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【暗闇】 |
| …代種の能力を持つ人間を… |
| …ロジェクトG… |
| ……失敗…… |
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【ランべりー城】 |
アンジール | くっ…う…… |
| ここは……? |
ジェネシス | うっ…… |
アンジール | ジェネシス…?おい、大丈夫か、ジェネシス? |
ジェネシス | アンジール……? |
| ここは……?俺達は、どうしてこんな所にいるんだ? |
アンジール | 俺にも判らん。気がついたら、ここに…… |
ジェネシス | 城…のようだな。少なくとも__ |
アンジール | どうした、ジェネシス? |
ジェネシス | …俺達が今までいた場所とは違うと言いたかったんだが、 |
| それがどこなのか、判らない… |
アンジール | ……なんて事だ。俺にも判らん。一体……俺達はどうなってしまったんだ? |
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ザックス | 怪しい奴、そこで何をしている? |
アンジール | ザックス…!お前もここに来ていたのか? |
ザックス | おっさん、何者だ?どうして俺の名を知っている? |
アンジール | 俺が判らないのか?お前はザックスだろう? |
ザックス | 俺は確かにザックス。この白亜城の警備隊長だ。 |
アンジール | 白亜城…? |
ザックス | 正式には、ランベリー城だけどな。その美しい外観から、みんな白亜城って呼ぶ。 |
クラウド | 隊長!何事ですか? |
ザックス | 侵入者を見つけた。武装はしていないようだ。 |
アンジール | ちょっと待ってくれ。俺達は、怪しい者じゃない。 |
ザックス | だったら何で俺と同じ制服を着てるんだ?敵の間諜に違いない。 |
アンジール | この制服…?これは……俺は一体―― |
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セフィロス | 何事だ、騒々しい。 |
ジェネシス | セフィロス…! |
セフィロス | (セフィロス…だと?何故、この者がその名を…?) |
ザックス | 侵入者を発見いたしました。ただちに捕縛します。 |
アンジール | 待ってくれ、セフィロス。お前はセフィロスだろう? |
セフィロス | 聞き覚えの無い名だ。増してや、お前たちに見覚えは無い。 |
ジェネシス | 俺達の事が判らないのか…? |
ザックス | この方はランベリー領主、エルムドア侯爵だ。無礼は慎め。 |
アンジール | 領主…?侯爵だと……? |
セフィロス | 捕縛して地下牢に繋いでおけ。 |
ザックス | はっ!拷問官を差し向けますか? |
セフィロス | ……いや。後で私が直々に取り調べる。 |
ザックス | かしこまりました! |
| さあ、おっさん達。大人しくしてもらおうか? |
ジェネシス | どうする…?こっちは武器も何も無いぞ。 |
アンジール | 素手でも戦える自信はあるが、逃げ道も判らないんじゃな…… |
ザックス | 何をブツブツ言ってるんだ?抵抗するなら容赦はしないぞ。 |
アンジール | ……判った。 |
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【地下牢】 |
| ジェネシス | こんな洞窟が牢なのか。一体、どうなってるんだ、この世界は。 |
アンジール | 俺達が今までいたのとは、全く違う世界らしいな。 |
| それより問題は、元の世界の記憶が無いって事か… |
ジェネシス | だがお前は、戦える自信があると言っていたな。それにその制服。 |
アンジール | ああ…。俺は兵士なのかも知れん。お前は見たところ、兵士タイプじゃ無いな。 |
ジェネシス | まあ…な。 |
アンジール | とにかく、何とかして記憶を取り戻すのが先決だな。 |
| でないと牢から出られても、行く当ても判らん。 |
ジェネシス | そうだな… |
| (俺はこの男の、この男は俺の名を知っている。だが味方だとは限らない) |
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クラウド | 食事だ。 |
ジェネシス | 何時間も閉じ込めて、やっと食事か?しかもパンと水だけだと? |
クラウド | 囚人のくせに、贅沢を言うな。 |
