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【森】 |
兵士 | (何の罪も無い赤子を……) |
| (どんな事情があるかは知らないが、酷い話だ……) |
――閃光 |
兵士 | な…何事だ!? |
――黒い羽根が舞い落ちる |
兵士 | うわあああああああっ…!! |
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【王の間】 |
王弟 | 兄上。今日は起きていて大丈夫なのか? |
王 | ああ…。最近は少し、体調が良い。 |
王弟 | それは良かった。 |
王 | 『良かった』と言う割には、浮かない顔だな。 |
王弟 | …例の妖魔。昨夜も討伐隊が返り討ちにあって、全滅した。 |
王 | 全滅…?だが昨夜は妖魔の魔法に対抗する為、 |
| 腕利きの魔術師を伴わせた筈では無かったのか? |
王弟 | ああ。わざわざ遠国から呼び寄せた高名な魔術師だったが……。 |
| 妖魔の力の方が勝っていたようだ。 |
| このままでは埒が明かない。やはり俺が―― |
王 | 駄目だ。お前が行く事は許さない。高名な魔術師ですら歯の立たなかった相手だ。 |
| お前が行くなど、危険すぎる。 |
王弟 | だが兄上。妖魔はもう何年もこの国を荒らし、人々を苦しめている。 |
| 最近では都にまで現れる始末だ。このまま放っておく事など出来ない。 |
| 何より俺は騎士総督だ。配下の騎士達が多数犠牲になっているのに、俺だけが安全な場所でのうのうとしている訳には行かない。 |
王 | どうしてもと言い張るなら、お前の騎士総督としての任を解くまでだ。 |
王弟 | 兄上……。 |
王 | セフィロス。お前の部下を想う気持ちは判るし、 |
| 最強の騎士の誉れ高いお前の実力を過小評価する積りも無い。 |
| だが民の為を想うのなら、お前は自分の身の安全を優先すべきだ。 |
| 私はこの通りの病身で、世継ぎもいない。私の身に何かあれば、お前が王位を継がねばならないのだから。 |
王弟 | …民あってこその王では無いのか?己の身の安全を優先して、 |
| 民を護る事も出来ない王など……。 |
王 | 王族には王族にしか果たせぬ務めがある。妖魔との戦いは、他の者に任せるのだな。 |
王弟 | ……。 |
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【森】<夜> |
クラウド | (すっかり暗くなってしまった。夕方までには街に着く積りだったのに…) |
――魔物出現。戦いが不利になった時、ザックス登場 |
ザックス | 大丈夫か? |
クラウド | ああ…。助かった。 |
ザックス | お前、こんな時間にこんな場所で何をやってるんだ? |
| 夜、森なんかうろついたら魔物が出るって、知らないのか? |
クラウド | 俺は怪しい者じゃない。ウータイからこの国に着いたばかりで…。 |
| 予定では陽が沈む前に宿を探す積りだった。 |
ザックス | ウータイから?でも、ウータイ人には見えないな。 |
クラウド | ああ。故郷は別だ。ある男を捜して、ずっと旅を続けているんだ。 |
ザックス | ウータイから来たばかりじゃ知らないだろうが、 |
| こんな時間に行っても、泊めてくれる宿なんか無いぞ? |
クラウド | …え? |
ザックス | 数年前からこの国には妖魔が出没するようになって、 |
| みんな妖魔を恐れて陽が沈むとすぐに戸締りしちまう。 |
| 夜になってから外を出歩くのは、警備の騎士団か夜盗くらいのもんだ。 |
クラウド | …じゃあ、お前は……? |
ザックス | 俺はその妖魔退治の賞金目当てで来た賞金稼ぎだ。 |
| 実は俺も、この国には1週間前に着いたばかりなんだ。 |
| 俺もお前と同じで夜になってからここに着いちまって、どこの宿屋からも門前払いを食らっちまってさ。 |
クラウド | それは大変だったな…。でも、どうして泊めてくれないんだ? |
ザックス | 夜になってから現れるよそ者は、妖魔かも知れないからだ。 |
クラウド | 妖魔って、さっきの魔物みたいな連中じゃないのか?人間に化けたりもするのか? |
ザックス | 妖魔と魔物は全然違う。魔物は獣のような姿をしていて知能も動物並みだけど、 |
| 妖魔は人間に近い姿で、人間と同等か、それ以上の知能の持ち主だ。 |
| それに強力な魔法も使いこなせて、魔物たちを使い魔として使役するらしい。 |
クラウド | もしかしたら……俺の探している男は、妖魔なのかも知れない……。 |
ザックス | どういう事だ? |
クラウド | …俺の故郷は、ニブルヘイムという名の小さな村だ。 |
| 5年前、突然ある男が現れて、大勢の人々を殺し、村に火を放った…。 |
ザックス | つまり、お前は敵討ちをしようとしてるって訳か。 |
ザックス | よし、気に入った。俺の仲間にならないか? |
クラウド | 仲間…? |
ザックス | さっきも言った通り、俺は妖魔退治の賞金稼ぎなんだ。 |
| お前は中々、腕も立つようだし、俺もちょうど仲間を探してたところだし。 |
クラウド | だけど、俺は……。 |
ザックス | 取りあえず、俺の泊まってる宿に行って話さないか? |
| どうせ今夜は泊まる所も無いんだろう? |
| 俺の仲間になるかどうかは、俺の話を聞いてから決めれば良い。 |
クラウド | ……わかった。 |
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【王の間】 |
侍医 | 陛下。お薬の時間です。 |
王 | …そうか。 |
侍医 | 本日も王弟殿下はお見舞いにいらしたのですか? |
王 | ああ。遠征で国を離れている時以外は、毎日必ず見舞ってくれる。 |
侍医 | ご兄弟仲が宜しいのは、結構な事ですが…。 |
王 | …どうした。また、市中に良からぬ噂でも出回っているのか? |
侍医 | 下らぬ噂です。陛下のお耳に入れる価値はございません。 |
王 | 構わぬ。申せ。 |
侍医 | …数年前より国内に現れるようになった妖魔と、その使い魔の魔物ども。 |
| あれは王弟殿下を擁立する一派が黒魔術を使って呼び寄せたものだと……。 |
王 | それこそ下らない噂だ。 |
| セフィロスは自ら妖魔退治に赴こうとして、私が止めているというのに。 |
侍医 | ですが、もしも噂が真実ならば、どうなります? |
王 | …何? |
侍医 | 妖魔はかなり手強いと聞いておりますが、それを倒したとなれば、 |
| それを倒したとなれば、弟君の名声は一層、高まりましょう。 |
| そしてもしも噂どおり妖魔を呼び寄せたのが弟君の配下の者ならば、妖魔を退散させる方法も知っている筈……。 |
王 | ……そんな事をして、何の意味がある…? |
侍医 | 無知な民どもの中には、ご病弱な陛下よりも王弟殿下を王にと望む者もいるとか。 |
| 何年も人々を恐怖の底に突き落としてきた妖魔を王弟殿下が退治したとなれば、殿下のご即位を望む声も、一層高まる事かと。 |
王 | つまり……私を退位させるという意味か? |
侍医 | お気になさいますな。全ては、ただの噂に過ぎません。 |
| 英雄の誉れ高い弟君が、陛下の失脚を望む筈などありますまい。 |
王 | ……。 |
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大臣 | 陛下の様子はどうだ? |
侍医 | 大臣殿。焦る必要は無い。効果は現れている。 |
| 今しばらくは、成り行きを見守れば良い。 |
大臣 | ……ならば良いが。 |
| 王弟殿下はあの事に勘付いている様だ。どうにか手を打たねば……。 |