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【宿屋】 |
ザックス | 高額の賞金がかけられてるから俺の他にも賞金目当ての魔術師や傭兵が何人も来てたけど、みんなやられちまったらしい。 |
クラウド | そんなに手強い相手なのか? |
ザックス | ああ。使い魔である魔物たちはどうにか倒せても、主の妖魔には全く歯が立たないって話だ。 |
クラウド | その妖魔、どんな姿をしているんだ? |
ザックス | わからない。何しろ、そいつの姿を見た者は、みんな死んじまったからな。 |
| ただ、そいつが現れた後には、必ず黒い羽根が落ちてるって話だ。 |
クラウド | 黒い羽根…!? |
ザックス | …どうしたんだ? |
クラウド | 俺の故郷が焼き払われた時にも、黒い羽根が残されてた…。俺はさっき『ある男を捜してる』って言ったけど、実際には村人を殺したのが誰なのか、全く判っていないんだ。 |
| それが男なのか女なのか、人間であるのかさえ……。 |
ザックス | でもさ、判らないんだったら、どうやって仇を探すんだ? |
クラウド | …覚えてはいないけど、本人に会えば判るんじゃないかと思う。 |
ザックス | 覚えてはいない…って? |
クラウド | 焼き討ちのあった時、俺は村はずれで倒れているのを近所の人に助けられたんだ。 |
| 俺はその時、全ての記憶を失っていて、そこが自分の故郷である事はもちろん、自分が誰であるかも全くわからなかった……。 |
ザックス | きっと、事件のショックで記憶を失ったんだな。じゃあ、まだ記憶は戻らないのか? |
クラウド | ああ……。 |
ザックス | …まあ、そんなに悲観しなくても、記憶はいつか戻るだろうし、戻らなくたって生きてけるさ。 |
| もしもこの国を荒らしている妖魔がお前の探してる仇なら、そいつを倒す事で記憶が戻るかも知れないし。 |
クラウド | …そうだな。黒い羽根という共通点が気になるし。 |
ザックス | じゃ、決まりだな。今日から俺たちは仲間だ。 |
クラウド | ……。 |
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【魔術師の館】 |
魔術師 | またお前か。 |
エアリス | 言ったでしょう?お父さんに会ってくれるまで、何度でも来るって。 |
魔術師 | 私も言った筈だ。母親が妖魔だと判った途端に生まれたばかりの赤子まで見棄てるような男など、私の父では無い…と。 |
エアリス | だからお父さんはその事をとても後悔していて、最期に謝りたいからって―― |
魔術師 | くどいな。私はあの人間に対して何の感情も抱いていないし、興味も無い。 |
| それに母も、ほんの気まぐれで人間と戯れただけだ。非力な人間の分際で謝罪だなどと、おこがましい。 |
エアリス | それでも……あの人は私たちのお父さんなのよ?私のお母さんが死んでからは、いつもお兄さんやお兄さんのお母さんに会いたいって言ってた。 |
魔術師 | 要するに、人間の女の方を優先したという訳だろう。誇り高い妖魔が、そんな侮辱に耐えられると思うか? |
エアリス | やっぱり…お父さんの事、怒ってるんだね。お父さん、償いの為ならどんな事でもするって言ってる。病気で先が長くないから、出来る事は限られてるけど…って。 |
| 私も、私に出来る事なら何でもする。 |
魔術師 | …お前には関係ないだろう。 |
エアリス | 関係はあるわ。だって私たちのお父さんなのに、今までずっと私が独り占めしてたんだもの。 |
魔術師 | 全く……どう言えば理解するんだ?無力な人間になど興味は無いし、謝罪も償いもおこがましいだけだ。 |
エアリス | 確かにおこがましいのかも知れないけど…。でも、私は無力なんかじゃない。 |
魔術師 | …面白い。そうまで言うなら、お前の力を見せてみろ。 |
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――魔物と戦う。エアリス勝利 |
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魔術師 | (…さすがは古代種だ) |
エアリス | これで、お父さんに会いに来てくれるよね? |
魔術師 | 私はただ、お前の力を見せてみろと言っただけだ。 |
エアリス | そんな―― |
魔術師 | 覚えておけ。過分な力を持てば、災いを招く事になる…と。 |
エアリス | 待って、お兄さん。お兄さん……! |
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【宿屋】 |
ザックス | エアリス…!会いに来てくれたんだ。 |
エアリス | うちでパイを焼いたから、持って来たの。 |
ザックス | サンキュー。あ、こいつはクラウド。俺の仲間だ。 |
エアリス | 私はエアリス。クラウドも、ゴンガガの人なの? |
クラウド | …俺は、ニブルヘイムっていう村の出身だ。 |
ザックス | 実は昨夜、知り会ったばっかりなんだ。俺と同じで夜になってからこの国に着いちまって、泊まる所も無くって。 |
| ちなみに、俺の時はエアリスが宿屋の主人に頼んで泊まれるようにしてくれたんだ。 |
クラウド | ザックスとエアリスは、元々知り合いだったのか? |
ザックス | いいや。1週間前の夜、泊まる場所を探してうろついてる時に出会って、助けてもらったんだ。 |
| あの時は本当に助かった。サンキューな。 |
エアリス | 困った時はお互い様でしょ?それにあの時は、私も夜道を一人で歩かなくて済んで助かったし。 |
クラウド | (夜に現れるよそ者は妖魔かも知れないのに、エアリスは初対面のザックスに宿を世話した) |
| (ザックスは、会ったばかりの俺を仲間に……) |
| (二人とも、どうしてそんなに簡単に人を信用できるんだ……?) |
ザックス | せっかくエアリスが来てくれたから、3人でお茶にでもするか。 |
エアリス | 残念だけど、私はもう、戻らないと…。お父さんの看病があるから。 |
ザックス | そうだったな…。親父さん、まだ良くならないのか? |
エアリス | お医者さんからは、もう諦めろって言われてる。 |
ザックス | そんな……。 |
エアリス | でも、私は諦めない。どんな時でも、必ず希望はあるって信じてる。 |
ザックス | …そうだな。俺に手伝える事があったら、何でも言ってくれ。 |
エアリス | ありがとう。 |
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――エアリス退場 |
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ザックス | エアリスも帰っちゃったし、魔物退治は陽が沈んでからだから、夜にそなえて寝ておくか。 |
クラウド | 俺はちょっと出てくる。ここの街を見ておきたいから。 |
ザックス | そうだな。案内しようか? |
クラウド | 大丈夫だ。一人で行ける。 |
ザックス | そうか。じゃ、夕方までにはここに戻って来てくれ。 |
クラウド | 判った。 |
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【街】 |
村人A | 毎晩、魔物が現れておちおち外出も出来ない。どうにかならないものか…。 |
村人B | 以前はとても賑わっていた街なのに、今では夜になるとゴーストタウンみたいだよ。 |
村人C | 国王陛下がご病弱では、魔物退治もままならない……。 |
村人D | 英雄の誉れ高い王弟殿下ならば、きっと魔物を退治して下さるに違いないわ。 |
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――魔物と戦う。クラウド勝利 |
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村人D | お兄ちゃん、強いんだね。見かけない顔だけど、先週、この街に来た賞金稼ぎのお仲間かい? |
クラウド | ザックスの事を言っているなら、一応、仲間だ。 |
村人A | それにしても、こんな昼間から魔物が現れるなんて初めてだ…。 |
クラウド | (ニブルヘイムでは、昼に魔物が現れるのは普通なのに……) |