【山小屋】 |
ザックス | クラウド…!もう、起きて大丈夫なのか? |
クラウド | ……。 |
ザックス | お前、3日も眠ってたんだぞ? |
クラウド | ……俺は……。 |
謎の男 | 記憶は戻ったんだろう?何を思い出した? |
クラウド | ……。 |
ザックス | …別に、言いたくなければ言わなくたって良いんだぞ? |
謎の男 | それでは今までと同じだな。 |
ザックス | 同じ…って? |
謎の男 | 思い出したくない記憶だから抑圧していたんだろうが、それで過去が無くなる訳じゃない。 |
| きちんと向き合って乗り越えない限り、何も解決しない。 |
クラウド | ……じゃない。 |
ザックス | …え? |
クラウド | ……俺のせいじゃない。あの時…黒い羽根が落ちてた。だからきっと妖魔が……。 |
ザックス | 妖魔がどうしたんだ? |
クラウド | ……俺はきっと妖魔に操られていたんだ。さもなければあんな事、俺がする筈が……。 |
謎の男 | 妖魔に操られて何かをしたのだとしたら、それはお前が本心では望んでいた…という事だな。 |
クラウド | ……!そんな筈は―― |
謎の男 | 妖魔に操られて金を盗んだ者がいるなら、その者の心には強欲があり、人を殺したのなら、その者の心には憎悪がある。 |
クラウド | 違う…!俺は皆を憎んでなんかいなかった…!! |
ザックス | クラウド……お前、まさか……。 |
クラウド | ……あの場所で見た幻影が嘘なんだ。あんなもの、嘘に決まってる。 |
| だってティファはあの時、俺の姿を見たのに殺されなかった唯一の生き残りで、それでも俺に何も言わなかった。 |
| 俺が本当に皆やティファの父さんを殺したんなら、ティファが俺を許す筈が無い……。 |
謎の男 | …『雪女』が見せる幻影に、嘘偽りは無い。全て、真実だ。 |
クラウド | ……嘘だ……。そんな事、ある筈が……。 |
ザックス | …妖魔に操られてした事なら、クラウドに罪は無いだろう? |
謎の男 | 言っただろう。本心では望んでいたのだ…と。 |
| 人間は妖魔に操られたからだと言って己の罪を逃れようとするが、正確に言えば操るのではなく、唆すんだ。 |
| 本人が全く望んでもいない事を強いるのは、妖魔にも不可能だ。 |
クラウド | 嘘だ…!全部、でたらめだ!『雪女』が見せた幻影なんて、信じられるものか…! |
ザックス | クラウド、落ち着けよ…。俺はお前を信じるぜ? |
クラウド | 俺の事を何も知らない癖に、軽々しく信じるなんて言うな…! |
| お前は人が良いフリをして奇麗事を並べているだけだ。 |
| 本心ではエアリスを助ける為に俺を利用したいだけだろう? |
ザックス | クラウド……。 |
クラウド | みんな同じだ。奇麗事を並べて善人ぶって、でも内心では俺の事を蔑んでるんだ。 |
| みんな……ティファや、母さんだって……。 |
謎の男 | ……自分の母親まで手に掛けたのか……。 |
クラウド | 違う…!どうして俺の事を判ってくれないのか歯がゆく思ってはいたけど、憎んでなんて……。 |
謎の男 | …もっと自分の事を理解して欲しいと思っていたんだな。 |
クラウド | ……当然だろう?父さんがいないから、母さんがたった一人の肉親だったんだ。 |
| そうでなくとも、子供だったら親に理解して欲しいと思うのは当たり前だ。 |
謎の男 | 『俺の事をもっと理解してくれる母さんだったら良かったのに』 |
クラウド | ……え? |
謎の男 | そう、望んだんじゃないのか? |
クラウド | ……望んだら、いけないか? |
謎の男 | 自分を理解してくれる母親の存在を望んだという事は、自分を理解しない母親の存在を否定した、という事だ。 |
| だから、殺した。 |
クラウド | 違う…!!俺は誰も殺してなんかいない…!全部、嘘だ……!! |
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--クラウド、外に飛び出す |
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ザックス | あ…クラウド! |
謎の男 | 追うな。 |
ザックス | だけど……。 |
謎の男 | 一人にしておいてやれ。これは、あいつが自分で乗り越えなければならない問題だ。 |
ザックス | ……。 |
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【宿】 |
ユフィ | …あんた、誰? |
妖精 | お前こそ、誰だ? |
ユフィ | あたしはユフィ。ここに来ればザックスに会えると思って来たんだけど。 |
妖精 | あいつは今、アイシクルに行っているが、俺もあいつらに用があるからここに来たんだ。 |
ユフィ | …どういう事? |
妖精 | 使令を飛ばす。その為にはあいつらが通った道を辿る必要があるから、出発点のここに来た。 |
| それで、お前の用事は? |
ユフィ | 王弟殿下をうちで匿ってたんだけど、黒衣の怪しげな男に連れて行かれてしまって…。 |
妖精 | 連れて行かれた?無抵抗だったのか? |
ユフィ | それが……急に倒れて……。 |
妖精 | (この娘、何かを隠しているな…) |
| どうやら急いだ方が良さそうだな。行け! |
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--使令を飛ばす |
