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【村】 |
| アンジール | ここまで来れば大丈夫だろう。君たちは、村人に助けを求めれば良い。 |
エアリス | 私たちは良いとしても…アンジール、本当に大丈夫なの? |
アンジール | 心配するな。ザックスは、必ず助ける。 |
エアリス | ザックスの事だけじゃなくて、あなたは…? |
クラウド | セフィロスに会うのは止めた方が良い。ザックスの救出は、俺も手伝うから。 |
エアリス | セフィロスって、何の事?まさかクラウド、まだ侯爵様の事を―― |
クラウド | 侯爵は関係ない。さっきは…ちょっと混乱しただけだから。 |
エアリス | そう…。だったら良いけど…。 |
アンジール | …エアリス。少し、ここで待っていてくれないか?クラウドと話がしたい。 |
エアリス | ……判った。 |
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アンジール | お前はこれからどうする積りなんだ?このまま戻れば、エアリスは… |
クラウド | セフィロスを、倒す。エアリスとザックスを救うには、それしかない。 |
アンジール | お前にそんな力があるようには思えないが…。第一、どうやって侯爵に近づく? |
クラウド | 朝夕二回、侯爵は礼拝堂に必ず一人で行く。その時が、チャンスだ。 |
アンジール | 礼拝堂に、何があるんだ? |
クラウド | 誰も入った事が無いから判らないけど、ジェノバの像が祀ってあるらしい。 |
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--ニブル魔晄炉でセフィロスがジェノバに向き合う姿がクラウドの脳裏に蘇る |
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クラウド | あの時も…セフィロスはジェノバの所にいた。信じられないくらい、無防備に…。 |
アンジール | …セフィロスは、ジェノバを母親だと思っていたからな…。 |
| この世界でも、ジェノバの申し子と呼ばれているらしいが。 |
クラウド | ああ…。女神の申し子。慈悲深く聡明な領主として、領民に慕われている。 |
| 全てが、まやかしでしかなかったのに…。 |
アンジール | まやかし…だと、お前は思うのか? |
クラウド | 侯爵がセフィロスなのは間違いない。だから古代種の血を引くエアリスを殺そうと―― |
アンジール | …どうした? |
クラウド | 皆…この世界で生まれたんだ。俺だけが前世の記憶を受け継いでるけど… |
| だから今のエアリスは、もう古代種じゃない…。 |
アンジール | セフィロスも、生まれ変わりなのか…? |
クラウド | セフィロスは特別だ。セフィロスは死んでも、星に還る事は無い。 |
アンジール | …お前が知っているセフィロスの事を、もっと話してくれ。 |
クラウド | …セフィロスは、自分が神羅の実験で生み出されたモンスターだと知って、 |
| ニブルヘイムの皆を殺して村を焼き払った。 |
| 俺とザックスはセフィロスと戦って倒したけど、その後、宝条の実験台にされて… |
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--クラウドの脳裏に様々な記憶が入り乱れる |
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クラウド | 痛っ…う… |
アンジール | …どうした? |
クラウド | 記憶が混乱して…頭が割れるように痛むんだ… |
アンジール | だったら、無理に思い出さなくても―― |
クラウド | いや…あんたには話しておきたい。いつまで前世の記憶を保っていられるか判らないし…… |
| もしも俺が記憶を失ったら、あんたにセフィロスを止めて欲しい。 |
アンジール | ……。 |
クラウド | セフィロスはニブルヘイムで死んだけど、5年後に復活した。 |
| 俺はセフィロスと戦って倒したが、その2年後にまたセフィロスは復活を… |
| その後も、同じ事が、何度も繰り返された。覚えていないくらいに、何度も。 |
| そして戦いが繰り返される内に…俺は戦えなくなってしまった… |
アンジール | 戦えなくなった…? |
クラウド | 何度、倒しても、セフィロスは必ず復活する。俺は…戦う意味が判らなくなった。 |
| それに…月日が流れて皆は年老いて死んでいって……。俺は、護るべき者を失った… |
アンジール | それで…どうなったんだ? |
クラウド | セフィロスに…殺された。それで、全てが終わったんだと思っていた。 |
