【街】 |
村人A | とても信じられない。王弟殿下が、実は妖魔だったなんて…。 |
村人B | 嘘に決まっている。謀反だって、濡れ衣だろうし。 |
村人C | でも、殿下が村人を殺す姿を見た人が何人もいるって……。 |
村人D | 今までずっと妖魔退治をしなかったのも、殿下の正体が妖魔だからだという噂も……。 |
ザックス | 何だかとんでもない事になってるな…。 |
クラウド | セフィが俺たちに知らせようとしたのは、この事だったのか? |
謎の男 | さあな。とにかく、宿に戻ろう。 |
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【宿】 |
妖精 | やっと戻ったか。随分、遅かったな。 |
ザックス | 俺たちは空を飛んだり出来る訳じゃないからな。それより、大変な騒ぎになってるみたいだけど。 |
妖精 | ああ…。王弟がどこかの村で村人を惨殺していると、もっぱらの噂だ。 |
ザックス | でも、セフィロス王子ならユフィの所で匿ってる筈だろう? |
ユフィ | それが…あたしの従者が王子に毒を盛って、その後、怪しげな黒衣の男に連れ去られてしまって…。 |
ザックス | 毒を盛った?一体、どうしてそんな事を? |
ユフィ | 妖魔に操られたんだ。 |
謎の男 | だがそれならば、その従者は王弟に対して元々、何らかの否定的な感情を持っていた筈だが。 |
ユフィ | それは……。 |
謎の男 | 見たところお前はウータイ人のようだが、それがどうしてミッドガルの兵士なんかやってるんだ? |
ユフィ | ……判った。全部、正直に話すよ。 |
| ウータイが度重なるミッドガルとの戦で連敗しているのは皆も知っている通りだけど、その原因は言うまでも無くセフィロス王子の存在だ。 |
| だからウータイの首長評議会は、セフィロス王子を暗殺する事を決めた。 |
ザックス | 暗殺って…まさか、ユフィ……。 |
ユフィ | 多数決で暗殺が決まったけど、暗殺に反対の首長も何人かいて、和平交渉の道を開こうとしている。 |
| その暗殺反対派から、あたしは派遣されたんだ。 |
謎の男 | どうやらお前の従者は、暗殺賛成派のようだな。 |
ユフィ | 連戦連敗の状況で和平交渉なんかするのは、自ら属国になると申し出るようなものだから…。 |
| 暗殺反対派の中でもミッドガルとの和平を考えているのは実は一人だけで、それ以外は暗殺なんて卑怯だからって反対してるだけなんだ。 |
| あたしはその唯一の和平交渉派の首長の命令で、ミッドガルの内情を探る為にこの国に来た隠密だ。 |
ザックス | ……子供にしては随分、腕が立つと思ってたけど……。 |
ユフィ | だからあたしは子供じゃ無いって!もう14歳の立派なレディだよ? |
謎の男 | 子供だな。 |
ザックス | …子供だよな。 |
セフィ | 子供だ。 |
ユフィ | ……とにかく、素性を隠してこの国に来て志願し、兵士になった。 |
| 王子は身分にかかわらず実力者を登用する事で知られているけど、ウータイ人のあたしの事も、差別せずに扱ってくれた。 |
クラウド | ウータイとミッドガルの間には、何度も戦があったのに…。 |
| それなのに、ウータイ人を兵士に取り立てるのか? |
ユフィ | 兵士に志願した時、『ミッドガルの為に戦う覚悟があるのか?』ってセフィロス王子から訊かれた。 |
| 『場合によっては、祖国との戦に投入される可能性もあるが』って。 |
| あたしはウータイとは戦えないけど、ミッドガルの平和を護る為に全力を尽くすって答えたんだ。 |
| その時、セフィロス王子は、あたしを信じるって言ってくれた。 |
| それだけじゃなく、ウータイと戦わずに済むように、後宮付きの警備兵にしてくれたんだ。 |
謎の男 | 傭兵ならとも角、外国人をそこまで信用して兵士に取り立てるのも珍しいが…。 |
ザックス | セフィロス王子は情に厚いって言われてるけど、その通りなんだな。 |
ユフィ | ミッドガルの兵士になって判ったのは、戦を起こしているのは大臣だって事だった。 |
| 国王陛下は病弱で殆ど寝た切りで、それを悪用して大臣が私腹を肥やす為にウータイの豊かな穀倉地帯を狙っているんだって、兵たちも街の人たちも噂している。 |
謎の男 | だが、噂はあくまで噂だ。何か根拠はあるのか? |
ユフィ | 大臣が戦の元凶だって証拠は無いけど…。でも、セフィロス王子のせいで戦が起きているんじゃないのは間違いない。 |
謎の男 | どうしてそう、言い切れる? |
ユフィ | セフィロス王子は王族なのに気さくで身分の低い兵士とも親しく言葉を交わす事が多いから、あたしも話す機会は何度もあった。 |
| 王子は最強の騎士だけれど、殺戮を望んではいないんだ。 |
謎の男 | 望んではいなくとも、国益の為に戦をする事はあるだろう。 |
ユフィ | それは立場上、仕方ない事だけど、少なくともウータイとの戦は避けたかったって。 |
| はっきりとは言わなかったけど、兄君が大臣の口車に乗せられて、戦を決めてしまったらしいんだ。 |
謎の男 | お前がウータイ出身だから、そう言っただけじゃないのか? |
ユフィ | そうかも知れないけど…でもあたしが王子を信じるのは、他にも理由がある。 |
ザックス | と言うと? |
ユフィ | あたしはニンジャの末裔だから、他の兵士には無い能力があるんだ。 |
| 王子はそれを高く評価してくれて、あたしを騎士に取り立てようとした。 |
