Sephiroth -セフィロト-

(2)



【宿屋】
ザックス高額の賞金がかけられてるから俺の他にも賞金目当ての魔術師や傭兵が何人も来てたけど、みんなやられちまったらしい。
クラウドそんなに手強い相手なのか?
ザックスああ。使い魔である魔物たちはどうにか倒せても、主の妖魔には全く歯が立たないって話だ。
クラウドその妖魔、どんな姿をしているんだ?
ザックスわからない。何しろ、そいつの姿を見た者は、みんな死んじまったからな。
ただ、そいつが現れた後には、必ず黒い羽根が落ちてるって話だ。
クラウド黒い羽根…!?
ザックス…どうしたんだ?
クラウド俺の故郷が焼き払われた時にも、黒い羽根が残されてた…。俺はさっき『ある男を捜してる』って言ったけど、実際には村人を殺したのが誰なのか、全く判っていないんだ。
それが男なのか女なのか、人間であるのかさえ……。
ザックスでもさ、判らないんだったら、どうやって仇を探すんだ?
クラウド…覚えてはいないけど、本人に会えば判るんじゃないかと思う。
ザックス覚えてはいない…って?
クラウド焼き討ちのあった時、俺は村はずれで倒れているのを近所の人に助けられたんだ。
俺はその時、全ての記憶を失っていて、そこが自分の故郷である事はもちろん、自分が誰であるかも全くわからなかった……。
ザックスきっと、事件のショックで記憶を失ったんだな。じゃあ、まだ記憶は戻らないのか?
クラウドああ……。
ザックス…まあ、そんなに悲観しなくても、記憶はいつか戻るだろうし、戻らなくたって生きてけるさ。
もしもこの国を荒らしている妖魔がお前の探してる仇なら、そいつを倒す事で記憶が戻るかも知れないし。
クラウド…そうだな。黒い羽根という共通点が気になるし。
ザックスじゃ、決まりだな。今日から俺たちは仲間だ。
クラウド……。
 
 
【魔術師の館】
魔術師またお前か。
エアリス言ったでしょう?お父さんに会ってくれるまで、何度でも来るって。
魔術師私も言った筈だ。母親が妖魔だと判った途端に生まれたばかりの赤子まで見棄てるような男など、私の父では無い…と。
エアリスだからお父さんはその事をとても後悔していて、最期に謝りたいからって――
魔術師くどいな。私はあの人間に対して何の感情も抱いていないし、興味も無い。
それに母も、ほんの気まぐれで人間と戯れただけだ。非力な人間の分際で謝罪だなどと、おこがましい。
エアリスそれでも……あの人は私たちのお父さんなのよ?私のお母さんが死んでからは、いつもお兄さんやお兄さんのお母さんに会いたいって言ってた。
魔術師要するに、人間の女の方を優先したという訳だろう。誇り高い妖魔が、そんな侮辱に耐えられると思うか?
エアリスやっぱり…お父さんの事、怒ってるんだね。お父さん、償いの為ならどんな事でもするって言ってる。病気で先が長くないから、出来る事は限られてるけど…って。
私も、私に出来る事なら何でもする。
魔術師…お前には関係ないだろう。
エアリス関係はあるわ。だって私たちのお父さんなのに、今までずっと私が独り占めしてたんだもの。
魔術師全く……どう言えば理解するんだ?無力な人間になど興味は無いし、謝罪も償いもおこがましいだけだ。
エアリス確かにおこがましいのかも知れないけど…。でも、私は無力なんかじゃない。
魔術師…面白い。そうまで言うなら、お前の力を見せてみろ。
 
――魔物と戦う。エアリス勝利
 
魔術師(…さすがは古代種だ)
エアリスこれで、お父さんに会いに来てくれるよね?
魔術師私はただ、お前の力を見せてみろと言っただけだ。
エアリスそんな――
魔術師覚えておけ。過分な力を持てば、災いを招く事になる…と。
エアリス待って、お兄さん。お兄さん……!
 
 
【宿屋】
ザックスエアリス…!会いに来てくれたんだ。
エアリスうちでパイを焼いたから、持って来たの。
ザックスサンキュー。あ、こいつはクラウド。俺の仲間だ。
エアリス私はエアリス。クラウドも、ゴンガガの人なの?
クラウド…俺は、ニブルヘイムっていう村の出身だ。
ザックス実は昨夜、知り会ったばっかりなんだ。俺と同じで夜になってからこの国に着いちまって、泊まる所も無くって。
ちなみに、俺の時はエアリスが宿屋の主人に頼んで泊まれるようにしてくれたんだ。
クラウドザックスとエアリスは、元々知り合いだったのか?
ザックスいいや。1週間前の夜、泊まる場所を探してうろついてる時に出会って、助けてもらったんだ。
あの時は本当に助かった。サンキューな。
エアリス困った時はお互い様でしょ?それにあの時は、私も夜道を一人で歩かなくて済んで助かったし。
クラウド(夜に現れるよそ者は妖魔かも知れないのに、エアリスは初対面のザックスに宿を世話した)
(ザックスは、会ったばかりの俺を仲間に……)
(二人とも、どうしてそんなに簡単に人を信用できるんだ……?)
ザックスせっかくエアリスが来てくれたから、3人でお茶にでもするか。
エアリス残念だけど、私はもう、戻らないと…。お父さんの看病があるから。
ザックスそうだったな…。親父さん、まだ良くならないのか?
エアリスお医者さんからは、もう諦めろって言われてる。
ザックスそんな……。
エアリスでも、私は諦めない。どんな時でも、必ず希望はあるって信じてる。
ザックス…そうだな。俺に手伝える事があったら、何でも言ってくれ。
エアリスありがとう。
 
――エアリス退場
 
ザックスエアリスも帰っちゃったし、魔物退治は陽が沈んでからだから、夜にそなえて寝ておくか。
クラウド俺はちょっと出てくる。ここの街を見ておきたいから。
ザックスそうだな。案内しようか?
クラウド大丈夫だ。一人で行ける。
ザックスそうか。じゃ、夕方までにはここに戻って来てくれ。
クラウド判った。
 
 
【街】
村人A毎晩、魔物が現れておちおち外出も出来ない。どうにかならないものか…。
村人B以前はとても賑わっていた街なのに、今では夜になるとゴーストタウンみたいだよ。
村人C国王陛下がご病弱では、魔物退治もままならない……。
村人D英雄の誉れ高い王弟殿下ならば、きっと魔物を退治して下さるに違いないわ。
 
――魔物と戦う。クラウド勝利
 
村人Dお兄ちゃん、強いんだね。見かけない顔だけど、先週、この街に来た賞金稼ぎのお仲間かい?
クラウドザックスの事を言っているなら、一応、仲間だ。
村人Aそれにしても、こんな昼間から魔物が現れるなんて初めてだ…。
クラウド(ニブルヘイムでは、昼に魔物が現れるのは普通なのに……)






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