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【宿】 |
ザックス | 魔物が現れた?昼間なのに? |
クラウド | ああ。小物だったから、俺一人で倒せたけど。 |
| 昼に魔物が現れるのって、そんなに珍しいのか? |
ザックス | この国でも俺の故郷でも、魔物は夜、陽が沈んでから出没するって相場が決まってる。 |
| あいつらは闇の生き物だからな。光に弱いんだ。 |
クラウド | だけど…俺の故郷では昼夜、関係なく現れてた。 |
| 俺自身、昼に魔物と出くわした事が何度かあるし、村人から聞いた話では、以前からそうだったって
。 |
ザックス | 何か魔物が出やすい理由があるのかもな。その事と村が焼き払われた事に、何か関係があるかも知れ
ない。 |
クラウド | …そうだな。 |
| ところで、この国の王って、どんな人なんだ?王が病弱なせいで魔物退治がままならないって、街の
人が噂してたけど。 |
ザックス | 生まれつき病弱で、殆ど人前には姿を現さないって話だ。病弱なせいで閣議も行わず、殆ど大臣が一
人で政治を取り仕切ってるらしい。 |
クラウド | 王には弟がいるらしいけど? |
ザックス | ああ。病弱な兄とは対照的に屈強で、最強の騎士と呼ばれる英雄だ。 |
| 強いだけでなく怜悧で、冷静沈着ながら情には厚く、臣下の騎士たちの崇拝と憧れの的だ。騎士だけでなく、国中の人々から敬愛されている。 |
クラウド | …非の打ち所が無いな。 |
ザックス | ああ。俺の目標でもある。 |
クラウド | 目標? |
ザックス | 俺は今はしがない賞金稼ぎだけど、このまま終わる積りは無い。いつか騎士になって、そしてセフィ
ロス王子のような英雄になるんだ。 |
クラウド | 英雄……か。すごいな…。 |
ザックス | お前だって、故郷を焼き払った仇を倒せば、英雄になれるんじゃないのか? |
クラウド | 俺は……英雄になりたくて旅を続けてる訳じゃない。 |
ザックス | 純粋に皆の仇を討ちたいだけで、賞賛されるのが目的じゃないって事か。潔いな。 |
クラウド | 俺はただ……。 |
ザックス | お前みたいに欲の無い奴と仲間になれて良かった。同じ賞金稼ぎ同士じゃ、賞金の分け前を巡って争
いが絶えないからな。 |
クラウド | ……。 |
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【王の間】 |
侍医 | 陛下はただいまお休み中です。 |
王弟 | 午前中もずっと眠っていたようだが…加減が良くないのか? |
侍医 | 少々、熱が高いようですが、ご心配には及びません。薬を差し上げましたから、すぐに良くなりましょう
。 |
王弟 | …そうか。 |
| ところで、俺がウータイとの戦の折に手に入れた薬。あれはどうした? |
侍医 | 仔細に調べましたが、陛下のお身体には合わぬ成分が多く含まれております。 |
| やはり外つ国の薬は、この国の者の身体には合わぬようです。 |
王弟 | それは妙だな。万能の霊薬との評判で、わが国でも少量が高値で取引されていると聞くが。 |
侍医 | それが事実とすれば由々しき事態でございますな。藁にもすがりたい病人の弱みにつけこんで、暴利を貪
っている者がおるのでしょう。 |
王弟 | …俺が聞いた限りでは、効き目は確からしいが。 |
侍医 | 劇薬でございますから、少量用いれば一時的には回復したように見えます。 |
| しかしながら長期に亘って服用すれば、まちがいなく死に至ります。 |
王弟 | この国の人間を殺すような劇薬が、ウータイでは霊薬となるのか? |
| 確かに国が変われば水も食べ物も変わるが、同じ人間である事に変わりはあるまい。 |
侍医 | ウータイでもたいそう高価な薬であると聞いております。ですから、ウータイでもごく少量を一時的に用
いるだけなのでしょう。 |
| その用い方であれば一時的に症状が緩和しますので、元々健康な人間であったならそのまま治癒する可能
性も無いとは申せません。 |
| ですが陛下のように生まれながらにご病弱な方が用いれば、害ばかりあって利にはなりません。
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王弟 | ……そういう事ならば、仕方が無い。 |
| 兄上が目を覚ましたら、知らせてくれ。 |
侍医 | かしこまりました。 |
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【森】<夜> |
クラウド | 魔物が出没するのは、いつもこの辺なのか? |
ザックス | そうとは限らない。あいつら神出鬼没で、村はずれに現れる時もあれば、街に現れる時もある。
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| ただ、街は基本的に騎士団が警備してるから、俺たち賞金稼ぎの持ち場は森と村はずれなんだ。
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| とは言っても、騎士団はだいぶ妖魔にやられちまったからな。最近は街中を警備しているのは殆どが傭兵ばっかりだ。 |
クラウド | …1週間前にこの国に着たばかりにしては詳しいな。そういう話、エアリスにでも聞いたのか?
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ザックス | エアリスにも聞いたし、宿屋の主人の娘とか、酒場の女主人とか、八百屋のおかみとかにも聞いたな
。 |
クラウド | (こいつの情報源て、女の人ばかりじゃないか……) |
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――魔物出現。不利になった時に王弟登場。 |
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ザックス | すげぇ…一撃で倒しちまった……。 |
王弟 | お前たち、大丈夫か? |
ザックス | あ…ああ。それよりあんた、すげえな。有名な騎士なのか? |
王弟 | ……お前たち、外国の者か? |
ザックス | ああ。魔物退治に来た賞金稼ぎだ。 |
王弟 | それならば、俺に会った事は誰にも言わず、その魔物を倒したのは自分たちの手柄にしておけ。 |
ザックス | そんな事、できるかよ。俺は嘘を吐くのは嫌いだ。 |
王弟 | 正直な若者だな…。だが、俺がこんな所で魔物と戦った事を誰かに話されては困る。 |
| 兄の命令に、背いた事になるからな。 |
ザックス | 家庭の事情って奴か。まあ、あんたには助けられたし、俺達が喋ればあんたが困る事になるんだったら黙ってるけど。 |
王弟 | そうしてくれ。 |
| それより、お前たちはもう帰った方が良い。一昨日、高名な魔術師が妖魔に殺された話は聞いているだろう? |
ザックス | 『お前たちの敵う相手じゃない』とか言いたい訳?俺たちは敵が強いからって尻尾巻いて逃げるような腰抜けじゃないんだ。 |
| なあ、クラウド? |
クラウド | ……。 |
ザックス | クラウド?どうしたんだ? |
クラウド | …え?ああ……何でもない。 |
王弟 | …顔色が優れないようだな。もう帰った方が良いだろう。 |
クラウド | (俺は……この男に会った事がある……) |