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【研究所】 |
| --セフィロスが俯いている |
宝条 | どうした、セフィロス。浮かない顔だな。 |
セフィロス | アンジールたちが、ムスペルヘイムに任務に行ったまま、消息を絶ったそうだ…。 |
宝条 | ムスペルヘイムか…。あそこはお前の初陣の地だったな。 |
| 覚えているかね? |
セフィロス | 当然だ。俺はずっとこの研究所に閉じ込められていて、 |
| あの時、生まれて初めて外に出たんだからな。 |
宝条 | (正確には、ずっとミッドガルにいた訳ではないが…) |
セフィロス | 明日、俺もムスペルヘイムに行く。 |
宝条 | 何を言い出すんだね? |
セフィロス | ムスペルヘイムでは既に先遣隊が消息不明になっている。その上、アンジール達まで…。 |
| 単なる通信機器の故障では無いだろう。だから、俺が行く。 |
宝条 | 駄目だ。 |
セフィロス | 何…? |
宝条 | 確かに1stのソルジャー2人が揃っていながら消息不明とは、異常事態だ。 |
| そんな危険な場所に、お前を行かせる訳には行かないね。 |
セフィロス | 何を言っている…?俺はソルジャーだぞ。 |
宝条 | ただのソルジャーではない。『神羅の英雄』だ。 |
| 戦略的に重要な拠点の攻略か、凶悪な反神羅勢力の壊滅か。 |
| いずれにしろ、人々の耳目を集める華やかな任務こそがお前に相応しい。 |
セフィロス | 下らん…。 |
宝条 | ムスペルヘイムは、お前の初陣の頃には重要な場所だったが、今は魔晄も枯渇して利用価値が無い。 |
| そんなつまらない場所での任務で、お前を危険に晒す訳には行かんよ。 |
セフィロス | だがあそこには村があって、人が暮らしているんだぞ? |
| 無人の場所だったとしても、友人達が消息を絶ったのに、放っておく訳には―― |
宝条 | 友人…かね。 |
セフィロス | ああ。その通りだ。 |
宝条 | お前は世間知らずだから判らないだろうが、何度か任務に同行し、何度か一緒に食事をした程度の相手を、友人とは呼ばんのだよ。 |
| 無論、彼らはお前の友人だと主張するだろう。英雄の友人である事は、名誉だからな。 |
セフィロス | ……名誉? |
宝条 | 要するに、自己顕示欲を満たすのに都合が良い、という意味だ。 |
| お前は彼らの自己顕示欲を満たす為に、利用されているだけだ。 |
セフィロス | そんな事は―― |
宝条 | 無いと思うのは、お前が何も知らないからだ。 |
| 人間と言う生き物は、お前のような世間知らずが思っているより、ずっと醜い存在なのだよ。 |
セフィロス | ……。 |
宝条 | (ホランダーの創った出来損ないの為に、私のセフィロスを危険に晒す事など出来ない) |
| (セフィロスは、私が創り出した最高傑作なのだから……) |
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【廃墟2】 |
| ザックス | アンジール、ハインツを見なかった? |
アンジール | ハインツ?ああ…俺たちと一緒に来た一般兵か。いないのか? |
ザックス | ああ…。今朝起きたら、姿がなくて……。 |
アンジール | まさか…。脚を骨折しているのに、一人で遠くに行ける筈が無いだろう? |
| 俺たちと別れた後、お前たち3人、ずっと一緒だったんじゃないのか? |
ザックス | ハインツが傷が痛むって言うから、薬か何か無いかセフィに聞きに行って…。 |
| そしたら、手当てをしてやるから、地下まで来いって。 |
アンジール | まさか、1人で地下に行かせたのか? |
ザックス | 1人でないと駄目だって、セフィが言ったから…。 |
| でも、その後すぐにハインツはちゃんと帰って来たんだぜ?痛みが大分引いたって言ってたし。 |
アンジール | では…いなくなったのは、お前たちが眠った後か。 |
ザックス | ああ。そうなる。 |
アンジール | 妙だな…。どうして夜中に、1人で出歩いたりしたんだ…? |
| 地下に何があったか、何か言ってなかったか? |
ザックス | 特に何も無かったって。セフィのお袋さんは、奥の部屋にいるらしい。 |
ジェネシス | 昨夜の呻き声とその兵士の失踪と、何か関連があるのか…? |
ザックス | 呻き声? |
アンジール | ああ。人とも獣ともつかない奇妙な声だった。 |
| すぐに廊下に出て確認したが、何もいなかった。 |
ジェネシス | お前たちは何か聞かなかったのか? |
クラウド | 俺は…何も聞いていません。 |
ザックス | 昨夜は何も聞かなかったけど、その前には何度か、夜中に人の話し声みたいなのが聞こえた気がする。 |
| 他のソルジャーも、同じような事を言ってた。 |
アンジール | 吹雪の音がそんな風に聞こえただけかも知れないが…。 |
ジェネシス | いや、あれは確かに廊下側から聞こえた。 |
ザックス | ハインツ…また地下に行ったのかな。俺、セフィを探して聞いてみる。 |
ジェネシス | 待て。俺も一緒に行く。 |
ザックス | アンタが…でありますか? |
ジェネシス | 何だその厭そうな顔は。不服か? |
ザックス | (不服に決まってんじゃん…)あ、セフィ。 |
少年 | 食事を持ってきた。 |
ザックス | サンキュー。いつも悪いな。 |
アンジール | (缶詰…?) |
ザックス | なあ、ハインツの奴が見当たらないんだけど、地下に行ってないか? |
少年 | いいや。来たのは昨日、1度きりだ。 |
アンジール | 地下には、君とお袋さんだけで住んでいるのか? |
少年 | …そうだ。 |
アンジール | こんな場所で、不便じゃないのか?それに最近、この辺りにモンスターが出没するらしいし。 |
