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【洞窟】 |
| アンジール | 一体…俺達はどうすれば良いんだ? |
クラウド | もう一度…セフィロスと戦って倒す。他に方法は無い。 |
アンジール | だがそんな事をすれば、ランベリーは優れた領主を失ってしまう。 |
| セフィロスが本当に、俺達の事もお前達の事も覚えていないなら―― |
クラウド | このまま放っておけって言うのか? |
| このままじゃ、エアリスは殺されてしまうかも知れないのに。 |
アンジール | そうなるとは限らない。それに…この世界にはこの世界の価値観があるんだ。 |
| 俺達の価値観を押し付けたり、介入したりすべきじゃないだろう? |
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--エアリスの言葉が、クラウドの脳裏に蘇る |
エアリス | 私は生贄になるのなんて怖くない。少しだけ早く、神様の御許に行くだけだもの。 |
| 贖罪の乙女に選ばれて、むしろ喜んでいるのに。 |
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クラウド | (確かに…神への生贄になれば、聖女として祀られる) |
| (それにエアリスはとても信心深い。だけど……) |
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--エアリスの最期が、クラウドの脳裏に蘇る |
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クラウド | (また俺は、エアリスを助けられないのか…?) |
アンジール | …俺を捕らえて、それをお前とザックスの手柄にしろ。 |
| そうすれば、お前達二人は赦されるだろう。 |
クラウド | そんな事、出来るわけ無いだろう? |
アンジール | だが俺は、セフィロスの許に行かなくてはならない。 |
| ジェネシスが先に行ってるからな。 |
| あいつがセフィロスに余計な事を言わないように、止めなければ… |
クラウド | だけどさっきザックスは、あんたを司祭に引き渡すって言ってた。 |
| そうなったら、問答無用で火あぶりだ。 |
アンジール | その前に、セフィロスに会って―― |
クラウド | 司祭は領主より教皇の命令を優先するんだ。 |
| 侯爵ではなく司祭にあんたを引き渡すって事は |
| この件に、教皇府が絡んでいるのかも…。 |
アンジール | つまり…捕らえられてしまったら、セフィロスに会う機会も無くなるのか…。 |
| だが…翼は斬られてしまった。もう、飛ぶ事は…… |
クラウド | 『魔物』の力を封じようとして、翼を斬ったんだな…。 |
| ザックス自身の考えじゃない。誰かに命じられたんだ。 |
アンジール | …この世界にも、翼を持ったモンスターがいるのか? |
クラウド | ランベリーにはいないけど、他の領地まで行けば…。 |
アンジール | (ならば方法が無い訳ではない。だが、その手を使ってしまったら……) |
クラウド | 教皇が介入して来るとなると、いろいろ厄介だ…。 |
アンジール | どういう事だ? |
クラウド | 教皇の権力は、国王に匹敵するんだ。 |
| 贖罪の乙女が逃亡したとか、家臣が魔物に誑かされたとか… |
| それを領主の落ち度にされたら、最悪、取り潰しに…。 |
アンジール | そんな理由で取り潰しとは、随分、酷いな。 |
クラウド | 教皇は、以前から侯爵の事を快く思っていなかったから…。 |
アンジール | 何故だ? |
クラウド | 例えば贖罪の儀式。 |
| 生贄には何よりも大切なものを捧げて神への忠誠を示すべきなのに |
| 人を生贄にするのは残酷だと侯爵が言ったから、教皇が侯爵の信仰を疑って… |
アンジール | 何よりも大切なもの・・・? |
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--ジェネシスとの会話が、アンジールの脳裏に蘇る |
ジェネシス | リユニオンの為の、生贄として。 |
アンジール | その為に、俺達を生贄に…? |
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アンジール | (まさか…セフィロスが俺達を生贄に選んだ理由は…) |
クラウド | でも侯爵は女神の申し子と呼ばれているから、教皇は何も出来なかった。 |
| それで教皇は侯爵を恨み、少しでも口実があれば介入しようとする。 |
| そしてあわよくば、このランベリーを手に入れようと… |
アンジール | 酷い話だな…… |
クラウド | ああ…。そして、教皇からランベリーを護ってきたのが、侯爵である事は間違いない… |
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【礼拝堂】 |
| ジェネシス | 来客は、誰だったんだ? |
セフィロス | 教皇府の使者だ。厄介な事になった… |
ジェネシス | 厄介な事…とは? |
セフィロス | 誰かがこの領内に魔物がいると、密告したようだ。 |
ジェネシス | (魔物とは…俺の事か?それともアンジール…) |
| それがどうして厄介な事になるんだ? |
