【忘らるる都】 |
謎の男 | 先に言っておくが、『雪女』がお前たちに会うかどうかはお前たち次第だ。 |
| 一種の試験を受ける事になるだろうが、俺は手伝わない。 |
ザックス | 『雪女』が俺達を気に入ってくれれば会って頼みごとを聞いてくれるって訳だな。 |
| で、具体的に何をすれば良いんだ? |
謎の男 | さあな。それは『雪女』が決める事だ。 |
| お前たちはまず、ここをまっすぐ行け。 |
ザックス | りょーかい! |
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--魔物と戦う。喋る魔物登場 |
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飛びトド | 待って!殺さないで!! |
ザックス | げっ…こいつ、喋ったぞ。 |
クラウド | 言葉を話すって事は、魔物じゃなくて妖精なのか…? |
飛びトド | おいらは悪い魔物じゃないよ!良い魔物だよ! |
ザックス | …魔物に良いも悪いもあるのかよ…。 |
飛びトド | 悪い魔物は悪さをするけど、良い魔物は悪さをしない! |
ザックス | 判りやすいような、判り難いような……。 |
クラウド | …あまり害は無さそうだな。そいつは放っておいて、先に進もう。 |
飛びトド | ずっと陰から見てたんだけど、お兄さんたち、強いね。それに男前だし。 |
ザックス | 本当の事を言っても、誉めた事にならないぞ? |
クラウド | ……。 |
飛びトド | その強さを見込んで頼みたい事があるんだけど。 |
ザックス | 頼み? |
飛びトド | 最近、ここ一帯を悪い魔物が荒らしてて、おいらたち良い魔物はとても困ってるんだ。 |
| それで『雪女』さんに助けを求めたら、闘技でお互いの縄張りを決めろって。 |
| でも相手は悪い魔物だから、卑怯な手を使うかも知れない。だから強くて男前のお兄さん達に加勢して欲しいんだ。 |
クラウド | …要するに、魔物同士の単なる縄張り争いだな。部外者の俺達が関わるべき事じゃない。 |
飛びトド | そんな…!そこを何とかお願いします。強くて男前のお兄さんたち! |
ザックス | その闘技って、いつどこでやるんだ? |
クラウド | ザックス…。今は急いでいるんじゃなかったのか? |
ザックス | 話を聞くくらい良いだろう?それに、こいつはもしかしたら『雪女』の使い魔かも知れない。 |
ザックス | ここで親切にしておけば、良い事があるかも知れないじゃないか。 |
クラウド | (こいつ…意外と腹黒いかも……) |
ザックス | で、闘技の場所と日時は? |
| 俺たちは先を急いでいるから、今すぐやるって言うんだったら、加勢しても良い。 |
飛びトド | 今すぐ始まるよ。実は皆もう、集まってるんだ。 |
| 闘技場まで案内するから、一緒に来て! |
ザックス | ああ、判った。 |
クラウド | ……。 |
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【魔術師の館】 |
王弟 | ……ここは……? |
魔術師 | 気がついた様だな。 |
王弟 | …確かお前の館だったな…。どうして俺はこんな所にいる…? |
魔術師 | ウータイ人に毒を盛られたんだ。解毒に手間取ったが、もう大丈夫だ。 |
王弟 | お前に助けられた…という訳か。 |
| だが何故だ?妖魔退治に協力してくれる気になったのか? |
魔術師 | お前に話す事があるからだ。妖魔をどうするかは、それから決める。 |
王弟 | …話を聞こう。 |
魔術師 | 29年前、ミッドガル王家はある魔術師を密かに城に呼び寄せた。 |
