Sephiroth -セフィロト-

(20)  『心の闇』



【山小屋】
ザックスクラウド…!もう、起きて大丈夫なのか?
クラウド……。
ザックスお前、3日も眠ってたんだぞ?
クラウド……俺は……。
謎の男記憶は戻ったんだろう?何を思い出した?
クラウド……。
ザックス…別に、言いたくなければ言わなくたって良いんだぞ?
謎の男それでは今までと同じだな。
ザックス同じ…って?
謎の男思い出したくない記憶だから抑圧していたんだろうが、それで過去が無くなる訳じゃない。
きちんと向き合って乗り越えない限り、何も解決しない。
クラウド……じゃない。
ザックス…え?
クラウド……俺のせいじゃない。あの時…黒い羽根が落ちてた。だからきっと妖魔が……。
ザックス妖魔がどうしたんだ?
クラウド……俺はきっと妖魔に操られていたんだ。さもなければあんな事、俺がする筈が……。
謎の男妖魔に操られて何かをしたのだとしたら、それはお前が本心では望んでいた…という事だな。
クラウド……!そんな筈は――
謎の男妖魔に操られて金を盗んだ者がいるなら、その者の心には強欲があり、人を殺したのなら、その者の心には憎悪がある。
クラウド違う…!俺は皆を憎んでなんかいなかった…!!
ザックスクラウド……お前、まさか……。
クラウド……あの場所で見た幻影が嘘なんだ。あんなもの、嘘に決まってる。
だってティファはあの時、俺の姿を見たのに殺されなかった唯一の生き残りで、それでも俺に何も言わなかった。
俺が本当に皆やティファの父さんを殺したんなら、ティファが俺を許す筈が無い……。
謎の男…『雪女』が見せる幻影に、嘘偽りは無い。全て、真実だ。
クラウド……嘘だ……。そんな事、ある筈が……。
ザックス…妖魔に操られてした事なら、クラウドに罪は無いだろう?
謎の男言っただろう。本心では望んでいたのだ…と。
人間は妖魔に操られたからだと言って己の罪を逃れようとするが、正確に言えば操るのではなく、唆すんだ。
本人が全く望んでもいない事を強いるのは、妖魔にも不可能だ。
クラウド嘘だ…!全部、でたらめだ!『雪女』が見せた幻影なんて、信じられるものか…!
ザックスクラウド、落ち着けよ…。俺はお前を信じるぜ?
クラウド俺の事を何も知らない癖に、軽々しく信じるなんて言うな…!
お前は人が良いフリをして奇麗事を並べているだけだ。
本心ではエアリスを助ける為に俺を利用したいだけだろう?
ザックスクラウド……。
クラウドみんな同じだ。奇麗事を並べて善人ぶって、でも内心では俺の事を蔑んでるんだ。
みんな……ティファや、母さんだって……。
謎の男……自分の母親まで手に掛けたのか……。
クラウド違う…!どうして俺の事を判ってくれないのか歯がゆく思ってはいたけど、憎んでなんて……。
謎の男…もっと自分の事を理解して欲しいと思っていたんだな。
クラウド……当然だろう?父さんがいないから、母さんがたった一人の肉親だったんだ。
そうでなくとも、子供だったら親に理解して欲しいと思うのは当たり前だ。
謎の男『俺の事をもっと理解してくれる母さんだったら良かったのに』
クラウド……え?
謎の男そう、望んだんじゃないのか?
クラウド……望んだら、いけないか?
謎の男自分を理解してくれる母親の存在を望んだという事は、自分を理解しない母親の存在を否定した、という事だ。
だから、殺した。
クラウド違う…!!俺は誰も殺してなんかいない…!全部、嘘だ……!!
 
--クラウド、外に飛び出す
 
ザックスあ…クラウド!
謎の男追うな。
ザックスだけど……。
謎の男一人にしておいてやれ。これは、あいつが自分で乗り越えなければならない問題だ。
ザックス……。
 
 
【宿】
ユフィ…あんた、誰?
妖精お前こそ、誰だ?
ユフィあたしはユフィ。ここに来ればザックスに会えると思って来たんだけど。
妖精あいつは今、アイシクルに行っているが、俺もあいつらに用があるからここに来たんだ。
ユフィ…どういう事?
妖精使令を飛ばす。その為にはあいつらが通った道を辿る必要があるから、出発点のここに来た。
それで、お前の用事は?
ユフィ王弟殿下をうちで匿ってたんだけど、黒衣の怪しげな男に連れて行かれてしまって…。
妖精連れて行かれた?無抵抗だったのか?
ユフィそれが……急に倒れて……。
妖精(この娘、何かを隠しているな…)
どうやら急いだ方が良さそうだな。行け!
 
