逢魔刻-imitation-




「兄さん…!」
振り向いたアイツのそれまでに見た事の無い表情に、駆け寄ろうとしていたオレの足は凍りついたように止まった。
形のよい眉は苦しげに顰められ、夜闇を思わせる瞳が潤んで見えた。
「兄さん、どうして……」
そのあとの言葉は胸につかえたかのようで、オレはただアイツが何か言ってくれるのを待った。



永遠に続くかに思えた不安を断ち切ったのは、アイツが幽かに浮かべた笑顔だ。
「帰ろう、サスケ」
言ってアイツが差し伸べた手を、オレはしっかりと握り締めた。
いつもの感触と、いつもの温もり。
しなやかに印を組み、魔法のように手裏剣を扱うアイツの手が、オレは好きだった。
いつかああなりたいと、憧れていた。
優しく頭を撫でられる時は勿論、軽く額をこづかれる時でさえ、幼いオレは、嬉しかったのだ。






『一人でうちはのアジトに来い。そこで決着をつけさせてやる』


何故、今、こんな時にあの時の事を思い出したのかは判らない。
どうしてあの時にアイツが泣いていたのか__本当に泣いていたのかどうかも定かで無いが__その理由はもう、永遠に判らないだろう。
それにそんな理由など、知る必要も無い。
今のオレに必要なのは憎しみだけだ。


ただ……


どうしたら脳裏からあの時のアイツの姿が消えてくれるのか。
それだけが、オレは知りたい。
















後書き
イタチさんに呼び出されたサスケがうちはのアジトに向かう途中、夕陽を見て幼い頃の情景を思い出す…という設定です。
本誌の展開がアレですので、毎週、イタチさんの身と、兄弟の行く末が心配でなりません……(>_<)
ハッピーエンドは無理でしょうが、せめて少しでも救いのある結末になる事を望むばかりです。
ちなみにタイトルは二つ名メーカーで作られた「うちはサスケ」の二つ名です(^^ゞ

ここまで読んで下さって、有難うございましたm(__)m

BISMARC



back