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【廃墟】 |
| 少年 | 俺はやっぱり戻る。母さんの様子が気になるし…。 |
ザックス | …お袋さん、病気だもんな。 |
少年 | 母さんの病気の事は、誰にも言わない約束だ。 |
ザックス | ごめん、つい……。 |
少年 | 俺は戻る。 |
ザックス | あ、セフィ…! |
クラウド | …どうしよう。アンジールさんたち、まだ地下にいるかも…。 |
ザックス | そうは言っても、無理に引き止める訳には―― |
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--女の笑い声 |
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ザックス | ……え? |
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--若い女の姿 |
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ザックス | エアリス…!? |
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【地下入り口】 |
| アンジール | 誰もいない…? |
ジェネシス | だが、確かに一階のこのあたりから聞こえたぞ。 |
| どこかの部屋に連れ込まれたのかも知れない。探してみよう。 |
アンジール | 待て、ジェネシス。外は吹雪だぞ? |
ジェネシス | だから何だ? |
アンジール | さっきの悲鳴の主が、外から来たとは思えない。 |
ジェネシス | …つまり、元々この建物にいた人間という事か。 |
| だったら、地下に潜んでいる連中の一味という事になる。仲間割れでもしたか…? |
アンジール | それならば、悲鳴は地下から聞こえる筈じゃないか? |
ジェネシス | じゃあ、今の悲鳴は…。俺達の注意を惹いて、地下から遠ざける為の幻惑か…? |
アンジール | …そうかも知れないし、そうでは無いかも知れない…。 |
ジェネシス | 何を曖昧な事を言っているんだ?お前らしくも無い。 |
アンジール | ……今は一旦、戻ろう。ザックスたちの様子が気になる…。 |
ジェネシス | 地下を調べないのか? |
アンジール | どうも厭な予感がするんだ…。とにかく、今は戻ろう。 |
ジェネシス | ……判った。 |
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【神羅ビル】 |
| セフィロス | 山岳地帯での作戦行動に熟練している者をピックアップしてくれ。 |
兵士 | はっ! |
宝条 | …セフィロス。何をしているんだね? |
セフィロス | ムスペルヘイムに向かう準備だ。 |
宝条 | お前自身が行く事は、禁じた筈だが…? |
セフィロス | 俺に指図するな。 |
宝条 | お前の為を思って言っているのが判らないのか? |
| お前が友人だと思い込んでいる相手は、お前の名声を利用しているだけだぞ? |
セフィロス | …そういう目的で俺に近づこうとする人間が多い事は判っている。 |
| だが、アンジールとジェネシスは違う。彼らは俺の個人的な事を詮索しないし、 |
| 神羅しか知らなかった俺に、外の世界を教えてくれた。 |
宝条 | お前は何も判ってなどおらんよ。あの2人もソルジャーである事に変わりは無い。 |
| 所詮、神羅の犬だ。 |
セフィロス | …俺はあいつらを信じる。それだけだ。 |
宝条 | フン…。裏切られた時にお前がどんな反応を示すのか、見ものだな。 |
セフィロス | ……。 |
宝条 | (セフィロスめ、ホランダーの失敗作どもと知り合ってから、ますます反抗的になってきたな) |
| (あれもリユニオンの一つの形態かと、黙認していたのがまずかった) |
| (20年前の実験さえ成功していれば……) |
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【廃墟3】 |
| クラウド | ザックス…!どこに行くんだ? |
ザックス | エアリスが……。 |
クラウド | エアリス…? |
ザックス | ずっと連絡が取れなかったから、きっと俺のこと、心配して来たんだ。 |
クラウド | まさか…。こんな山奥に、一般人が来れる訳ないだろう? |
| それに、外はずっと吹雪が続いているんだぞ? |
ザックス | 吹雪……。 |
クラウド | ザックス、しっかりしてくれよ。幻覚でも見たのか? |
ザックス | お前は何も見なかったのか?それに声だって―― |
| エアリスの声…じゃ、なかった……。 |
クラウド | 俺は何も見ていないし、聞いてもいない。 |
ザックス | だけど俺、さっき確かに女の子の姿を……。 |
クラウド | アンジールさんたちも、女の子の泣き声を聞いたって言ってたけど…。 |
ザックス | 5歳くらいのって言ってただろ?俺が今、見たのは、15歳くらいだった。 |
