【魔術師の館】 |
魔術師 | まさか本当に手に入れるとはな…。 |
ザックス | けど、本当にこんなので俺たちも妖魔と戦えるようになるのか? |
| やたらと長くて重くて、使いこなすどころか持って帰るのがやっとだったぞ? |
魔術師 | それをこちらに渡せ。 |
クラウド | え?あ…ああ。 |
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--魔術師の身体が光る |
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魔術師 | 力が満ちるのを感じる……。 |
| さすがは妖刀正宗だ。 |
ザックス | …正宗はセフィロスにしか扱えないって、クラウドが言ってたけど…。 |
魔術師 | 私もセフィロスだ。 |
ザックス | …! |
クラウド | …! |
妖精 | まさかお前もセフィロスの名を持つ者だったとは……。 |
ザックス | どういう事なんだよ。それを手に入れれば、俺たちでも妖魔と戦えるようになるんじゃ無かったのか? |
魔術師 | 私はただ、力を得る方法を教えてやると言っただけだ。 |
ザックス | 騙したのか…!? |
魔術師 | お前が勝手に私の言葉を自分に都合の良いように解釈しただけだろう。 |
ザックス | てめぇ…! |
妖精 | ザックス、止めろ。言い争ってどうにかなるような相手じゃない。 |
| それより、日没が迫っている。日が暮れる前に、街に戻ろう。 |
ザックス | ……。 |
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【宿】 |
ザックス | 半人半妖の相手を頼ろうとしたのが間違いだったのか…? |
妖精 | それより、あの男の名もセフィロスだったという事実の方が重要だ。 |
クラウド | と言うと? |
妖精 | 呪文のような特別な言葉が特別な力を持つ様に、特別な名前にも特別な意味があるんだ。 |
| ミッドガル王家が代々、世継ぎをセフィロスと名づけるのも、『伝説の英雄』の加護を得る為だ。 |
ザックス | けど、魔王の名前もセフィロスなんだろう? |
妖精 | そうだ。だからその名は、諸刃の剣だとも言われている。 |
| それでミッドガル王家では、セフィロスの名が持つ力の内、闇に関わる部分の影響を排除して、光の力だけを得ようと研究を続けていた。 |
| ガストは、その為の研究者の一人だ。 |
ザックス | そう言えば、エアリスの親父さん、大丈夫かな…。 |
妖精 | …エアリスの家に行こう。 |
ザックス | そうだな。意識があるかどうか判らないけど、エアリスが帰って来なけりゃ、心配するだろうし。 |
妖精 | ガストなんかどうでも良いが、ガストの研究書は役に立つかも知れない。 |
ザックス | 薄情だな…。 |
妖精 | ガストなんかと知り合わなければ、イファルナはあんな死に方をしないで済んだんだ。 |
クラウド | あんな死に方? |
妖精 | ガストは研究の為に、多くの魔術師から魔術に関わる情報を集めていた。 |
| ジェノバやイファルナと出会ったのも、そうやって魔術師を訪ね歩いていた頃だ。 |
ザックス | ジェノバって? |
妖精 | エアリスの異母兄の母親だ。 |
| ガストは最初、ジェノバを魔術師だと思い込んでいたが、実際は妖魔だったんだ。 |
ザックス | 騙された…って訳か。 |
妖精 | いや、ガストが勝手に誤解したんだ。 |
| その頃のガストはまだ若くて駆け出しの研究者で、どうにかして知識を得ようと必死だった。 |
| だが殆どの魔術師は自分の力を秘密にしているから、話を聞ける相手なんて滅多にいない。 |
| だからガストはジェノバの素性をろくに確かめもせず、話を聞かせてやるという誘いに食いついたんだ。 |
ザックス | それにしたって、自分が妖魔なのに人間のフリをしていたんなら、騙したって事じゃないのか? |
妖精 | ガストはエアリスに、自分が功を焦って勝手にジェノバの言葉を誤解したのであって、騙されたのでは無い、と、言っていたらしい。 |
クラウド | エアリスに、そんな話を? |
妖精 | イファルナはエアリスがまだ小さかった頃に死んだが、イファルナが死んでからは、ガストはジェノバに詫びる為に会おうとして、度々、家を空けていたらしい。 |
