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【水城】
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アンジール | 俺は……まさか飛べる…のか? |
ザックス | どうしたんだ、アンジール。飛べるって、どういう事だ? |
アンジール | 俺にも…よく判らないが……。試してみる価値はありそうだ。 |
ザックス | 試すって何を――うわっ…!翼が……!? |
| どういう事なんだ、これ。あんた、一体…… |
アンジール | 記憶が曖昧だから、俺自身、どういう事なのか良く判らない。 |
| ただ判っているのは、俺には飛ぶ能力があるって事だ。 |
クラウド | まさか…魔物?でも…天使みたいに綺麗な翼だ…… |
アンジール | 一緒に来たのがお前たち2人だけで良かった。 |
| 他の連中にまで見られたら、騒ぎになるところだったな。 |
ザックス | 俺の頭の中では充分、騒ぎになってるけど… |
| これが、ソルジャーの能力なのか?それとも、あんた達の世界では普通なのか? |
アンジール | 驚かせたなら謝る。だが俺も、少しずつ思い出している最中なんだ。 |
| どうして翼があるのかは、俺にも判らない… |
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【水城の牢】 | |
セフィロス | (力の脈動を感じる……) |
| (これは…何者の力だ…?) |
| (何故この力を、こんな所で感じる…?) |
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【水城】
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アンジール | 日が落ちるのを待って、侵入する。 |
ザックス | その翼、真っ白で綺麗だけど、夜には目立つんじゃないか? |
クラウド | 大丈夫…だと思う。今夜は新月だから。 |
アンジール | それはラッキーだな。 |
クラウド | 侯爵には神のご加護があるんだ。ただの偶然なんかじゃない。 |
アンジール | 随分…侯爵を慕っているんだな。 |
ザックス | こいつは「銀の貴公子」に憧れて兵士になったんだ。 |
クラウド | 俺だけじゃない。領民の皆が、侯爵を尊敬している。 |
ザックス | なあ…。あんたの友だちのセフィロスって、どんな奴なんだ? |
| 英雄だって、言ってたけど。 |
アンジール | どんな任務も完璧にこなす最強のソルジャーで、 |
| 全ての兵士の誇り、憧れの的だ。女性の崇拝者も多い。 |
ザックス | まるでうちの侯爵みたいな人なんだな。 |
アンジール | ああ。だから…俺には侯爵が他人のようには思えないんだ。 |
| 侯爵がセフィロスでなくとも、絶対に救い出す。 |
クラウド | ……セフィロス…… |
ザックス | どうした、クラウド? |
クラウド | 何でもない…… |
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日没後 |
| アンジール | 俺が侯爵を救出してくるから、お前たちはここで待っててくれ。 |
ザックス | 俺達はあんたから目を離すなと、重臣たちに命じられている。 |
アンジール | 誰か一人なら一緒に連れて行けるが、帰りは侯爵を連れて帰るからな。 |
| そうなったら、敵の真っ只中に一人で取り残される事になるが? |
ザックス | ……。 |
アンジール | どうした、ザックス? |
ザックス | アンジール、あんた…まさか魔法使いじゃないよな? |
アンジール | 言っただろう。俺はソルジャーだ。 |
ザックス | だったら良いけど…。侯爵は、異端審問官でもあるんだ。 |
| もしあんたが魔法使いなら、火あぶりは間違いない。 |
アンジール | 大丈夫だ。心配するな。(さすがは中世だな…) |
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【水城の牢】 |
| アンジール | セフィロス――いやエルムドア侯爵。助けに来た。 |
セフィロス | お前は、地下牢に繋いであった筈。それに、その翼は…? |
| (さっき感じた力の脈動は、この男のものか…?) |
アンジール | ザックスが重臣にかけあって、お前の救出に協力する事になったんだ。 |
| 翼の事は俺にもよく判らないが…。とにかく、今はここから脱出しよう。 |
| 鎖を切るからじっとしていてくれ。 |
セフィロス | (この翼、そして普通の人間にはない力) |
| (では、この男が……) |
アンジール | (魔晄色の瞳。猫を思わせる独特の瞳孔…。どう見てもセフィロスだ) |
| なあ…。お前は、本当にセフィロスじゃないのか? |
セフィロス | セフィロスでなければ、助ける気は無い…と? |
アンジール | そうは言ってない。――さあ、行こう。 |
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【水城】 |
| ザックス | 侯爵…! |
クラウド | 侯爵、よくご無事で…! |