アンジール | だが、終わってはいなかった… |
クラウド | ああ…。セフィロスは決して星に還らないから、終わる事は無いんだ。 |
アンジール | ジェノバはこの星の生き物じゃないから、星には還れないんだろうな… |
| (俺やジェネシスも同じなのか…?) |
クラウド | ザックスはあんたを信頼している。俺も…あんたを信じたい。 |
アンジール | ザックスは必ず助け出す。だが、セフィロスの事は…… |
| 今のセフィロスは、領民に慕われる領主だ。あいつを殺してしまったら、ランベリーはどうなる? |
| それに、お前を倒したなら、どうしてその時、星を支配してしまわなかったんだ? |
クラウド | そんな事、判らない…。でもセフィロスがメテオを呼んだら、 |
| 死ぬのはランベリーの人たちだけじゃ済まなくなる。 |
アンジール | だがセフィロスがそんな事をするだろうとは、俺にはとても思えない。 |
| お前は俺の知らないセフィロスを知っているんだろうが、俺はお前の知らないセフィロスを知っている。 |
クラウド | 俺も…知っている。 |
| セフィロスの…哀しみの深さを。 |
| 俺はセフィロスを憎んでいる訳じゃない…。いっそ憎んだ方が楽なのに、憎めないんだ… |
アンジール | …親を殺され、故郷を焼かれたのに…か? |
クラウド | セフィロスは神羅の犠牲者だ。それに…俺も神羅の兵士だった。 |
| ウータイの兵士を殺したし、ウータイの村を焼いた事も…。 |
| 戦争だったからなんて、言い訳する気は無い。兵士になったのは、自分の意思だ。 |
アンジール | セフィロスは望んでソルジャーになった訳じゃないからな…。 |
| ウータイ戦には疑問があったらしく、何度も命令拒否をしていた。 |
| だがそのせいでウータイ戦は長引いて…その事で、あいつは悩んでいた。 |
クラウド | それでも…セフィロスは、変わってしまったんだ。 |
クラウド | あの時…俺とザックスはセフィロスの側にいた。 |
| セフィロスを追い詰めたのはジェネシスだ。 |
アンジール | ……。 |
クラウド | 俺達はセフィロスが傷ついているのが判っていたけど、何も出来なかった…。 |
| セフィロスの様子がおかしくなったのも判ってたけど、何も…… |
アンジール | …俺は友人なのに、ジェネシスにもセフィロスにも、何もしてやれなかった。 |
| 自分の運命に耐えかねて…逃げようとしたんだ…… |
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【礼拝堂】 |
| ジェネシス | 久しぶりだな、セフィロス。 |
セフィロス | ジェネシス…。戻って来たのか。 |
| (この男にも、翼が…?) |
ジェネシス | 何て顔をしているんだ。俺達を呼び寄せたのは、お前だろう? |
セフィロス | 私が、お前たちを呼び寄せただと…? |
| (では、この男も選ばれし生贄なのか…?) |
ジェネシス | ジェノバはこの世界では女神として崇められているそうだな。 |
| 「惜しみない祝福と共に 君は女神に愛された」という訳だ。 |
セフィロス | …何の話だ…? |
ジェネシス | 本当に何も覚えていないのか? |
| だったら、教えてやる… |
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【村】 |
| アンジール | クラウド、お前……泣いているのか? |
クラウド | ――え……? |
| …俺は宝条にS細胞を埋め込まれた。 |
| そのせいか、俺にはセフィロスの記憶があるんだ… |
アンジール | セフィロスが捨ててしまった記憶が、お前の中で生き続けているのか…? |
クラウド | ああ…。今の俺は、あの頃のクラウドじゃないのに。記憶だけは…… |
アンジール | 何故だ…?生まれ変わりなら、もうS細胞は持っていないだろう? |
クラウド | 多分…俺はまだ、自分が赦せないんだと思う。 |
| エアリスを護れなかった事…俺のせいで、ザックスを死なせてしまった事。 |
| セフィロスの哀しみを知っていながら、何もできなかった事…。 |
アンジール | …セフィロスを倒せば、お前は救われるのか? |
クラウド | ……俺が戦う意味を見失ったのは、終わりが無いからってだけじゃない。 |
| セフィロスと戦って倒すのが、本当に正しい事なのかどうか、判らなくなった。 |
| だけど、他に皆を護る方法が判らないんだ… |
アンジール | …俺にも判らないが… |
| それでも…少なくとも俺は、セフィロスを信じる。 |
クラウド | ……。 |
アンジール | だがそれでも、どうあってもセフィロスが多くの人を犠牲にするのだったら |
| その時は、俺はお前と共に、セフィロスを止める。 |