クラウド | …ザックスはここにもう1週間以上、閉じ込められているから、そのせいで幻覚を見たのかも…。 |
ザックス | だったらアンジールたちが聞いた呻き声や泣き声って何なんだ? |
| アンジールたちはまだ来たばっかりだぞ? |
クラウド | (でも、俺は何も聞いていない……) |
| だったら、後であの子――セフィに聞いてみよう。何か知ってるかも知れない。 |
ザックス | ああ…。そうだな……。 |
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【地下】 |
| 母 | 仲間たちが騒いでいるわ…。 |
少年 | 俺が鎮めて来る。姿を見られたりしたら厄介だ。 |
母 | そうね…。あのソルジャーたちに、脅かされなければ良いけど。 |
少年 | 大丈夫。何かあったら、俺が護る。 |
母 | でも、ソルジャーたちは手強いわ。特に、後から来た赤毛と黒髪の2人…。 |
| 何かとても強いものを持っている…。 |
少年 | …俺に考えがある。だから、任せて。 |
母 | ……わかったわ、セフィロス。 |
| でも無理はしないでね。あなたの身にもしもの事があったら、私は……。 |
少年 | 大丈夫。心配しないで。 |
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【廃墟2】 |
| ザックス | アンジール。地下はどうだったんだ? |
アンジール | それが…下まで辿り着けなかった。 |
ザックス | 辿り着けなかった? |
アンジール | ああ…。途中まで階段を降りた時に、上の階で女性の悲鳴がして、 |
| すぐに1階まで戻ったんだが、誰もいなかった…。 |
ザックス | 俺…女の子の姿を見たんだけど…。 |
アンジール | 女の子?子供か? |
ザックス | 14,5歳の、若い女の子。それに、笑い声も聞いたような気が……。 |
ジェネシス | 俺たちは悲鳴、お前たちは笑い声を聞いたのか。 |
| 場所が離れていたからな。少なくとも2人は若い女がいるという事か…。 |
アンジール | 幻覚で無ければ…な。 |
ジェネシス | 明らかに何かがいるのに、その気配を全く感じないのは、 |
| 俺たち全員が幻惑魔法の類に惑わされているからなのか…? |
クラウド | あの……笑い声を聞いたり女の子の姿を見たのはザックスだけで、 |
| 俺は何も見ていないし、聞いてもいないんです…。 |
ジェネシス | そんな筈は無い。俺たちソルジャーの方が、魔法への耐性は強い筈だ。 |
| 俺たちが幻惑されているのに、一般兵のお前が平気な訳が無い。 |
アンジール | 魔法ならば…な。これは…魔法の類では無いかも知れん…。 |
ジェネシス | どういう意味だ? |
アンジール | コンフュのような魔法をかけられている時には、もっと独特の感覚がある筈だ。 |
ジェネシス | 全く未知の魔法かも知れないだろう。 |
アンジール | その可能性も無いとは言わないが…。 |
| 地下に降りて行った時のあの淀んだ空気。それに、地の底から湧き出たような呻き声や、得体の知れない悲鳴……。 |
| どうも俺達が相手にしているのは、テロリストやモンスターじゃない気がする。 |
ジェネシス | つまり何だと言うんだ?奥歯に物が挟まったような言い方は止めろ。 |
アンジール | お前は笑うだろうが…この廃墟には、この世の者ではない何かが潜んでいるんじゃないかと……。 |
ザックス | じゃあ、さっき俺が見たのってお化け…!? |
ジェネシス | 何を非科学的な事を言っているんだ、下らない。お前たち、それでもソルジャーか? |
| 霊魂の存在を語った書物は文学としては面白いが、それだけだ。 |
ザックス | でも…うちの実家の近所の子が川で溺死した時、家にいたお袋さんが、その子の悲鳴を聞いたって。川とその子の家は、かなり離れてるのに……。 |
クラウド | 俺も…ミッドガルに出稼ぎに行っていて事故死した人が、最後に家族に会いに来たって話を聞いた事が……。 |
ジェネシス | いい加減にしろ。俺達の当面の敵はモンスターだ。 |
| その上、ここの地下にはテロリストが潜んでいる可能性もある。 |
| 怖気づいて逃げ出す訳には行かないんだぞ? |
アンジール | そんな事は判っている。俺はただ、あらゆる可能性を検討したいだけだ。 |
ジェネシス | それで?もしも敵が死霊なら、どうやって戦う積りだ? |
| 元々死んでいるんだから、剣も魔法も通用しないだろうな。 |
アンジール | それは……。 |
ジェネシス | 下らない事を言っていないで、やはり地下を捜索すべきだ。 |
| 確かにこの廃墟には不審な点が多い。だからこそ敵の正体を―― |
アンジール | 待て。窓の外…何か見えないか? |
ジェネシス | ……何? |
| ジェネシス | いや…俺には吹雪しか見えないが…。 |
アンジール | ……そうか、俺も見失った…。 |
ジェネシス | 見間違いか?いや……誰かこっちに来るぞ…! |
| あのコート…。まさかあれは……! |