セフィロス | お前たちも来ていたのか。城の警備はどうした? |
ザックス | 侯爵の救出を優先せよと、重臣に命じられましたので… |
セフィロス | …そうか。世話をかけたな。 |
| アンジールとやら。お前にも、礼を言う。 |
アンジール | 礼には及ばないさ。ただ出来れば…間諜の疑いは解いて欲しい。 |
セフィロス | 考えておこう… |
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【ランベリー城】 |
| 兵士 | 隊長、大変です!地下牢の囚人が逃げました! |
ザックス | なんだって? |
アンジール | ジェネシス…。早まった事を…… |
セフィロス | すぐに追っ手を差し向けろ。 |
ザックス | はっ!アンジールの処遇は、どういたしますか? |
セフィロス | 嫌疑が晴れるまでは、地下牢に繋いでおけ。 |
アンジール | またあのじめじめした洞窟に逆戻りか… |
ザックス | 悪く思わないでくれ、アンジール。侯爵には、領主としてのお立場がある。 |
アンジール | …判ってるさ。 |
| (それにしてもジェネシスの奴。記憶も無いのにどこに行く積りだ…?) |
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【市場】 |
| ジェネシス | このイヤリングを、金に替えたいんだが… |
商人 | この辺じゃ見かけない服装だな。あんた、どこから来たんだね? |
ジェネシス | ……西のほうだ。 |
商人 | 西って、ゼルテニアかい? |
ジェネシス | ああ…。それより、いくらで買ってくれるんだ? |
商人 | (これはかなりの高級品だな…)こんな安物じゃね。100ギルがいいとこだな。 |
ジェネシス | 安物なんかじゃない。これは――。まあ、良い。急いでいるんだ。 |
商人 | はいよ、100ギル。(何やらいわくありげだな…) |
| どうだい、兄ちゃん。うちには良い武器も揃ってるんだが。 |
ジェネシス | …その剣を、見せてもらおう。 |
商人 | 目が高いねえ。これはレイピアって言って―― |
ジェネシス | 判っている。それをもらおう。 |
商人 | 悪いけどこれは、200ギルだ。イヤリング1個じゃ、足りないね。 |
ジェネシス | …判った。もう片方も売ろう。 |
| (足元を見やがって…。だが武器さえあれば、後は何とかなる……) |
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【地下牢】 |
| クラウド | 食事だ。今日は、スープもある。 |
アンジール | おお、悪いな。ところで…侯爵は、どうやって領主になったんだ? |
クラウド | …侯爵を救出してくれた事は感謝しているが、 |
| 俺はザックスと違って、まだあんたを信用した訳じゃない。 |
アンジール | 判ってる。お前の立場だったら、それが普通の反応だろうな。 |
| だが、秘密でない事なら答えてくれても良いだろう? |
クラウド | …50年戦争で父君が亡くなって、爵位と領地を継承なさった。 |
アンジール | (じゃあ…この世界の生まれなのか……) |
| お前も50年戦争で親を喪って、ザックスと一緒に育ったんだよな? |
クラウド | ああ…。教会で、修道女に育ててもらったんだ。 |
アンジール | 両親が亡くなった時、いくつだったんだ? |
クラウド | 俺が3歳で、ザックスは5歳だった。 |
アンジール | (どうやらザックスも、この世界の生まれって事になるようだ) |
| (だったらあいつは、俺の知っているザックスじゃないのか……) |
クラウド | ………。 |
アンジール | どうした? |
クラウド | あんたはセフィロスは英雄で、あんたの友人だって言ってたけど… |
| それが、全てなのか? |
アンジール | どういう意味だ? |
クラウド | 俺は…セフィロスって名を、どこかで聞いたような気がするんだ。 |
| そしてその名前を聞くと、何だか不安になる…… |
アンジール | セフィロスが、怖いのか? |
クラウド | …怖いんじゃない。憎しみでもないと思う。ただ…不安なんだ。 |
アンジール | 俺の知ってるセフィロスは、良い奴だ。 |
| 余り人に心を開かず、感情を表に出さない面もあるが、信頼できる。 |
クラウド | ……。 |
アンジール | だが…ソルジャーも軍人である事に変わりは無いからな。 |
| 味方にとっては英雄だが、敵からは死神のように恐れられていた。 |
クラウド | …侯爵も慈悲深くて立派な方なのに、敵は「銀髪鬼」って呼んでる。 |
アンジール | (俺はこの少年を知らないが、セフィロスと何らかの繋がりがあるのか…?) |
| 侯爵の事、もっと話してくれないか? |
クラウド | これ以上は駄目だ。それに、もう戻らないと。 |
アンジール | 侯爵は今、どこにいるんだ? |
クラウド | …この時間なら、礼拝堂だろう。あの方は、敬虔なグレバドス信者だから。 |
アンジール | それが、この世界の宗教なのか? |
クラウド | ああ…。高僧グレバドスによって広められた教えで、女神ジェノバを祀っている。 |
アンジール | ジェノバ?ジェノバだと…!? |