【宿】 |
謎の男 | 今までの経緯は判った。後は、王弟とエアリスをどうやって助けるか…だな。 |
| 王弟の方はともかく、妖魔相手の戦いは少々、厄介だ。 |
ザックス | セフィが戻って来れば、エアリスを助ける方法が、何か判るかも知れない。 |
謎の男 | 緊急性という点からは、先に王弟をどうにかすべきだろうな。 |
| 市中が大分、騒がしくなっていたから、すぐにでも処刑が行われてしまう可能性が高い。 |
ザックス | そんな事になったら、アイシクル軍が攻めて来るかもな…。 |
クラウド | 新しい王が好戦的な男なんだと言ってたな。 |
ザックス | ああ。即位してからのたった3ヶ月で5回も戦を起こしてる。 |
謎の男 | それはアイシクルの内情不安に便乗して領土割譲を狙った近隣諸国が、アイシクルを攻めたからじゃないのか? |
ザックス | さあな。詳しい事は、俺は知らない。あんた、アイシクルから来たんだったら、あんたの方が詳しいんじゃないのか? |
謎の男 | 少なくとも俺の知る限りでは、アイシクルの新王が自分から他国を攻めた事は無い。 |
| それに貴族たちを追放したのも、彼らが重税を課して領民たちを苦しめていたからだと聞く。 |
クラウド | そう言えば、アイシクルの王は重税と圧政で民から恐れ嫌われているって噂を聞いたことがある。 |
| 内乱が起きて王が変わっていたなんて、知らなかったけど。 |
ザックス | アイシクルは北の外れにあるし、ミッドガルとは国境を接しているけど、国境の森には魔物が巣食っている。 |
| それで人の交流が余り無いから、何が起きているんだか、実際のところはよく判らないな。 |
クラウド | そんな辺境の国なのに、周辺諸国が領土を狙って戦を仕掛けたりするのか? |
謎の男 | 辺境の地とは言っても、金の豊富な鉱脈がある。周辺の国々は、それを狙ったんだろう。 |
| 尤も、その金脈は魔物の巣窟になっているから、採掘は容易では無かったが…な。 |
ザックス | アイシクルの人たちは強制的に金山に鉱夫として狩り出されて、その多くが魔物に喰われて死んじまったって話は聞いた事がある。 |
謎の男 | そうだ。だからアイシクルでは、金山を魔物から護る傭兵が重用されていた。 |
| 今の王が魔物の殆どを退治した事で、金山は以前とは比べ物にならない位、安全な場所になった。 |
ザックス | 傭兵上がりの騎士が王になれたのは、そういう功績があったからなのか…。 |
謎の男 | だが金山が安全になったせいで、今度は諸外国から狙われる羽目になってしまった。 |
クラウド | だからアイシクルの新王は、戦ばかりしているのか…。 |
謎の男 | 今は落ち着いているがな。アイシクルが連戦連勝したので、周辺諸国も諦めたのだろう。 |
ザックス | 残酷で好戦的な奴だと思ってたけど、実は良い王様だったんだな。 |
謎の男 | さあ…。どうかな。 |
| それより、どうやってミッドガルの王弟を救い出すか…だ。 |
ザックス | セフィロス王子が捕らえられている牢の場所なら、もしかしたら判るかも知れない。 |
謎の男 | 城内の見取り図でもあるのか? |
ザックス | 地図があるかどうかは判らないけど、王城に仕えている兵士に、ちょっとした知り合いがいるんだ。 |
| 殆どの兵士は皆セフィロス王子の味方だから、頼めば協力して貰えるかも。 |
クラウド | …この国に来てまだ10日だし、その内の3日くらいは俺と一緒にいたのに、どうやって城仕えの兵士なんかと知り合ったんだ? |
ザックス | 武器屋でだ。俺が目をつけた剣をその子も買おうとしてて、お互い、全く譲る気は無くてさ。 |
| で、勝った方が剣を手に入れるって事で勝負になって。 |
| その後、一緒にお茶とか飲んで話したりして、ちょっと親しくなったんだ。 |
クラウド | …もしかして、その兵士って若い女性か? |
ザックス | そうだ。よく判ったな。 |
クラウド | (こいつ、人懐こいと言うより単にナンパなんじゃ……) |
謎の男 | すぐにその女兵士と連絡を取って、城の見取り図を手に入れよう。 |
ザックス | じゃあ、俺、その子の家まで行って来る。 |
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【王の間】 |
王 | 城門の外に人だかりがしている…。一体、何事だ? |
侍医 | 王弟殿下の即時釈放を求めて、下々の者どもが蜂起したようです。 |
王 | 蜂起だと…?すぐに大臣を呼べ。 |
侍医 | それが…本日はまだ、登城しておられないようです。 |