ジェネシス | 俺達は何も悪い事はしていない。不当逮捕だ。 |
アンジール | よせ、ジェネシス。この世界は、俺達の世界とは価値観が違うようだ。 |
| それに、その少年に文句を言っても仕方ないだろう。 |
クラウド | …………。もしかして、あんた達、貴族なのか? |
アンジール | 貴族?何故? |
クラウド | 食事がパンと水だけなんて、平民なら当たり前だから… |
ジェネシス | …何だか知らないが、随分、住み難そうな世界だな。 |
クラウド | イヴァリースを侮辱する気か?やっぱり、敵の間諜なんだな。 |
ザックス | クラウド。何、やってんだ? |
クラウド | ザック――済みません、隊長。囚人に食事を運んできたのですが… |
ザックス | もうじき、侯爵が尋問に来られる。それまでに食事は済ませておけ。 |
アンジール | ああ…。判った。 |
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セフィロス | お前たちは暫く席を外せ。 |
ザックス | ですが、護衛も無しに危険では…? |
セフィロス | 私も騎士だ。 |
ザックス | 失礼致しました… |
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セフィロス | お前たちが何者なのか、正直に話してもらおう。 |
アンジール | 俺はアンジール。こっちはジェネシス。今のところ、判っているのはそれだけだ。 |
セフィロス | 今のところ…?どういう意味だ。 |
アンジール | どうやら一種の記憶喪失らしい。名前以外、ほとんど何も覚えていない。 |
ジェネシス | 俺達の事より、あんたは本当にセフィロスじゃないのか? |
セフィロス | その名……。何故、お前たちが知っている? |
アンジール | 俺達の友人だから―― |
| --トレーニングルームでの回想 |
アンジール | いや、セフィロスの名を知らない者なんていない。 |
| あいつは神羅の英雄で、最強のソルジャーだ。 |
セフィロス | ソルジャー?お前たちの友人のセフィロスとやらは、兵士なのか。 |
| (では、あの事とは無関係か…) |
ジェネシス | アンジール。今、お前が言った事は…? |
アンジール | ああ…。少しずつ、思い出してきた。俺もお前もソルジャーだ。 |
セフィロス | ではお前たちは、オルダリーアの兵士か? |
アンジール | いや、俺達は……ミッド…ミッドガルという所から来た。こことは全く異なる世界だ。 |
| 貴族も領主もいない。みんなが平等に暮らしている世界だ。 |
セフィロス | 貴族階級を批判する暴徒、骸旅団の同類か。 |
アンジール | そうじゃない。俺達はただ―― |
セフィロス | 尋問は、以上だ。 |
アンジール | 待ってくれ、セフィロス!セフィロス…! |
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ザックス | 尋問は終わったみたいだな。 |
ジェネシス | 俺達は、どうなるんだ? |
ザックス | さあな。侯爵がお決めになる事だ。 |
ジェネシス | この世界の中世的な雰囲気だと、最悪、死刑もありそうだな… |
ザックス | まあ…侯爵がそうお決めになれば、死刑もありうるな。 |
アンジール | 馬鹿な…。一体、俺達がどんな罪を犯したって言うんだ? |
ザックス | 敵の間諜。 |
アンジール | それは誤解だ。俺達は記憶を失って、気がついたらさっきの場所にいたんだ。 |
| 頼む、ザックス。信じてくれ。 |
ザックス | そう言われても……。個人的には、おっさんは悪いヤツには思えないけどな… |
クラウド | 駄目だよ、ザックス。囚人に気を許しちゃ。 |
ザックス | 判ってるって。それにおっさんは良くても、赤毛の方は信用なんねえ。 |
ジェネシス | 俺は赤毛じゃない。赤みがかったブルネットだ。 |
アンジール | どうでも良いが…俺もおっさんじゃない。これでも20代だ。 |
ザックス | 20代?マジで!? |
アンジール | 記憶が曖昧だから、確かに…とは言えないが… |
ザックス | おっさんが本当に20代なら、うちの侯爵とちょうど逆だな。 |
アンジール | 逆とは、どういう意味だ? |
ザックス | うちの侯爵は、若く見えるけど40過ぎてるんだ。 |
ジェネシス | まさか。どう見ても20代だったぞ。 |
ザックス | 領主になって30年以上、経ってるし、20年前から外見が変わらないって話だ。 |
クラウド | ザックス…。敵の間諜かも知れない相手に…… |
