【宿】 |
妖精 | 仲間達から色々、情報を集めてみたが、王弟セフィロスが村人を惨殺しているというのは、どうも虚言のようだ。 |
| どこの村でそれが起きたのか人によって言う事がバラバラだし、実際にどこかで虐殺が起きたのを見た者はいない。 |
ザックス | じゃあ、セフィロス王子はまだ魔王に取り込まれてはいないって事なのか? |
妖精 | そうとも限らない。下等な魔物と違って、魔王クラスの妖魔になると、無意味に人を殺したりはしないんだ。 |
| 妖魔セフィロスが何年もずっとこの国の人々を殺し続けていたのは、王弟セフィロスを覚醒させるのが目的だったんだろう。 |
ザックス | それにしても、王子はどこに行っちまったんだろうな…。 |
| 怪しげな男に連れ去られたって言ってたけど、そいつ、どんな外見だった? |
ユフィ | 黒ずくめの服装で、長い銀色の髪で―― |
ザックス | そいつ、魔術師セフィロスじゃないか…! |
妖精 | 俺の仲間たちが探しても見つからないのだから、どこか特別な場所だろうとは思っていたが…。 |
ザックス | じゃあ、王子を迎えに行こうぜ。まだ闇に取り込まれてないなら、こっちの味方になってくれる可能性だってあるだろう? |
妖精 | 既に覚醒しているのなら、残りのセフィラである俺たちまで取り込まれて魔王の復活だがな。 |
ザックス | だったらセフィとアノニムはここに残ってくれ。俺一人で行く。 |
| 俺一人だったら、最悪、死んでもこれ以上、事態は悪くならないだろう? |
謎の男 | 良くもならないがな。魔法の一つも使えないお前が行ったところで、ただの犬死だ。 |
ザックス | じゃあ、何もしないで世界が闇に沈むのを黙って見ていろって言うのか? |
妖精 | 別にそれも悪くない。闇は悪ではない。 |
ザックス | セフィ…。お前だって、エアリスを助けたいって……。 |
妖精 | 妖魔の手からは救いたい。 |
| だが、人間は皆、闇と光、両方の属性を持っている。 |
| 世界が闇に沈んだからといって、それは必ずしも不幸な事じゃない。 |
ザックス | そんな……。 |
謎の男 | 妖精は、人間とは価値観が違うんだ。 |
ザックス | ……じゃあ、やっぱり俺たち人間が何とかするしか無い。 |
| 魔法も使えない普通の人間の俺に出来る事は限られてるかも知れないけど、どんな小さな事でもやらないよりはマシだ。 |
妖精 | ……お前がそうまで言うなら、もう少し、ガストの資料を調べてみる。 |
| 研究書はあらかた読み尽してしまったから、残っているのはメモ程度だが…。 |
謎の男 | だったら俺も一緒に行こうか? |
妖精 | お前、古代語が読めるのか? |
謎の男 | ああ。実は、俺の母親は黒魔術師だ。 |
ザックス | 魔術師って、まさか『雪女』があんたのお袋さん…? |
謎の男 | そうだ。 |
ザックス | そうだったのか…。 |
| それは良いけど…大丈夫なのか?二人とも、妖魔に生命を狙われるかも知れないのに…。 |
謎の男 | だから俺が一緒に行こうと言ったんだ。少なくとも、その妖精より俺のほうが戦闘力はありそうだ。 |
妖精 | 生意気な人間だな…。まあ良い。護衛をさせてやる。 |
謎の男 | じゃあ、何かあったら連絡する。それまでは無謀な真似はするなよ? |
| お前は、俺に借りがあるんだ。 |
ザックス | そうだったな…。死んじまったら、あんたへの謝礼が払えない。 |
謎の男 | そういう事だ。じゃあな。 |
| |
--妖精と謎の男、退場 |
| |
ユフィ | あたしも、そろそろ王宮に戻らないと。 |
ザックス | じゃあ、送ってくぜ。魔物が出るかも知れないし。 |
ユフィ | 大丈夫。あたしは兵士だし、ニンジャの末裔なんだから。 |
| 街中に出るような小物の魔物は、あたしの敵じゃない。 |
ザックス | ……判った。じゃあ、気をつけて。 |
| |
--ユフィ退場 |
| |
ザックス | (街中に出るのは小物の魔物だけ…か) |
| (クラウドと一緒の時は、クラウドの闇が魔物を呼び寄せていたから別だったのか…) |
| (クラウドの奴、今頃どこでどうしているんだか……) |
| |
| |
【神殿】 |
王 | …この娘は? |
妖魔 | 白魔術師だ。 |
| 眷属にしようと側に置いたが、どうにも強情で私の意に従おうとしない。 |
| だから、処分する。 |
王 | …殺すのか? |
妖魔 | ああ。お前の仕事だ。 |