王 | なんだと…? |
侍医 | 大臣殿だけでなく、主だった貴族たちの姿も見えません。 |
王 | ……どういう事だ……? |
侍医 | …アイシクルでは内乱の後、王と一部の貴族が処刑され、残りの殆どの貴族たちも財産没収の上、国外追放になりました。 |
| このミッドガルでも同じ事が起きるのを恐れて、今の内に国外脱出を図っているのではないかと…。 |
王 | この国を見捨てて逃げる積りなのか…。 |
| 騎士や兵士たちは皆、セフィロスに心酔している。その上、貴族たちまで私を裏切って……。 |
侍医 | 陛下。ご決断なさいませ。 |
| この国の唯一の王は陛下であって、他の何者でもない事を世に知らしめるのです。 |
王 | ……無実の弟を処刑しろと言うのか? |
侍医 | 弟君に罪が無くとも、今となってはあの方は禍根以外の何ものでもありません。 |
| そして、禍根は絶たねばなりません。 |
王 | ……15年前、父上は私が禍根であると言っていた。母上も、私の存在がセフィロスを脅かすようになるのではと心配を……。 |
| 二人の懸念は正しかったのだ。私がいなければ、そしてセフィロスが王になっていれば、この国が内乱の危機に見舞われる事も無かった…。 |
侍医 | ……陛下? |
王 | セフィロスを牢から出せ。 |
侍医 | 陛下、まさか……。 |
王 | 貴族たちに見放され、民に憎まれてまで、王位にしがみついている積りは無い。 |
侍医 | ですが陛下。退位などなされば、弟君の側近たちが陛下を生かしてはおきますまい。 |
王 | …無実の罪で実の弟を投獄してしまったのだ。その罪は、償わねばなるまい。 |
| セフィロスは寛大だからな。私に自害する時間くらいは、与えてくれるだろう…。 |
侍医 | ……それではこちらの計画が狂ってしまう……。 |
王 | …何?今、何と言った? |
| |
--画面暗転 |
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王 | …何事だ…? |
侍医 | 思い出すのです。王となる者であるが故に、あなたがどれほどの忍従を強いられて来たのかを。 |
| 弟君が勝手に城を抜け出し、気ままに遠乗りを楽しんでいた時にも、あなたは古臭い本の山と共に部屋に閉じこめられていた。 |
王 | ……仕方が無かったのだ。私は寝込んでしまう事が多かったから、少しでも体調の良い時には、帝王学を修めなければならなかった…。 |
侍医 | あなたは決して愚昧な方では無いのに、いつも優秀な弟君と比較され、口惜しい思いをしていたのではありませんか? |
| どれほど努力しても健康で才能に溢れた弟君には遥かに及ばず、弟君を妬ましいと思っていたのではありませんか? |
王 | ……妬んでなど……。 |
侍医 | 病弱なのはあなたのせいでは無いのに、病弱であるが故に世継ぎに相応しくない者であるかのように周囲が密かに囁いているのを、腹立たしく思っていたのではありませんか? |
| あなたには世継ぎとしての義務や重圧ばかりがのしかかるのに、期待も評価もされない。対照的に弟君は何の労も無く全てを手に入れ、自由気ままに振舞っていた。 |
| 同じ兄弟なのに不公平だと、そう思っていたのではありませんか? |
王 | ……それでも、私は王になるべくして生まれて来たのだ。 |
侍医 | 仰せの通りです。あなたは王になるべくして生まれて来た。 |
| それなのに、愚かな大衆や身勝手な貴族どもの裏切りなぞのせいで、その王位を棄ててしまうのですか? |
王 | ……この国の王は私だ……。 |
侍医 | では、処刑のご命令を。 |
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【宿】 |
ザックス | 城内の見取り図を貰って来た。それに、一緒にセフィロス王子を助け出す事になった。 |
| 急に城から召集がかかっちまったから一旦、戻るけど、先に行って王子が捕らえられている場所を探るって。 |
謎の男 | 召集がかかったとなると、急がないとまずいな。さっき民衆を煽っている男がいたから、城の周辺で何か起きたんだろう。 |
| 王城の下に下水道があるな。そこから城内に侵入するか。 |
クラウド | 地下から地上までをつなぐのは排水路だけで、とても人が通れるような大きさじゃないだろう? |
謎の男 | 通れるようにすれば良いだけだ。 |
ザックス | どういう意味だ? |
謎の男 | その時になれば判る。 |
ザックス | …時間もないし、行くか。 |
