【教会内部】 |
エアリス | ……あなたは? |
王 | 意識を取り戻したか。良かった。 |
| 教会にどの程度の力があるか判らなかったが、効果はあったようだな。 |
エアリス | その白銀の髪…。もしかして、王弟殿下…? |
王 | …私は兄の方だ。 |
エアリス | 国王陛下…!?でも、国王様はご病弱で滅多に人前には姿を現さないって……。 |
| それより、私を助けて下さったんですか? |
王 | 助けた事になるかどうかは、まだ判らない。 |
| どうせ殺すのならばその前に好きにさせてくれと言って妖魔からお前を貰い受けたが、妖魔も侍医も私の言葉を信じたかどうかは判らない。 |
エアリス | ……私が意識を閉ざしている間に、一体、何が起きたのですか? |
王 | …私は侍医に唆されて、無実のセフィロスを謀反の罪で牢に入れてしまった。 |
| そしてその噂はあっという間に広まり、民はセフィロスの釈放を求めて蜂起し、大臣や主だった貴族は内乱を恐れて逃亡を図った。 |
| セフィロスは何者かの手引きで脱獄したが、行方は未だに判らない。 |
エアリス | 私をさらった妖魔…。あれは2000年前の魔王の再来なのですね? |
| この国を、そして世界を再び闇に堕とそうとして、暗躍を…。 |
王 | 私の侍医は、その妖魔の眷属だったのだ。 |
| それより、お前は古代種だそうだな。2000年前に、魔王と戦って封印した者の末裔…。 |
エアリス | はい。私は白魔術師です。 |
王 | ならば力を貸してくれ。セフィロスの行方を突き止め、妖魔の野望を…阻止しなければ……。 |
エアリス | …陛下、大丈夫ですか?お顔の色が……。 |
王 | ……忌々しい身体だ。少し外を出歩いた程度で音を上げるとは……。 |
| 妖魔の誘惑を受け入れてお前を殺めていれば、こんな病弱な身体に苦しまずに済む力が手に入るらしいが…。 |
エアリス | ……では、何故、私を殺さなかったのですか? |
王 | 私は王だ。この国と民を護る責務がある。 |
| そしてその責務を果たす事が、王としての誇りだ。 |
| 妖魔などに、王の誇りを傷つけさせる訳には行かない。 |
エアリス | 国王様……。 |
王 | だが…彼らは狡猾だ。巧みにこちらの心の隙を突いて来る…。 |
| 妖魔が何か他の事に気を取られたので無ければ、こうしてお前を連れ出す事も出来なかっただろう…。 |
エアリス | 何か他の事…?何が起きたのですか? |
王 | 判らない…。凶兆で無ければ良いが…。 |
エアリス | …陛下。お顔の色が良くありません。お城に戻りましょう。 |
| 暫くは私がお側にいて、お護りいたします。 |
王 | ……お前が? |
エアリス | 陛下のご病気は、生来のものだけでは無いようです。侍医が妖魔の眷属ならば、闇の力を使ってご病状を悪化させていたのかも知れません。 |
王 | ……他ならぬ侍医が、私の病を悪化させていたなどと……。 |
エアリス | お城に戻りましょう。そして、妖魔との戦い、微力ながらお手伝いさせて下さい。 |
王 | ああ…。頼む。 |
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【宿】 |
妖精 | それで、何か思い出したのか? |
クラウド | …それが、何も…。 |
妖精 | わざわざ北の大空洞まで行ったのに、駄目だったのか? |
クラウド | ……済まない。 |
妖精 | …ガストの遺した物は、日記や手紙も含めて全て読み尽くしてしまった。 |
| あとはお前だけが頼りなんだが…。 |
クラウド | ……。 |
ザックス | …やっぱり、俺は魔術師の館に行ってみようと思う。 |
| あそこにセフィロス王子がいるのは、まず間違いないんだろう? |
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--ユフィ登場 |
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ザックス | ユフィ…!何かあったのか? |
ユフィ | うん。妖魔と関係あるかどうか判らないけど、王宮でちょっと妙な事があったから、知らせに来たんだ。 |
ザックス | 妙な事? |
ユフィ | 国王陛下がどこからか白魔術師を連れて来て、お側で仕えさせているって。 |
妖精 | 白魔術師だと?まさか女なのか? |
ユフィ | そう。それも栗色の髪に緑の瞳をした可愛い娘だって侍女たちが―― |
ザックス | エアリスだ…! |
クラウド | …どういう事なんだ?エアリスは、妖魔に連れ去られたのに…。 |
妖精 | 王も妖魔の側についたんだ…。エアリスももう、闇に取り込まれてしまったのかも知れない…。 |
謎の男 | 或いは、王がエアリスを助けたか…だが。 |
