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【地下牢】 |
| 騎士団長 | どうやら充分に反省したようだな。 |
ザックス | …はい、騎士団長。 |
騎士団長 | 侯爵は慈悲深いお方だ。お前に、もう一度、チャンスを下さるそうだ。 |
ザックス | 俺を…赦してくれる…と? |
騎士団長 | 侯爵の為に尽くし、忠誠を示せ。 |
ザックス | どうすれば良いんですか? |
騎士団長 | これから言う事を、よく聞け…。 |
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【村】 |
| アンジール | エアリスは教会に帰そう。儀式までまだ日があるし、 |
| 野宿を続けさせるのもかわいそうだ。 |
| だがお前は残った方が良いだろう。下手に戻ると、身動きが取れなくなる。 |
クラウド | ザックスは…? |
アンジール | 俺が救出に行って来る。 |
クラウド | 俺も行く。 |
アンジール | 気持ちは判るが…今のお前は、ただの騎士見習いだろう? |
| マテリアは無いし、あったとしても、魔法が使えるのか? |
クラウド | …それは… |
アンジール | 心配するな。中世の牢を破るなんて、ソルジャーには朝飯前だ。 |
| 俺が大人しく牢にいたのは、ただ単に、行く当てが無かったからだ。 |
クラウド | (また俺は…友達の為に、何も出来ないのか……?) |
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【地下牢】 |
| アンジール | ザックス。無事だったか。 |
ザックス | アンジール…?どうして… |
アンジール | お前を助けに来た。エアリスとクラウドも無事だ。 |
ザックス | …あの二人が無事なら良いんだ。 |
| 俺は……大恩ある侯爵を裏切った。処刑は、当然の報いだ。 |
アンジール | 簡単に諦めるな。夢と誇りを持てと言っただろう? |
ザックス | …騎士団長にさんざん叱責された。俺のした事は、身勝手で浅はかだって。 |
| 確かにその通りだ。エアリスを逃がしたせいで他の女の子が生贄に選ばれたし、 |
| クラウドだって、頑張れば騎士になれたかも知れないのに、俺のせいで…… |
アンジール | 他の生贄が選ばれた…? |
| (クラウドが言っていたのとは違って、エアリスが選ばれた事に |
| 特に意味は無かったのか…) |
ザックス | それに俺も、もう騎士にはなれない。それどころか、剣も持てなくなっちまった… |
アンジール | その右手の怪我か?大して深い傷ではなさそうだが…。 |
ザックス | …腱を切られたんだ。治る可能性は、無い… |
アンジール | セフィ――いや、侯爵がやったのか? |
ザックス | ああ…。侯爵がお怒りになるのは当然だ。孤児だった俺を教会に託し、 |
| 警備隊長や騎士見習いに取り立ててくれたのに、俺は恩を仇で返した… |
| あの時…侯爵の顔を見たら、何も言えなくなっちまって… |
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--ザックスの回想 |
セフィロス | アンジールを逃がしたのは、お前か? |
ザックス | ……。 |
--侯爵、ザックスの腕に斬りつける |
セフィロス | …痛むか? |
ザックス | …っ… |
セフィロス | 信じていた者に裏切られる痛みは、その傷の痛みとは比べ物にもならない。 |
| それを、よく覚えておけ。 |
ザックス | 侯爵…… |
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ザックス | あの時、侯爵は怒ると言うより哀しんでいた… |
| 一時の感情に流されて、大恩ある人を裏切った自分が情けない…… |
アンジール | ……お前には、別の世界で生きていた記憶は無いのか…? |
ザックス | 別の…?そんなもの、ある訳ないだろう。 |
アンジール | (この世界は俺達の世界とは価値観が違う) |
| (介入すべきでは無いのかも知れないが…) |
| お前が捕らえられたのは、俺を逃がしたからだろう?だったら、見殺しには出来ん。 |
ザックス | ここから逃げられても、俺はただの足手まといにしかならない… |
アンジール | 弱音を吐くな、ザックス。鍛えれば左手だって使えるようになるし、脚は無事だろう? |
| さあ、立て。エアリスに、会いたくないのか? |
ザックス | …会いたい… |
アンジール | だったら、行くぞ。 |
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【礼拝堂】 |
| ジェネシス | こうしていると、昔を思い出すな。 |
セフィロス | 私には、そんな記憶は無い。 |
ジェネシス | …そうか。別に、構わないさ。 |
| (何故、何も思い出さないんだ……?) |
セフィロス | だが…お前のいたという世界には、興味がある。 |
ジェネシス | 何でも聞いてくれ。 |
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【森1】 |
| アンジール | エアリスは教会に帰そうと思っていたが、事情が変わった。 |
クラウド | 何かあったのか? |