| その前に、あんたの名前は? |
謎の男 | …アノニムだ。 |
ザックス | 俺はザックスだ。そっちは仲間のクラウド。宜しくな。 |
クラウド | (無名…?) |
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【下水道】 |
謎の男 | 見取り図によれば、このあたりがちょうど王城の中心だな。 |
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--ユフィ一行と出会う |
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ザックス | ユフィ。城内の状況はどうなんだ? |
ユフィ | 大臣や主だった貴族たちが逃げちゃったらしくて、何だか凄く暗くて重苦しい雰囲気なんだよね。 |
| 侍女たちは皆、怖がって震え上がってる。 |
謎の男 | まさに内乱直前だな…。 |
クラウド | 騎士たちが王弟の味方なら、誰が敵なんだ? |
ユフィ | 近衛兵。彼らは国王直属で、何があっても陛下に絶対服従なんだ。 |
| でも、あたしたちは同じミッドガルの戦士だから仲間とは戦いたくないし、王弟殿下だって、そんな事は望んでいない筈だよ。 |
謎の男 | 王弟がいなくなれば内乱の理由も無くなる。恐らく、王は処刑を急ぐだろう。 |
ユフィ | でも、侍女から聞いた話じゃ、兄弟仲はとても良いのに。 |
| それなのにどうして国王様は、弟君に謀反の疑いなんて掛けたんだろう…。 |
謎の男 | それより、王弟が捕らえられている場所は判ったのか? |
ユフィ | うん。ここの真上だよ。 |
謎の男 | それは好都合だ。皆、少し下がれ。 |
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--謎の男、道を開ける |
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ザックス | マジかよ…。人が通れるだけの穴を造っちまった……。 |
クラウド | (この男…一体、何者なんだ…?) |
ザックス | ユフィはここで待っててくれ。近衛兵と鉢合わせしたら、厄介な事になるんだろう? |
ユフィ | だけど…。 |
謎の男 | 退路の確保は重要だ。ここで警戒していてくれ。 |
ユフィ | …そういう事だったら。 |
謎の男 | 行くぞ。 |
ザックス | おう! |
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【地下牢】 |
--魔物登場 |
--謎の男、一撃で魔物を倒す |
ザックス | どうして王宮内に魔物なんかが…。 |
謎の男 | どうも妙な気配だな。急いだ方が良いだろう。 |
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--謎の男、牢の錠前を切り落とす |
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王弟 | お前たちは……確か一度、森で会ったな。 |
ザックス | 助けに来ました。俺たちと一緒に逃げて下さい。 |
王弟 | ……それは出来ない。 |
ザックス | 何故…!? |
王弟 | 俺を牢に入れたのは兄上だ。兄上の許しなく、牢を出る事など出来ない。 |
謎の男 | 脱獄が兄に対する裏切りになると考えているなら、それは思い違いだ。 |
王弟 | …お前は? |
謎の男 | 賞金稼ぎだ。今は、そこにいるザックスに雇われて仲間になっている。 |
| とにかく、今すぐここから出なければ、謀反人として処刑されてしまうぞ。 |
王弟 | …それが兄上の意思ならば…。 |
謎の男 | だがお前が死んでしまったら、誰がこの国を護るんだ?病弱な王と、妖魔のせいで弱体化した騎士団では、周辺諸国の侵攻に耐えられまい。 |
王弟 | ……。 |
ザックス | 見回りの兵士が来る前に、早く…! |
王弟 | ……判った。 |
クラウド | (やっぱり……俺はこの男に会った事が……) |
王弟 | …どうかしたか? |
クラウド | ……俺は、あなたに会った事があるような気が……。 |
王弟 | ああ。数日前の夜に、森で会ったな。 |
クラウド | その時じゃなくて、それよりもっと前に……。 |
王弟 | さあ…。覚えは無いが。 |
ザックス | 何、やってんだ、クラウド。急ぐぞ! |
クラウド | ……。 |