ザックス | 別にこんなの秘密でも何でもないし。 |
アンジール | ……お前たち、さっきと随分、態度が違うな。 |
ザックス | そりゃ、侯爵の前ではそれらしくしてないとな。一応、警備隊長だし。 |
| つっても、近衛騎士団に比べたら、城の警備なんてただの飾りみたいなもんだ。 |
クラウド | そんな事、言っちゃ駄目だよ、ザックス。戦になれば、城の警備だって重要な―― |
ザックス | 戦になれば、城の警備は騎士団が担当する。そうなったら俺達は、雑用係だ。 |
アンジール | ザックス、夢を持て。 |
ザックス | ……はあ? |
アンジール | 英雄になりたければ、夢を持て。そして誇りも。 |
| どうやらこの世界は身分制度が厳しそうだが、 |
| 警備兵として認められれば、いつかは騎士になれるんじゃないのか? |
ザックス | …確かにエルムドア侯爵は、生まれでなく実力で評価してくれる。 |
| 孤児だった俺を、警備隊長に取り立ててくれたもんな。 |
アンジール | お前…孤児なのか? |
ザックス | ああ。50年戦争で、両親を喪った。クラウドも同じだ。 |
| だから俺達は、兄弟みたいにして一緒に育ったんだ。 |
クラウド | 侯爵が敬虔なグレバドス信者であるお陰で、教会が孤児の面倒を見てくれるんだ。 |
| エルムドア侯爵みたいに、強くて信心深くて立派な方は、他にいない。 |
ジェネシス | そんなに強いのか? |
クラウド | 侯爵は50年戦争の英雄で、白銀の甲冑を纏い、銀色の髪を靡かせて戦う姿から、 |
| 「銀の貴公子」と呼ばれている。 |
アンジール | ますますセフィロスっぽいな… |
ジェネシス | ああ…。それに、あんな男が他人の空似で何人もいる筈が無い。 |
ザックス | おっさん達がさっきから言ってるセフィロスって、誰? |
アンジール | 俺達の友人で、英雄だ。エルムドア侯爵に瓜二つなんだ。 |
ザックス | そんな作り話をして侯爵に取り入ろうとしても無駄だぞ? |
アンジール | 作り話なんかじゃない。本当の事だ。俺達は、こことは別の世界から来たんだ。 |
ザックス | 別の世界って、まるでエアリスの―― |
クラウド | ザックス。その話は他の誰にも言わないって約束だろう? |
ザックス | …判ってる。話は終わりだ、おっさん達。 |
アンジール | アンジールだ。こっちはジェネシス。 |
ザックス | それじゃ、アンジール。処分が決まるまで、大人しくしててくれ。 |
ジェネシス | 無実の罪で処刑されるのを大人しく待てと…? |
ザックス | 少なくとも、罪は犯してる。城内に勝手に侵入した。 |
ジェネシス | そんな程度で死刑もありうるなんて、横暴だ。 |
ザックス | 侯爵は無慈悲な方じゃないさ。だけど牢を破ろうとしたら、俺達が絶対に止める。 |
| たとえ、あんた達を殺してでも、だ。だから…… |
アンジール | …判った。大人しく処分を待とう。 |
ザックス | そうしてくれ。俺は、あんたを殺したくない。 |
アンジール | ザックス…? |
ザックス | さっきの…夢を持てってヤツ。戦が終わって手柄を立てる機会が無くなって、 |
| もう一生、このまんまかなってちょっと投げやりになってたからさ。 |
クラウド | 戦が起きると苦しむのは平民だから…戦そのものは無い方が良いんだけどね。 |
| だけど戦で手柄を立てでもしなけりゃ、平民は永遠に這い上がれない… |
アンジール | どんな状況でも、夢と誇りを失うな。 |
ザックス | ……ああ。やってみる。 |
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ジェネシス | 俺達…これからどうなるんだ? |
アンジール | 暫くは、様子見だろう。記憶が戻らない事には、動きようも無い。 |
ジェネシス | だが、最悪、死刑だぞ? |
アンジール | ……セフィロス、いやエルムドア侯爵は、残酷な人間では無さそうだ。 |
| 今は、それに、賭けるしか無いだろう。 |
ジェネシス | (敵か味方か判らない相手と一緒に牢で一夜を過ごすなんて最悪だ) |
| (そもそも、この男は本当に記憶を失っているのか…?) |
アンジール | どうした、ジェネシス? |
ジェネシス | いや……こんな場所で眠るのは不愉快じゃないか? |
アンジール | お前には、そうかもな。俺は別に平気だ。 |
ジェネシス | ……そうか。 |
アンジール | 不愉快でも、とにかく寝よう。体力をつけとかないと、いざって時に動けないぞ? |
ジェネシス | 判っている…。 |