王 | 私の…? |
侍医 | その娘は古の白魔術師の力を継承する古代種です。 |
| その娘の生命を断つ事で、あなたの中で眠っている力が覚醒するのです。 |
王 | 何の罪も無い者を殺せる筈が無いだろう? |
妖魔 | 罪ならば、ある。 |
| 古代種は、2000年前に私が闇の秩序を取り戻そうとした試みを阻止した大罪人どもの末裔だ。 |
| 継承した力と共に、罪も継承しているのだ。 |
王 | ……お前は魔王の力がミッドガル王家に受け継がれているのだと言っていたが、ミッドガル王家の祖先は『伝説の英雄』の筈だ。 |
| 私に力があるとすれば、それはむしろお前を倒す為の力ではないのか? |
妖魔 | ミッドガル王家の始祖は、一介の魔術師だった。 |
王 | ……何? |
妖魔 | それが偶然、魔王の力の一部であるセフィラを手に入れ、それを利用してこの国を支配したのだ。 |
王 | ミッドガル王家が、魔王の力を利用しただと……? |
妖魔 | 魔王の力を利用し、その力を継承してきた。それがお前たち一族だ。 |
| 運命の定めに従い、継承した力を覚醒させるが良い。 |
王 | ……。 |
| |
| |
【宿】 |
--ザックスが戻ると、クラウドが一人で宿に居る |
ザックス | クラウド……。戻ってたんだ。 |
クラウド | ……ああ。 |
ザックス | ……。 |
クラウド | ……さっきは……ありがとう。 |
ザックス | 嫌、礼なんて……。きつい言い方して、悪かったな。 |
| お前の辛い気持ちを、もっと考えてやれば良かった。 |
クラウド | ……気持ちを考えるべきだったのは俺の方だ。 |
| 子供の頃、孤立した俺を心配してくれた母さんや、俺を信じて庇ってくれようとしたティファの気持ちをもっと考えてたら、あんなに意固地にはならなかった筈だ。 |
| お前だって本気で俺の事、心配してくれてるのに、俺は自分の事しか考えられなくて……。 |
ザックス | ……アノニムはああ言ってたけど、妖魔に操られてした事なんだから、やっぱりお前は悪くないと思う。 |
クラウド | ……確かに妖魔に唆されなければ、あんな事はしなかったと思う。 |
| でも妖魔につけ込まれるような闇を心に抱えてしまったのは、俺の責任なんだ。 |
| 俺は嘘を吐いていないんだから信じてくれない皆の方が悪いんだって意地をはって、自分で自分を追い詰めていた…。 |
ザックス | ……だけど、4歳の時の話だろう? |
クラウド | きっかけはその時だったけど、その後もずっと孤立してたのは俺が意地をはり続けたせいなんだ。 |
| ティファや母さんの気持ちを少しでも考えてたら、そんな事はしなかった筈だ。 |
| 自分の悔しさや孤独ばかりに目が行って、ティファや母さんも辛い想いをしてるんだって、気づけなかった……。 |
ザックス | ……あんまり自分を責めるなよ。 |
クラウド | …自虐的になってる訳じゃ無いんだ。5年前からずっと俺の心に重くのしかかって俺を苦しめ続けていたのは、俺自身の心の闇だった。 |
クラウド | 妖魔のせいにしたり目を逸らしたりしていたら、いつまで経っても闇は晴れない。 |
| きちんと自分の心の闇と向き合って克服し、罪を償わなければ…。 |
ザックス | ……俺さ、人を見る目はある積りだとか言ったけど、本当はしょっちゅう騙されたり裏切られたりばっかりしてるんだ。 |
| 友だちからは『詐欺師のカモになる為に生まれてきた男』とか言われるし。 |
| でもそれでも、一人でも信じられる相手がいる限りは人を信じ続けていたいって思うし、俺を信じてくれる人が一人でもいるなら、他の誰かに裏切られたって立ち直れる。 |
クラウド | ……ティファは、ずっと俺の事を信じてくれた。 |
| 目の前で父さんが殺されてティファ自身も俺に傷つけられたのに、それでも村の人に何も言わなかったのは、俺の事を信じてくれたからだろう。 |
| 俺がその信頼に応えられなかったら、ティファの哀しみはきっと癒えない。 |
ザックス | ティファに…全てを話すのか? |
クラウド | ああ…。ユフィも言ってたけど、自分を信じてくれる人に嘘は吐けない。 |
| きちんと話して、謝らないと。俺が赦してもらう為じゃなくて、ティファの信頼に応える為に。 |
ザックス | ……そうだな。話したらどうなるのか判らないけど、ティファには話した方が良いと思う。 |
| でもその前に、魔王をどうにかしないと。 |
クラウド | …判ってる。 |