妖精 | セフィラの力が覚醒しなければ殆ど寝たきりの王に、妖魔からエアリスを救う力なんてある筈が無い。 |
| そしてセフィラが覚醒しているなら、王は既に妖魔だ。 |
| とにかく、俺は王宮に行く。 |
ザックス | そんな事して、大丈夫なのか?王様が妖魔に取り込まれてるなら、セフィだって……。 |
妖精 | 北の大空洞のように強い妖気が満ちている場所なら別だが、そう簡単に取り込まれたりはしない。 |
| 俺たち妖精は、お前たち人間とは違うんだ。 |
クラウド | ……。 |
ザックス | だったら、俺も一緒に―― |
妖精 | お前がいたんじゃ足手まといだ。俺一人ならば空も飛べるし、人間に見咎められる事も無い。 |
ザックス | ……そうか。じゃあ、くれぐれも気をつけろよ? |
妖精 | 判っている。 |
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【王の寝室】 |
エアリス | …お探ししましたが、王弟殿下の居場所は掴めませんでした。 |
王 | ……そうか。 |
エアリス | 白魔術で探せなかったという事は、光の領域にはいらっしゃらないという事になります。 |
王 | ではまさか闇の領域に? |
| 嫌……セフィロスに限って、そんな事はあり得ない。 |
| いかに妖魔が巧みに人の心の隙に入り込もうと、セフィロスが妖魔の誘惑などに屈する筈が無い。 |
エアリス | …弟君を、信じておられるのですね。 |
王 | ……生来、病弱である私と対照的に、セフィロスは才能に恵まれ、望まなくても全てを手に入れていた。 |
| それでも奢る事無く、明らかに自分の方が優れているのに、私を補佐する立場に不満を漏らした事も無い。 |
| 子供の頃にはよく勝手に城を抜け出して家臣たちを慌てさせていたが……その度に季節の花などを持ち帰って、外に出る事も出来ない私を慰めようとしてくれた…。 |
エアリス | お優しい方なのですね。 |
王 | だが……私はセフィロスに謀反の濡れ衣を着せてしまった。弟を妬む気持ちを抑えきれず、侍医の言葉に唆されてしまったのだ……。 |
| その私の弱さが、セフィロスを絶望させてしまったのだろうか……? |
エアリス | ……王弟殿下は、兄君を信じておられると思います。 |
| あの方は情に厚く、部下の騎士や兵士、それに民からも敬愛されています。 |
| その王弟殿下が、兄君を信じなかったり、裏切ったりする筈がありません。 |
王 | ……では、今、セフィロスはどこにいるのだ? |
エアリス | 光にも闇にも属さない場所が国境の森の奥にあります。そこにいらっしゃるのなら、黒魔術でも白魔術でも居場所を知る事が出来ないのです。 |
王 | ……そう言えば、侍医はセフィロスの行方が掴めないと言っていた。その言葉が嘘で無いなら、セフィロスは闇の領域にはいない事になる。 |
| だが、闇にも光にも属さないとは、一体、どういう場所なのだ? |
エアリス | 半人半妖の魔術師、私の腹違いの兄の住まいです。 |
王 | お前の兄だと?では…あの夜、セフィロスが会いに行った相手は、お前の兄だったのか…。 |
| それにしても、お前に半人半妖の兄がいるとは…。 |
エアリス | 妖魔の血を引いているせいで人からは恐れられていますが、それでも、私には大切な、たった一人の兄です。 |
王 | ああ……そうだな。 |
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【王の間】 |
妖精 | (気配を感じる。エアリスがいるのはこの奥か…) |
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--侍医が現れる |
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侍医 | 妖精は妖魔と人間に対して中立の筈なのに、何の真似だ? |
妖精 | 人間の味方をしている訳じゃない。友だちを助けたいだけだ。 |
侍医 | 人間と妖精の間に、友情など成り立つ筈があるまい。住む世界も価値観も、寿命の長さも違いすぎる。 |
妖精 | お前には、関係の無い話だ。 |
侍医 | フン…小生意気な妖精が。だが、それはどうでも良い。 |
| 今まではその時では無かったが、漸く時が満ちたのだ。 |
妖精 | 時が満ちた…だと?どういう意味だ? |
侍医 | クラウドは我が主の手に堕ちた。リユニオンの成就は目前だ…。 |
妖精 | (まずい……!) |
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--侍医と戦い、負ける |
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妖精 | (エア…リス……) |