アンジール | 他の少女が、贖罪の乙女に選ばれたらしい。 |
クラウド | 他の…?セフィロスは…エアリスの事を覚えていないのか…? |
アンジール | 生贄ならば儀式の日までは安全な筈だが、生贄でなくなったとなると… |
クラウド | 神から拒絶されたとみなされれば、破門されて殺される可能性もある。 |
| 破門されてしまったら、天国には行けないって信じられてる。 |
アンジール | どこか安全な隠れ場所は無いのか?ザックスも、今は戦力にならないし、 |
| 何より、神羅時代の記憶があるのは俺とお前だけだ。 |
クラウド | …領主に逆らった者や、神を裏切った者を受け入れてくれる所なんてある訳ない。 |
アンジール | だがお前とエアリスは、俺が無理やり拉致したんだぞ?罪は無いだろう。 |
ザックス | …悪いけど、全部、しゃべっちまった。 |
クラウド | ザックス…!俺達の話を―― |
ザックス | ああ…。勝手に聞かせてもらった。 |
クラウド | …どうして喋ってしまったんだ?拷問でもされたのか…? |
ザックス | どうして大恩ある侯爵を裏切ったりしたんだって、シスターに泣かれて…… |
| 俺達の母ちゃんみたいな人だからな。黙ってられなくなって… |
クラウド | そうだったんだ…。 |
ザックス | それより…これからどうするんだ? |
アンジール | お前とエアリスをどこかにかくまってもらおうと思うんだが、当ては無いのか? |
ザックス | それだったら…知り合いのシスネって女の子の家に頼めると思う。 |
クラウド | (そんな知り合い、いたんだ…) |
アンジール | それは良かった。その家まで送ろう。 |
ザックス | …恩に着る。クラウドも一緒だよ…な? |
クラウド | ああ、もちろん。 |
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| エアリス | クラウドとアンジール、何の話してたの? |
ザックス | 俺達みんなを、俺の知り合いの家でかくまってもらう相談だ。 |
エアリス | そんなの駄目だよ…!私は教会に戻るって、言ってるのに。 |
ザックス | ああ…判ってる。俺が浅はかだったんだ。逃げるなんて、間違ってた。 |
| ただ…一つだけ、確認しておきたい。エアリスは…生贄になるの、怖くないのか? |
エアリス | 怖くなんかない。 |
| 神様の御許に行けるんだし、ランベリーの皆の為になれるんだもの。 |
| 贖罪の乙女に選ばれて、むしろ喜んでるくらいよ。 |
| (私が怖いなんて言ったら、みんなに迷惑がかかる…) |
ザックス | …それを聞いて、安心した…… |
| (シスターの言ってた通りだ。エアリスは、すごく信心深いから…) |
エアリス | でも…クラウドの様子が、ちょっとおかしいの。 |
| 取り乱して、侯爵様や女神ジェノバを悪く言ったりして… |
ザックス | クラウドが……? |
エアリス | それに、アンジールと内緒話ばかりして…。 |
| アンジールは悪い人じゃないと思うけど、 |
| クラウドがおかしな影響を受けないか心配で… |
ザックス | …心配しなくて良い。クラウドの事は、俺がちゃんとするから。 |
| ただ……本当に、生贄になるの、怖くないの…か? |
エアリス | 本当に怖くないってば。死を怖がるのは、信仰心の薄い人だけだよ。 |
ザックス | そう…だな。いつも、シスターがそう言ってた…。 |
エアリス | だから、皆で教会に戻ろう? |
| 侯爵様は慈悲深い方だから、ザックスの事も、きっと赦してくれるよ。 |
ザックス | ああ……判ってる…。 |
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--ザックスの回想 |
騎士団長 | 侯爵の為に尽くし、忠誠を示せ。 |
ザックス | どうすれば良いんですか? |
騎士団長 | これから言う事を、よく聞け…。 |
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ザックス | エアリス…。クラウドを助ける為に、協力して欲しいんだ。 |
エアリス | もちろん。私に出来る事なら、なんでもする。 |
ザックス | じゃあ、俺達と一緒にシスネの家まで行ってくれ。 |
エアリス | 教会に、戻るんじゃないの? |
ザックス | 戻るさ。だけど、俺もクラウドもアンジールも、みんな一緒でなきゃ駄目なんだ。 |
エアリス | …判った。それで、ザックスとクラウドが助かるなら…。 |
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【礼拝堂】 |
| ジェネシス | 浮かない顔だな…。何かあったのか? |
セフィロス | …アンジールが、ザックスを連れて逃げたそうだ。 |
| (騎士団長は、策があるから任せてくれと言っていたが……) |
ジェネシス | アンジールの事なんか放っておけ。 |
| 俺が自ら生贄になると申し出ているんだ。それで充分だろう? |
セフィロス | (この男から感じる力の脈動は、アンジールのそれより弱い) |
| (万全を期する為には、やはりアンジールが必要だ) |
ジェネシス | …リユニオンした後、どうするんだ? |
セフィロス | どうする…とは? |
ジェネシス | 何か目的があって儀式を行うのだろう? |
セフィロス | 目的は…我が母、ジェノバの復活だ。 |