一緒じゃ、かえって危ないだろう? |
妖精 | 子ども扱いするな。これでも、お前なんかより長く生きている。 |
| エアリス。そいつらは何なんだ?お前の下僕か? |
エアリス | 友だちだよ。 |
クラウド | …どうしてそんな危険な場所に行くんだ? |
エアリス | お父さんの具合が良くなくて……。お医者さんの話では、北の大空洞にある薬草から薬を作るしか、助ける方法が無いらしいから…。 |
ザックス | だったら俺とクラウドで取って来る。女の子や子供を危険な場所に行かせる訳にはいかない。 |
エアリス | そんなの駄目だよ。私のお父さんの為に、ザックス達を危険な目にあわせるなんて…。 |
ザックス | 俺は元々、魔物退治の賞金目当てで来た賞金稼ぎだ。他の連中がしり込みして近づかない場所なら、尚更やりがいがあるってもんだ。 |
クラウド | 俺も個人的な理由から、北の大空洞には行ってみたい。魔物の巣窟になっているなら、俺が探している相手の手がかりが何かあるかも知れない。 |
妖精 | だったら、4人で行けば良いだろう?そいつらでもザコくらいなら倒せそうだ。 |
エアリス | でもセフィ、ザックスとクラウドには―― |
妖精 | いいから行くぞ。ぐずぐずしてると日が暮れる。 |
ザックス | …! |
クラウド | …! |
| 飛んだ…? |