| 2年前に生まれた王太子がひどく病弱で先が短いと思われたので、王家は新しい世継ぎの誕生を望んでいたのだ。 |
王弟 | …兄上は、母上が父上に嫁いで10年目にやっと授かった子だと聞いているが。 |
魔術師 | そうだ。王家待望の世継ぎだったが生まれつき病弱で、しかも最初の出産で王妃は体調を崩し、次の懐妊は望めないものと絶望視されていた。 |
| ウータイのような国では権力者が側室を持つのは当然だが、この国では信仰によってそれは禁忌とされている。 |
| だから王家は魔術師の力を借りてでも、王妃に健康な男子が生まれる事を望んだのだ。 |
王弟 | この国では魔術の研究が盛んだから、病気治癒や安産祈願の為に白魔術師の力を借りる事は珍しくないが…。 |
魔術師 | その通りだ。だから王太子付きの侍医から魔術師の力を借りる事を進言された時、王は深く悩む事も無くその案を受け入れた。 |
| 翌年、王妃に健やかな男子が誕生し、それでミッドガル王家は安泰かと思われた。 |
| 喜んだ王は魔術師に望むままの褒賞を与えると約束したが、魔術師は生まれた子に、セフィロスと名づける事を求めた。 |
王弟 | ……!俺にセフィロスと名づける事を決めたのは、父上では無かったのか…? |
魔術師 | そうだ。そしてそれは、王の過ちとなったのだ。 |
王弟 | ……確かに兄上は、その事を気に病んでいた……。 |
魔術師 | 魔術師の要求は、それだけに留まらなかった。 |
| 第2王子と同じ頃に生まれた自分の子にも、セフィロスの名を与えろと要求したのだ。 |
王弟 | 自分の子にも?だがミッドガル王家において、セフィロスの名は世継ぎの証だ。 |
魔術師 | そうだ。言い換えれば、自分の子にも王位継承権を与えろという訳だ。 |
王弟 | ……無謀な話だな。一介の魔術師が、王位継承権を望むなど……。 |
魔術師 | 王も同じ事を言って、魔術師の要求を一笑に付した。だがその直後、ミッドガルは疫病に見舞われ、多くの民が死んだ。 |
| 魔術師だと思って王家が呼び寄せた女は、実は妖魔だったのだ。 |
王弟 | 妖魔だと…? |
魔術師 | 妖魔との契約を破った者は必ず闇の報いを受ける。王は止む無く第2王子だけでなく妖魔の子にもセフィロスの名を与え、疫病は収まった。 |
王弟 | ……俺は、妖魔の魔術によって生まれたと言うのか……? |
魔術師 | そうだ。王は恐れ慄いて第2王子を森に棄てさせたが、赤子はすぐに戻って来た。 |
| そして、赤子を棄てに行った兵士の惨殺死体が森で発見された。 |
王弟 | ……。 |
魔術師 | 第2王子は兄とは比較にならないくらい健康で、成長するに従って様々な才能を発揮するようになった。 |
| 何も知らない家臣たちは第2王子が優れている事を喜んでいたが、民の間にまで第2王子の名声が広まるようになると、王と王妃は不安を覚えるようになった。 |
魔術師 | 第1王子は病弱ながらも生き永らえて成長したのに、第2王子の即位を望む声が強まったからだ。 |
王弟 | まさか…兄上が15年前に聞いたという父上と母上の会話は……。 |
魔術師 | 先王と妃は、妖魔の力を借りて誕生し、人並みはずれた能力を持つ第2王子を密かに恐れていた。 |
| 王妃の胎から生まれた子ではあるが、自分たちの子では無く、妖魔の子ではないかと疑っていたのだ。 |
王弟 | だから兄上を護る為に、俺を殺そうとしていたのか……? |
| だが名前が同じせいで、兄上は殺されようとしているのは自分なのだと誤解して……。 |
魔術師 | お前の兄は闇に囚われたのだろう。嫉妬や羨望は、心に闇を生み出す。 |
王弟 | ……俺は…人間なのか……? |
魔術師 | お前は妖魔だ。それも、魔王の再来である最強の妖魔の同胞…。 |
王弟 | ……! |