セフィロス | …元々、教皇は、私が女神の申し子と呼ばれる事を快く思っていなかった。 |
| 信仰に関わる権力を、独占したいからだ。 |
| だから何かと口実を見つけて、介入しようとしてくる。 |
ジェネシス | それで、何を言って来たんだ? |
セフィロス | 儀式の時までに魔物を捕らえられなければ、儀式を教皇府の主導で行う…と。 |
| つまり、教皇府の人間が、この礼拝堂に立ち入るという意味だ。 |
ジェネシス | そんな事になったら、リユニオンの邪魔をされてしまう…。 |
セフィロス | その通りだ。そしてそれは、絶対に防がなくてはならない。 |
ジェネシス | それなら安心してくれ。俺が、どうにかする。 |
セフィロス | お前が…? |
ジェネシス | ああ…。この俺が。 |
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【民家】 |
| エアリス | クラウド…一体、どうしちゃったんだろう…… |
ザックス | 魔物に誑かされたんだ。完全に魔に取り込まれてしまう前に、助けないと… |
エアリス | まさかアンジールが魔物だったなんて…。良い人だと思ったのに… |
ザックス | 俺もそう、思ってた。だけどそうやって人を信用させて誑かすのが、魔物なんだ。 |
エアリス | 確かに…クラウドの様子、おかしかったもの。 |
| でも、大丈夫だよね?見つけ出してお祓いをすればきっと…。 |
ザックス | もちろんだ。クラウドは、絶対に俺が助ける。だからエアリスは…… |
エアリス | 先に教会に戻って、二人が帰ってくるのを待ってる。 |
| 毎日、お祈りしてるから…必ずクラウドを連れて帰って。 |
ザックス | ああ…。必ず。 |
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【洞窟】 |
| クラウド | ランベリーが教皇の直轄地になれば、税が重くなってしまう… |
アンジール | そうなのか? |
クラウド | と言うより、今の侯爵が特別に税を軽減してくれているんだ。 |
| 50年戦争で皆、疲弊してしまったから… |
アンジール | それでもお前は、セフィロスと戦うのか…? |
クラウド | ……判らない。セフィロスと戦う事自体、正しいのかどうか、判らなかった。 |
| ましてやエルムドア侯爵は、立派な領主だ。 |
アンジール | …俺達をこの世界に呼び寄せたのは、本当にセフィロスなんだろうか… |
クラウド | そんな事が出来る力を持つ者は限られている。 |
アンジール | セフィロスはお前の事を覚えていないのに、どうしてお前はここにいる? |
| エアリスの事も、ザックスの事も…だ。 |
クラウド | 星が…危険を察知して、俺達三人を呼び寄せたのかも… |
アンジール | だがお前は前世の記憶を引き継いでいるだけで、かつての力は無い。 |
| エアリスも、もう古代種でないなら、星に取って特別な意味は無い。 |
クラウド | …セフィロスに取っても、無意味だと…? |
アンジール | だが、お前に取っては重要だろう? |
クラウド | ……え? |
アンジール | 前世で、お前はあの二人が殺されるのを防げなかった。 |
| その事で、今でも自分を赦せないのだと、言ってたな。 |
| それに、セフィロスの哀しみを知っていながら、何もできなかった事も。 |
クラウド | …だから…? |
アンジール | だから…お前はやり直したかったんじゃないのか?過去に戻って、もう一度。 |
クラウド | …皆をこの世界に呼び寄せたのが、俺だって言いたいのか…? |
アンジール | お前は侯爵を崇拝しているのだろう?かつて、セフィロスに憧れたように。 |
| それにお前は、セフィロスを憎んではいないのだと言っていた。 |
クラウド | …俺は… |
アンジール | セフィロスを殺さずに、エアリスもザックスも護る。 |
| それがお前の望みだ。――違うか? |
クラウド | ……その通りだ。俺が戦えなくなってしまったのは、 |
| 終わりが無いからでも、護るべき者を失ったからでもない |
| 本心では、セフィロスと戦いたくなかったから…… |
アンジール | だが…お前は戦わなければならなかった。大切な人を、護る為に。 |
クラウド | そうだ…。だけど、本当は戦いたくなかった。 |
| ずっと…セフィロスに憧れていたかったんだ… |
クラウド | だけど…あんたとジェネシスを呼び寄せたのは、俺の意思じゃない。 |
アンジール | だろうな。だがセフィロスの意思だとすると、俺とジェネシスの事を思い出さない理由が判らない。 |
クラウド | だとしたら、ジェノバの意思…? |
| 今のセフィロスには、本当にこの世界の人間としての意識しかないのか… |
アンジール | だが…セフィロスの名は知っていたぞ? |
クラウド | 多分…それは生命の樹の事だと思う。 |
アンジール | 生命の樹? |
クラウド | 古代の聖典に載ってるって、エアリスが言ってた。 |
| その実を食べる事で不老不死になれる。 |
| そしてその実を食べようとして、人類の始祖は楽園を追われた。 |
アンジール | 生命の樹の話なら、俺も聞いた事がある。 |
| その実を食べる事で、人は神と等しい存在なれる…と。 |
クラウド | セフィロスは…神になるのだと言っていた… |
アンジール | 神に…? |
| (セフィロス…。一体、お前の目的は何なんだ…?) |