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ユフィ | …あんたってさ、精霊だよね?この国の呼び方だと、妖精だっけ? |
妖精 | …子供には、俺達の姿が見える者が少なくないが…。 |
ユフィ | あたしは子供じゃない!精霊が見えるのは、ニンジャの末裔だからだよ。 |
妖精 | ニンジャ?ウータイの魔術師の事か? |
ユフィ | 魔術師とは違うけど、修行によって普通の人間には無い能力を身につけてるってところは一緒かな。 |
| それより、助けて欲しい事があるんだ。あたしの家まで来てくれない? |
| ちゃんとお供え物はするから。 |
妖精 | ……ウータイの精霊はお供え物とやらと引き換えに人間の頼みごとを聞くのか? |
| 俺たち妖精は妖魔と人間に対して中立だ。人間の頼み事なんて聞かない。 |
ユフィ | でも、だったらどうしてザックスに用があるなんて…? |
妖精 | 同じ目的を持っているから、一時的に協力しているだけだ。 |
ユフィ | その目的って、セフィロス王子と関係のある事? |
妖精 | まあ……あると言えばあるが。 |
ユフィ | じゃ、きっとあたしの目的とも一致する筈だから、とにかく家まで来て! |
妖精 | 強引な奴だな…。 |
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【ユフィの家】 |
--男がうろうろしている |
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ユフィ | 彼はあたしの従者なんだけど、数日前から様子がおかしいんだ。 |
妖精 | 妖魔に操られて、魂が壊れているな…。 |
ユフィ | 魂が壊れている…!? |
妖精 | ごく稀にだが、妖魔に操られたせいで、魂が壊れてしまう事がある。 |
ユフィ | そんな……。 |
| ニンジュツではどうにも出来なかったから、あんたの力で元に戻して欲しいんだけど…。 |
妖精 | 一体、何があった? |
ユフィ | 実は……従者が王弟殿下の食事に毒を…。 |
妖精 | …妖魔は王弟を殺そうとしているのか。 |
| 厄介な事になりそうだ……。 |
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【山小屋】(夜) |
ザックス | クラウドの奴、どこまで行っちまったんだろう…。 |
| 俺、ちょっと探してくる。 |
謎の男 | 止めておけ。もう、陽が沈んでいる。 |
ザックス | だったら尚更、探さないと。魔物が出るんだろう? |
謎の男 | 『雪女』の話では、魔物を呼び寄せているのはクラウドの心の闇だ。 |
ザックス | セフィもそんな事を言ってたけど…。 |
| どっちにしても、仲間なんだから助けてやらないと。 |
謎の男 | そう思うなら、一人にしておいてやれ。 |
ザックス | だけど魔物が―― |
謎の男 | 言っただろう?魔物を呼び寄せているのは、クラウド自身なんだ。 |
| クラウドが自分の心の闇を克服しない限り、どこに行っても魔物は付きまとう。 |
| いくら魔物を倒しても元凶である闇をあいつが抱えている限り、キリが無い。 |
ザックス | それは判ったけど……でもあいつが故郷に火を放って、村人や自分の母ちゃんまで殺したなんて、俺にはとても信じられない。 |
謎の男 | それが、妖魔が人間に恐れられ、忌み嫌われる理由だな。 |
ザックス | ……え? |
謎の男 | クラウドは元々、心に闇を抱えていたが、それだけでそんな事件を起こしたりはしなかっただろう。 |
| 妖魔は失望を絶望に、嫌悪を憎悪に変えてしまう。 |
ザックス | …つまり、悪い感情が、より強くなるって事か? |
| でもそれだったら、誰でも多かれ少なかれ人を嫌ったり羨んだりする事はあるんだから、そこを妖魔につけ込まれたら……。 |
謎の男 | 妖魔につけ込まれる可能性は、誰でも持っている。 |
| だが多くの人間を惨殺する程の事件を起こしたのなら、元々クラウドが抱えていた闇がよほど深かったか、或いは別の理由があったか…だ。 |
ザックス | 別の理由…? |
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--使令が到着する |
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ザックス | この鴉、どっから入って来たんだ? |
鴉 | 重要な事が判った。 |
ザックス | げっ…。鴉がセフィの声で喋ってる……。 |
謎の男 | どうやら妖精の使令の様だな。 |
鴉 | すぐにミッドガルに戻れ。 |
謎の男 | 判った。朝になり次第、そちらに向かう。 |
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--鴉、飛び去る |
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ザックス | ミッドガルに戻るんだったら、やっぱりクラウドを探さないと…。 |
謎の男 | 信じて待つのも、一つの選択だぞ? |
ザックス | でも…もし明日の朝までに戻って来なかったら? |
謎の男 | お前は、クラウドが戻って来ないと思っているのか? |
ザックス | ……いいや、戻って来る。 |
| 俺は、そう信じる。 |