| でも、あたしは断った。兵士と違って、騎士は一生を王に捧げる誓いを立てなければならないから。 |
| 素性を隠してる時点で嘘を吐いているようなものだけど、偽りの誓いを立てるのはまた別の話だし。 |
ザックス | でも…せっかく騎士にって言って貰えたのに、それを断ったら怪しまれないか? |
ユフィ | 勿論、理由は訊かれた。それらしい嘘を吐いて誤魔化すべきだったんだろうけど、あたしは嘘は吐けなかった。 |
| 王子は初めて会った時、あたしに『信じる』って言ってくれた。 |
| 自分を信じてくれる人に、嘘は吐けない。 |
| それで、今は事情を話せないし騎士にもなれないけど、でもミッドガルの平和を護りたい気持ちに偽りはないって言ったんだ。 |
| あたしはウータイの為にミッドガルの内情を探りに来たけど、こっちで知り合いも友達も出来たし。 |
| だからミッドガルの平和も護りたいのは、嘘じゃない。 |
| その時もセフィロス王子は、あたしを信じるって言ってくれた。 |
ザックス | 王子が騎士や兵士たちから敬愛されてるのは、強いからだけじゃなくて、そういう人柄のせいもあるんだな…。 |
ユフィ | だからセフィロス王子の正体が妖魔だとか村人を殺しただとか、絶対にあり得ない。 |
妖精 | ……そうとも言い切れない。 |
ザックス | セフィ…。一体、何が判ったんだ? |
妖精 | ……。 |
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【王の間】 |
侍医 | 国境付近で大臣一行の身柄を確保したとの報告が入りました。 |
王 | ……叔母上も一緒なのか? |
侍医 | ご一緒だそうです。大臣夫人は丁重に扱うようにと、兵たちには命じてあります。 |
王 | まさか……大臣が本当にこの国を見捨てて逃亡を図ったとはな…。 |
侍医 | 他にも所在不明となっている貴族たちには、追っ手を差し向けてあります。 |
王 | ……セフィロスの行方は、まだ判らないのか? |
侍医 | 申し訳ございません。 |
王 | お前のせいでは無い。と言うより、捜索しても無駄だろうな…。 |
| 兵たちや民は私よりセフィロスを王にと望んでいるのだ。匿おうとする者は多いだろう。 |
侍医 | 王はあなたです、陛下。 |
王 | ……。 |
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【宿】 |
妖精 | 鍵を握っているのがセフィロスの名を持つ者であるのは、前にも話したな。 |
ザックス | ああ。ちゃんと覚えてるぜ。 |
妖精 | 実は、鍵を握っている以上だった。 |
ザックス | と言うと? |
妖精 | セフィロスの名を持つ者が、魔王の力を受け継ぐ者。 |
| すなわち、セフィラの継承者だったんだ。 |
ザックス | セフィラの継承者…? |
妖精 | 『均衡の柱』を構成する4つのセフィラは妖刀正宗に化身したが、それ以外の6つのセフィラは、6人のセフィロスが継承している。 |
| 王弟セフィロス、妖魔セフィロス、魔術師セフィロス、それに国王セフィロスがその内の4人に該当するのは、まず間違いない。 |
ザックス | まさか…セフィロス王子は本当に妖魔なのか? |
| それに、病弱でほとんど寝たきりの王様まで? |
妖精 | 恐らく、国王セフィロスが継承したセフィラの力は、全く覚醒していないのだろう。 |
| それに、10のセフィラが均等に力を継承している訳ではない。 |
| 中心となる力を持つのは、『峻厳の柱』の中核をなす峻厳のセフィラと、『慈悲の柱』の中核である慈悲のセフィラだ。 |
謎の男 | 妖魔セフィロスがその中核の一つなのは間違いないだろうが…。 |
妖精 | もう一つの中核が、王弟セフィロスだ。 |
謎の男 | どうして断言できる? |
妖精 | 王弟の誕生には、ジェノバが関わっていたんだ。 |
ザックス | …魔術師セフィロスが王弟に禍々しい気を感じるって言ってたのは、そういう事だったのか? |
ユフィ | そんな筈はない。何かの間違いだよ。 |
ザックス | クラウド、お前、森でセフィロス王子に会った時に、厭な感じがするとか言ってたよな? |
クラウド | 言ったけど……それは多分、王子と会ったのを皆に話した事が、ニブルヘイムで孤立するきっかけになったせいだと思う。 |
| 王子自身は、15年前に会った時の印象では、気さくで優しかったし……。 |
ザックス | 確かに…森で会った時もそんな感じだったよな。 |
謎の男 | 今まで眠っていた魔王の力が覚醒したなら、別人のように変わり果てても不思議ではない。 |
| これまでどんな人間だったかなんて、全く無関係だ。 |
ユフィ | そんな……。 |
ザックス | …セフィロス王子が本当に妖魔だとしたら、俺たちはどうすれば良いんだ? |
妖精 | ガストの研究では、セフィラを封印する方法までは判らなかったようだ。 |
| だからガストは、研究を公表せずにいた。無用な恐怖を煽りたく無かったんだろう。 |
| 何より、王と王弟が魔王の力の継承者だなどと、迂闊に言える筈も無い。 |
クラウド | …王弟セフィロス、妖魔セフィロス、魔術師セフィロス、国王セフィロスが4つのセフィラの継承者なら、あと2人は誰なんだ? |
妖精 | ……今まで言わなかったが、俺の本当の名前もセフィロスだ。 |
ザックス | …え?じゃあ、まさかお前も……。 |
謎の男 | …実は、俺もだ。 |
ザックス | ……! |
クラウド | ……! |