クラウド | …なんだか、身勝手じゃないか?エアリスの気持ちを考えたら…。 |
ザックス | だけど、『ガストが病気になったのはジェノバとの約束を破ったからだ』って…。 |
| だから親父さんがジェノバに会いに行こうとしたのは、約束を果たす為だったんじゃないのか? |
クラウド | そんな話、誰に聞いたんだ? |
ザックス | お前だよ。覚えてないだろうけど。 |
クラウド | 俺がそんな事、言う筈が……。 |
ザックス | この前もそうだったけど、お前、北の大空洞に行くと様子が変になるぞ? |
| 急に倒れたり、訳の判らない事を言い出したり。 |
クラウド | ……。 |
妖精 | それがジェノバ自身の意思なのか、他に理由があったのかは判らないが、ジェノバはガストと会わなかった。 |
ザックス | だから約束が果たされなかったのか…。 |
妖精 | 多分、違うな。契約が破られたのは、ジェノバが死んだからだろう。 |
ザックス | 死んだから…? |
妖精 | ガストが倒れたのは5年前だ。そしてその頃に、ジェノバも死んだらしい。 |
ザックス | ジェノバが死んじまったのに、どうしてエアリスの親父さんが病気になるんだ? |
妖精 | ジェノバがガストを呪ったんじゃない。妖魔との契約を破った者は、必ず闇の報いを受けるんだ。 |
| おそらく、その約束には『いつ』という期限が無かったんだろう。だから二人とも生きていれば、契約が果たされる可能性はあった。 |
| ジェノバの死が、契約の不履行を決定的にしたんだ。 |
ザックス | …確かに約束を破ったのは良くないけど、そのせいで5年も病気で苦しまなきゃならないなんて…。 |
クラウド | (5年……か) |
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【王の間】 |
侍医 | 処刑の日取りはお決めになりましたか? |
王 | ……私はどうかしていた。セフィロスが、謀反など企てる筈が無いのに……。 |
侍医 | ですが、賽は投げられたのです。もう、後戻りは出来ません。 |
| 王弟殿下謀反の噂に、市中の者どももざわめきたっております。 |
王 | 噂だと…?セフィロスを牢に入れた事など、宮中の機密の筈だ。 |
侍医 | 殿下を拘束した折に殿下の側近たちも捕らえましたが、騎士や傭兵の全員を牢に入れる訳には参りません。 |
| 騎士たちの中には殿下に心酔している者が多いですから、その者たちが、市中で騒いでいるのでしょう。 |
王 | ……このまま騒ぎが大きくなれば、最悪、内乱が……。 |
侍医 | 内乱を防ぐ為にも、一刻も早く刑を執行すべきです。 |
王 | 謀反の疑いは根拠の無いものだった。処刑など、出来る筈が無いだろう? |
侍医 | 王がひとたび決定した事を軽々しく覆したのでは示しがつきません。 |
| 何より、王弟殿下を擁立する一派が、国王陛下の責任を追及するでしょう。 |
王 | …無実の罪でセフィロスを処刑するくらいなら、私が退位してセフィロスに王位を譲る方がマシだ。 |
侍医 | ですが王位を離れれば、陛下は無事では済みますまい。 |
| 隣国アイシクルで、王位を追われた先王が磔にされた挙句、投石によって無残な最期を遂げた事は、陛下もご存知でしょう? |
王 | アイシクルの先王がそんな最期を迎えたのは、圧政によって民を苦しめていたからではないのか? |
侍医 | 下々の者は愚かですからな。弟君を心酔する者どもが煽れば、陛下を悪鬼の如く憎むやも知れません。 |
| 何しろ弟君は英雄の誉れ高く、庶民も敬愛しておりますし。 |
王 | だが……セフィロスが私を処刑しようとするなど……。 |
侍医 | 確かに弟君は兄君想いで高潔な方ですから、無実の罪で牢に繋がれたからと言って、報復などはなさいますまい。 |
| ですが15年前の事を知られた今となっては、話は別です。 |
王 | あれはお前が勝手にした事ではないか。私はただ、暗殺される事を恐れて……。 |
| 嫌……お前に罪をなすりつける積りは無い。あの時、お前が何もしなければ、殺されていたのは私の方だ…。 |
侍医 | 陛下。賽は投げられたのです。 |
| ご決断を。 |
王 | ……。 |