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【民家】 |
| ザックス | ここがシスネの家だ。 |
アンジール | 留守みたいだが…? |
ザックス | 大丈夫。勝手に入って良いって言われてるから。 |
アンジール | 鍵もかかっていないなんて、物騒だな…。 |
ザックス | 貧乏平民の家に泥棒に入る奴なんて、いないからな。 |
アンジール | …そうか。 |
ザックス | もうすぐ、シスネが帰って来ると思う。適当に座っててくれ。 |
クラウド | シスネって人、俺は名前を聞いた事ないけど…。 |
ザックス | 俺はお前と違って、ご婦人の知り合いは多いんだ。 |
クラウド | (ザックスは、エアリスが好きな筈なのに……) |
ザックス | ところで、ジェネシスってどうなったんだろう。 |
アンジール | …俺には判らん。 |
| (セフィロスの所に行ったとは言えないな…) |
ザックス | 幼馴染だって言ってたけど、なんであんな奴が友だちなんだ? |
エアリス | あんな奴…? |
ザックス | 城下を荒らし回って金品を奪い、衛兵を何人も殺したんだ。 |
エアリス | そんな、酷い……。 |
アンジール | ジェネシスは…昔からああだった訳じゃない。いろいろ理由があって… |
ザックス | 理由って? |
アンジール | それは…… |
クラウド | 別に良いじゃないか。ジェネシスはジェネシス、アンジールはアンジールだ。 |
ザックス | 別に、無理に聞こうとは思わないけどさ。何かあいつって、性格歪んでる気がする。 |
クラウド | (ザックス…どうしてしつこくジェネシスの事を…?) |
アンジール | …子供の頃は、もっと素直な奴だった。 |
| だが…ある頃から、両親に愛されていないと感じるようになって… |
ザックス | なんで? |
アンジール | 小さい頃、あいつが肺炎に罹った時、 |
| あいつの両親は看病を使用人に任せて旅行に… |
エアリス | そんな…… |
アンジール | それ以来、あいつは両親の愛情を疑うようになって、わざと無断外泊したりした。 |
| それでも、あいつの両親は何も言わなかった…。 |
ザックス | それじゃ性格が歪む筈だ…。 |
アンジール | …あいつはプライドが高いせいで素直になれないだけだ。決して悪い奴じゃ…… |
ザックス | (…合図だ) |
| そうだ、アンジール。また、あんたの翼を見せてくれないか? |
エアリス | 翼…? |
ザックス | ああ。アンジールには、翼があるんだ。天使みたいに、真っ白で綺麗な翼が。 |
アンジール | 見せるような物では… |
ザックス | 別に良いじゃん。減るもんでなし。エアリスだって、見たいよな? |
エアリス | え?――う…うん……。 |
アンジール | …判った。 |
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--アンジールの翼に、ザックスが斬りつける |
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アンジール | ……!?ザックス、お前…剣が持てなくなった筈じゃ… |
ザックス | 腱を切られてなんかいないさ。慈悲深い侯爵が、そんな事、する筈ないだろ? |
アンジール | (家を囲まれている…。会話に気を取られて、気づくのが遅れた……) |
クラウド | アンジールの翼を斬り落とすなんて…どうしてそんな事を…!? |
ザックス | ごめん、アンジール…。あんたの事、好きだったし、あんたには勇気づけられた… |
| だけど…魔物はそうやって言葉巧みに人を誑かすんだって、司祭が… |
クラウド | アンジールは魔物なんかじゃない。特別な力があるのはソルジャーだから―― |
ザックス | 俺もお前も誑かされたんだ…! |
| 侯爵を裏切るような考えを起こしたのも、きっとそのせいだ。 |
クラウド | ザックス…… |
ザックス | 魔物を捕らえて司祭に引き渡せば、俺達の罪は赦されるってシスターが言ってた。 |
| それに侯爵も、忠誠を示せば、もう一度、チャンスをくれるって… |
クラウド | 自分の為に、アンジールを裏切るのか…? |
ザックス | 目を覚ませ、クラウド。そいつは魔物だ…! |
アンジール | ……。 |
クラウド | アンジール!俺がザックスを引き止めるから、あんただけでも逃げてくれ…! |
ザックス | 邪魔するな、クラウド…! |
エアリス | やめて二人とも…!どうして二人が争わなくちゃならないの…!? |
アンジール | (くそ…出血がひどくて眼がかすむ……) |
| 脱出するぞ、クラウド。走れ…! |
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【洞窟】 |
| クラウド | 何とか追っ手はまいたけど…大丈夫…か? |
アンジール | ああ…。出血は、止まったようだ…。 |
クラウド | ザックスの事……悪く思わないでくれ…。 |
アンジール | …判ってるさ。翼のある人間なんて、魔物だと思われて当然だ。 |
| それに…俺は……モンスターなんだ。 |
| セフィロスやジェネシスと同じ、神羅が行った人体実験で生みだされたモンスター… |