--使令を飛ばす
 
ユフィ…あんたってさ、精霊だよね?この国の呼び方だと、妖精だっけ?
妖精…子供には、俺達の姿が見える者が少なくないが…。
ユフィあたしは子供じゃない!精霊が見えるのは、ニンジャの末裔だからだよ。
妖精ニンジャ?ウータイの魔術師の事か?
ユフィ魔術師とは違うけど、修行によって普通の人間には無い能力を身につけてるってところは一緒かな。
それより、助けて欲しい事があるんだ。あたしの家まで来てくれない?
ちゃんとお供え物はするから。
妖精……ウータイの精霊はお供え物とやらと引き換えに人間の頼みごとを聞くのか?
俺たち妖精は妖魔と人間に対して中立だ。人間の頼み事なんて聞かない。
ユフィでも、だったらどうしてザックスに用があるなんて…?
妖精同じ目的を持っているから、一時的に協力しているだけだ。
ユフィその目的って、セフィロス王子と関係のある事?
妖精まあ……あると言えばあるが。
ユフィじゃ、きっとあたしの目的とも一致する筈だから、とにかく家まで来て!
妖精強引な奴だな…。
 
 
【ユフィの家】
--男がうろうろしている
 
ユフィ彼はあたしの従者なんだけど、数日前から様子がおかしいんだ。
妖精妖魔に操られて、魂が壊れているな…。
ユフィ魂が壊れている…!?
妖精ごく稀にだが、妖魔に操られたせいで、魂が壊れてしまう事がある。
ユフィそんな……。
ニンジュツではどうにも出来なかったから、あんたの力で元に戻して欲しいんだけど…。
妖精一体、何があった?
ユフィ実は……従者が王弟殿下の食事に毒を…。
妖精…妖魔は王弟を殺そうとしているのか。
厄介な事になりそうだ……。
 
 
【山小屋】(夜)
ザックスクラウドの奴、どこまで行っちまったんだろう…。
俺、ちょっと探してくる。
謎の男止めておけ。もう、陽が沈んでいる。
ザックスだったら尚更、探さないと。魔物が出るんだろう?
謎の男『雪女』の話では、魔物を呼び寄せているのはクラウドの心の闇だ。
ザックスセフィもそんな事を言ってたけど…。
どっちにしても、仲間なんだから助けてやらないと。
謎の男そう思うなら、一人にしておいてやれ。
ザックスだけど魔物が――
謎の男言っただろう?魔物を呼び寄せているのは、クラウド自身なんだ。
クラウドが自分の心の闇を克服しない限り、どこに行っても魔物は付きまとう。
いくら魔物を倒しても元凶である闇をあいつが抱えている限り、キリが無い。
ザックスそれは判ったけど……でもあいつが故郷に火を放って、村人や自分の母ちゃんまで殺したなんて、俺にはとても信じられない。
謎の男それが、妖魔が人間に恐れられ、忌み嫌われる理由だな。
ザックス……え?
謎の男クラウドは元々、心に闇を抱えていたが、それだけでそんな事件を起こしたりはしなかっただろう。
妖魔は失望を絶望に、嫌悪を憎悪に変えてしまう。
ザックス…つまり、悪い感情が、より強くなるって事か?
でもそれだったら、誰でも多かれ少なかれ人を嫌ったり羨んだりする事はあるんだから、そこを妖魔につけ込まれたら……。
謎の男妖魔につけ込まれる可能性は、誰でも持っている。
だが多くの人間を惨殺する程の事件を起こしたのなら、元々クラウドが抱えていた闇がよほど深かったか、或いは別の理由があったか…だ。
ザックス別の理由…?
 
--使令が到着する
 
ザックスこの鴉、どっから入って来たんだ?
重要な事が判った。
ザックスげっ…。鴉がセフィの声で喋ってる……。
謎の男どうやら妖精の使令の様だな。
すぐにミッドガルに戻れ。
謎の男判った。朝になり次第、そちらに向かう。
 
--鴉、飛び去る
 
ザックスミッドガルに戻るんだったら、やっぱりクラウドを探さないと…。
謎の男信じて待つのも、一つの選択だぞ?
ザックスでも…もし明日の朝までに戻って来なかったら?
謎の男お前は、クラウドが戻って来ないと思っているのか?
ザックス……いいや、戻って来る。
俺は、そう信じる。






back/next