少年 | モンスターより、人間の方がよっぽどたちが悪い…。 |
アンジール | …何? |
少年 | 人間に取ってモンスターが異形なら、モンスターに取っての人間も異形だ。 |
| それなのに、自分たちとは異質な存在を化け物呼ばわりして殲滅しようとする人間は傲慢だ。 |
ジェネシス | 誰にそんな思想を吹き込まれた?母親か? |
少年 | ……。 |
アンジール | …君の言う事にも一理あるとは思うが、 |
| 人がモンスターに襲われるのを放っておく訳にも行かないんだ。 |
少年 | ここは元々、ドラゴンの棲息地だった。人間が近づくべき場所じゃない。 |
ジェネシス | だったら、お前たち親子は、どうしてこんな所に住んでいる? |
少年 | 答える義務は無い。 |
ジェネシス | ……! |
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| ジェネシス | 可愛気の無いガキだな。せいぜい10歳くらいだろうに、何て口の利き方だ。 |
アンジール | まあ…かなり賢いのは確かだろう。 |
| それよりザックス。ここに来てから、ずっとあの少年に食料を貰っていたのか? |
ザックス | 最初は持ってきた携行食を食べてたけど、それが底を尽いてからはセフィに頼んで食べ物を分けてもらってる。 |
アンジール | いつも缶詰なのか? |
ザックス | ああ。いつも缶詰ばっかし。まあ、こっちは贅沢言える立場じゃないけど。 |
クラウド | こんな山奥じゃ、新鮮な食料が手に入らないのは仕方ないかも知れないけど。 |
| あの子、成長期だろうに…。 |
ザックス | …自分たちはちゃんとした物を食べて俺に保存食を分けてくれてるんだと思ってたけど、 |
| 確かにこんな山奥でしかも吹雪き続きじゃ、缶詰くらいしか無いかもな…。 |
アンジール | それにしても、ずいぶん古い缶詰だな。とっくに賞味期限、切れてるぞ。 |
ザックス | マジ!?俺、見ないで食ってた…。 |
アンジール | 特に変質していなければ、毒にはならんだろうが…。 |
| 俺たちが持ってきた携行食がある。暫くはそっちを食うんだな。 |
ジェネシス | …アンジール。話がある。 |
アンジール | ああ…判った。 |
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【廃墟】 |
| ジェネシス | 骨折した兵士が1人で出歩くなんて不自然だ。 |
アンジール | 俺もそう思うが…。 |
ジェネシス | ザックスはここの連中と結託しているようだし、クラウドとかいう一般兵はザックスの友人らしいな。 |
アンジール | 何が言いたい? |
ジェネシス | ザックスとクラウドで共謀すれば、負傷した兵士1人を始末するなど容易かったろうな。 |
アンジール | ザックスはそんな奴じゃない。 |
ジェネシス | だったらお前は、脚を折った兵士が1人で吹雪の中、外に出たとでも言うのか? |
| 地下に何かが隠されているのは疑いないのに、何も無かったと言ったのも不自然だ。 |
| それに、吹雪が1週間以上もずっと続いていたなんて、とても信じられん。 |
アンジール | …俺たちは突然、閃光を見て、突然吹雪になり、突然、ヘリが操縦不能に陥った。 |
| ザックスの言動より、その状況の方がずっと不審だとは思わないか? |
ジェネシス | …だから? |
アンジール | この近辺にはモンスターが出没するんだ。 |
| そいつらが、何らかの魔法を使っているのかも知れない。 |
ジェネシス | 行方不明になった兵士たちは、モンスターに喰われた…と? |
アンジール | ああ…。昨夜、俺たちが聞いた呻き声。モンスターの声だったのかも知れない。 |
ジェネシス | だが声を聞いてすぐ廊下に出たのに、姿どころか気配も無かったぞ? |
| 兵士がモンスターに喰われたなら、悲鳴くらいは聞いている筈だ。 |
アンジール | …不審な点だらけだな…。 |
ジェネシス | やはり地下を捜索すべきだ。お前が行かないなら俺一人ででも行く。 |
アンジール | …判った。俺も行く。 |
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【地下入り口】 |
アンジール | ここが地下への入り口か…。 |
ジェネシス | 行くぞ。 |
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子供の泣き声。 |
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アンジール | …!今の声は…? |
ジェネシス | 地下から聞こえたぞ。 |
少年 | お前たち、そこで何をしている? |
ジェネシス | ……! |
アンジール | 今…地下から子供の泣き声が……。 |
少年 | 地下には、俺の母しかいない。 |
| それに、地下には絶対に近づかないと約束した筈だ。 |
アンジール | それは判っているが……俺達の仲間が一人、昨夜から行方不明なんだ。 |
| 先に来ていた連中も含めれば、もう4人がいなくなっている。 |
少年 | 外にでも行ったんだろう。 |
ジェネシス | まさか。外は吹雪だぞ? |
少年 | それでも地下には来ていない。 |
ジェネシス | だったら地下を改めさせてもらう。 |
少年 | 断る。プライバシーの侵害だ。 |
ジェネシス | プライバシーだと?こんな廃墟で―― |
アンジール | ジェネシス、止めろ。彼はここの住人で、俺たちは一時的に厄介になってる身だぞ? |
ジェネシス | …だが…。 |
アンジール | とにかく、今は戻ろう。 |
ジェネシス | ……判った…。 |