クラウド | ……。俺達を育ててくれたシスターが、いつも言ってた。 |
| 人と魔物の一番大きな違いは、外見でも力でもなく、心だって。 |
アンジール | 心……? |
クラウド | 悪い感情が、人の心に魔物を生み出す。憎しみや慢心や怠惰な気持ち… |
| それに負けてしまう事で、人は魔物になってしまう。 |
| だから毎日、神様にお祈りして、誘惑と戦う強い心を育てなさいって。 |
アンジール | この世界の神というのは、ジェノバの事だろう…? |
クラウド | ああ…。だけど、この世界の人々が信仰している女神は、 |
| 他の世界の神と変わらない。 |
| 禍々しいものでも星の敵でもなく、人知を超越した偉大なもの、 |
| 自然を具象化したような、そんな存在だ。 |
アンジール | (それはまやかしなのか?それとも…それこそがジェノバの本当の姿なのか…?) |
クラウド | あんたには人間としての感情が、人の心がある。 |
| だから…モンスターなんかじゃない。 |
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--ジェネシスの言葉が、アンジールの脳裏に蘇る |
ジェネシス | モンスターであるという事実が、俺達を変えたんだ。 |
| ある意味、あるべき姿に戻ったと言うべきか…。 |
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アンジール | お前は…セフィロスは人の心を捨ててしまったのだと言ったな。 |
クラウド | 今のセフィロスに取って、全ての人間は裏切り者でしかないんだ… |
アンジール | 俺とジェネシスが…セフィロスを裏切ったせい…なのか? |
クラウド | …あの時、ジェネシスがあそこまでセフィロスを追い詰めなければ、 |
| あんな事にはならなかった可能性はある…と思う。 |
アンジール | ジェネシスがそんな事をしたのは多分…セフィロスに殺されたかったからだろうな… |
クラウド | 殺されたかった…? |
アンジール | 俺達はソルジャーだからな。死ぬ時は、戦って死にたい。 |
| あいつは子供の頃からずっとセフィロスに憧れていたから、 |
| セフィロスの手にかかって死ねれば本望だったろう…。 |
クラウド | わざと酷い事を言って、セフィロスを怒らせようとした…と? |
アンジール | セフィロスがそんな挑発に乗るような男じゃないのは、あいつも判ってたろうが |
| あいつ自身、かなりギリギリの精神状態だったんだろう。 |
| セフィロスを追い詰めたのがジェネシスなら、ジェネシスを追い詰めたのは俺だ… |
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--ジェネシスの言葉が、アンジールの脳裏に蘇る |
ジェネシス | だったらどうして勝手に一人で死んだ?どうして俺を殺してくれなかった? |
| どうして一人だけ、運命から逃げようとしたんだ…!? |
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アンジール | あいつは子供の頃…何でも俺に相談していた。 |
| ソルジャーになるって言い出した時は、反対したが… |
クラウド | どうして、反対したんだ…? |
アンジール | 子供の頃、あいつは身体が弱かったんだ。 |
| だけど雑誌の記事でセフィロスを知って憧れ、どうしてもソルジャーになる…と。 |
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--ジェネシスの言葉が、アンジールの脳裏に蘇る |
ジェネシス | 判らないのか?やっと…夢が叶うんだ。 |
| リユニオンによって、俺はセフィロスと一つになれる。 |
| セフィロスに、なれるんだ。 |
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アンジール | あいつはセフィロスの強さと、孤高さに憧れていた。 |
クラウド | 俺も…同じだ。子供の頃、友だちがいなくて…自分の弱さが嫌だった。 |
| セフィロスに憧れたのは、あんな風になれれば、 |
| 弱さも孤独も克服できると思ったから… |
| あの時、セフィロスの哀しみが判っていて何もしなかったのは |
| セフィロスならきっと大丈夫だって、過信していたからかも知れない… |
アンジール | 多分…ジェネシスも同じだ。 |
| あいつに取って、セフィロスは自分の理想が具現した存在だから |
| セフィロスにも感情があって傷つく事もあるんだと、認めたくなかったんだろう… |
クラウド | だけど…いくら最強のソルジャーでも、人間だ。 |
アンジール | ああ…。だから深い哀しみに、耐えられなくなる時もある。 |
クラウド | だから…記憶と共に、感情を捨ててしまったのか…? |
アンジール | ……。俺は、セフィロスを信じると言った。 |
| セフィロスが人の心を取り戻せば、皆が救われるのだと思ったから… |
| だがもし、セフィロスが記憶を取り戻すことで、 |
| 再び耐え難い哀しみを負ってしまったら… |
クラウド | ランベリーで、ニブルヘイムの悲劇が再現されるかも知れない…… |