【山小屋】 |
謎の男 | クラウドの様子は? |
ザックス | ひどく魘されてる…。 |
謎の男 | かなり取り乱していたからな…。当分は、眠ったままだろう。 |
ザックス | あんたさっき、クラウドを眠らせたって言ってたけど、魔法が使えるのか? |
謎の男 | ああ、少し…な。 |
ザックス | 俺にも、魔法を教えてくれないか? |
謎の男 | …どうする積りだ? |
ザックス | 俺は妖魔と戦って、エアリスを助けたいんだ。 |
| その為には少しでも強くなりたいから、魔法も―― |
謎の男 | 止めておけ。生兵法は怪我の元と言うが、生かじりの魔法ほど危険なものはない。 |
| 敵と戦う力になる以上に、自分や味方を傷つけてしまいかねない。 |
ザックス | だったら、剣を教えてくれないか?クラウドが暫く眠ったままだとしたら、その間、俺に出来る事は何もない。 |
| でもそうやって手をこまねいている内にエアリスはどんどん闇に取り込まれているかも知れないんだ。 |
| そう思うと居ても立ってもいられなくて…。少しでも何か役に立ちそうな事でもしていないと、落ち着かない。 |
謎の男 | …剣を教えるのは構わないが、妖魔を倒す役には立たないぞ? |
ザックス | でも正宗を手に入れた時は、魔物を倒してセフィラを手に入れたんだ。 |
| だから、全く無駄って訳でもないだろう? |
謎の男 | それはどうかな…。 |
ザックス | どういう意味だ? |
謎の男 | お前たちがお調子者の魔物と遊んでいる間に、『雪女』に会って話を聞いたんだ。 |
| ひょっとしたらセフィラの事、何か知ってるかも知れないと思ってな。 |
ザックス | それで、何か判ったのか? |
謎の男 | セフィラは魔王が自分自身の一部を封印したものだ。 |
| だから全てのセフィラは、リユニオンしようとする。 |
ザックス | リユニオン…? |
謎の男 | 再び一つになって、元の姿と力を取り戻す事だ。 |
ザックス | それがつまり魔王の復活なんだっていうのは、セフィにも聞いたけど…。 |
謎の男 | セフィラはリユニオンする宿命にある。つまり、それを手にするのに相応しい者の許に集う、という意味だ。 |
ザックス | それじゃ、俺達が手に入れようとしても無駄って事になっちまうのか? |
謎の男 | クラウドが魔術師セフィロスに『均衡の柱』の化身である正宗を渡してしまったのは、それが元々、セフィロスの物だからだろう。 |
ザックス | 確かにあの時クラウドは、『正宗はセフィロスの刀だ』って言ってたけど…。 |
| でもそれは妖魔セフィロスの事であって、魔術師の事じゃないんじゃないのか? |
謎の男 | もっと正確に、その時、何と言っていたんだ? |
ザックス | そんなに正確には覚えてないけど……。 |
| ただ俺が『セフィロスってどのセフィロスの事だよ?』って訊いたら、『セフィロスはセフィロスだ』って…。 |
謎の男 | ……。 |
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【魔術師の館】 |
--王弟、出口に向かう |
魔術師 | どうする積りだ? |
王弟 | …街に戻る。部下たちの様子も気になるし……。 |
魔術師 | 戻ってどうする?捕らえられれば、謀反の冤罪で死刑だぞ? |
王弟 | ……お前の言葉が真実なら、俺が処刑されれば俺の中の妖魔が目覚めるのだったな……。 |
| ならば、処刑される訳には行かない…。 |
魔術師 | …自分が妖魔なのだと、認めたくないようだな。今まで人間として生きてきたのだから、当然と言えば当然だが。 |
| それにお前が妖魔だと露見すれば、お前の名声も地に堕ちるだろう。 |
| お前を崇拝し、敬愛していた騎士たちも民も、手の平を返してお前を恐れ、憎むようになるだろうな。 |
王弟 | ……。 |
魔術師 | 所詮、人間なんてそんなものだ。私は妖魔の血を引いているというだけで、人間たちから恐れられ、忌み嫌われている。 |
| 私を訪ねて来るのは、商売敵を呪い殺してくれだとか、そんな依頼をする者だけだ。 |
| 半分は妖魔である私に、妖魔と戦ってくれなどと要請しに来た物好きは、お前くらいのものだな。 |
王弟 | 半分は妖魔でも、半分は人間なのだろう?それともお前を爪弾きにした人間たちを怨んでいるのか? |
魔術師 | 私の事などどうでも良い。 |
| お前は完璧な妖魔だ。それでも、人間の為に自分の同胞と戦おうと言うのか? |
王弟 | ……俺はこの国と、この国の民を愛している。 |
魔術師 | ならば何故、今まで大臣の専横を見逃していた? |
| 兄に対する遠慮があったにしても、民の為を思うのならばもっと別のやり方があった筈だ。 |
王弟 | ……兄上の代わりに俺が王になるのでも無ければ……。 |
魔術師 | 王になれば良かったのだ。この国と民を愛しているのなら。 |
| だがお前は兄の命令に従って、何年もの間、妖魔と直接、戦う事もしなかった。 |
| 病弱な兄を王の地位に留まらせる為に、民を犠牲にしたのだ。 |
王弟 | ……兄上を補佐するのが俺の役目だ。子供の頃からずっと。 |
| 父上と母上は、いつも兄上の事だけを気にかけていた。 |
| 二人が俺に目を向け、誉めてくれるのは、兄上の為に何かした時だけで……。 |
魔術師 | 不満には思わなかったのか?明らかに、お前のほうが優れているのに。 |
王弟 | だが、王となる者として生まれて来たのは俺ではなく兄上だ。 |
| 兄上も俺も、それが運命なのだと受け入れていた。王家に生まれた者の、義務であり定めであるのだ…と。 |
魔術師 | 運命を受け入れると言うのなら、お前は自分が妖魔であると認めるべきだ。 |
| もう一度、言うが、お前の中に妖魔が巣食っているのでは無い。 |
| お前が、人間の身体に宿っている妖魔なのだ。 |
王弟 | ……。 |
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【神殿】 |
妖魔 | また邪魔が入ったな…。 |
侍医 | 申し訳ございません……。 |
妖魔 | あの半人半妖の魔術師…一体、どういう積りなのだか…。 |
| あの男の手に『均衡の柱』がある以上、迂闊には動けない。 |
侍医 | ご命令とあらば、奪い返して参りますが? |
妖魔 | 半妖とは言え、あれはジェノバの子だ。しかも今は『均衡の柱』がある。
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| お前では、太刀打ちできない。
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侍医 | ですが、あれが王弟の手に渡れば、いっそう、厄介な事になります。
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妖魔 | だから 迂闊には動けないと言ったのだ。それに、あれをあの男に渡したのはクラウドだ。
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| ならば、今はそれがあるべき姿なのだろう。 |
侍医 | …では、次の手を打ちます。 |
妖魔 | また、邪魔が入らなければ良いがな…。 |