著・前田みや
雑記帳






逆位置 〜悪魔の微笑み




 <クオンタム>の不気味な管理プログラム・クエーサー、彼の何よりの武器はその微笑だった。クエーサー曰くの『ラブリーチャーミーなスウィートエンジェル』の前となると、その威力は増大する。
 というわけで。
「駄目だっ!」
 ここにもその微笑に負けた哀れなオラトリオが一匹いたりする。
 オラトリオもクエーサーの危険性は重々承知している。だが、いままではそこまで脅威を感じていなかった。しょせん、クエーサーは電脳空間から動けないプログラムの身、狙われているオラクルはオラクルで、人間の身で電脳空間ダイブなどという身体に負担がかかることは禁止されていた。
 だがしかし。
 オラクルはミラ&シリウスのロボットボディを持ってしまった。人間の時と違って、電脳空間も自由にいけるようになった。………しかもクエーサーの猫に騙されている………。みのるさんら女性陣の作る『オラクルを守る会(いつ名前がついたんだ)』も、クエーサーの攻撃に電脳空間封鎖を続けていられなくなってしまったことだし。
 もちろん、オラクルの守護者を自認しているオラトリオがそんな危険人物のいる<クオンタム>にオラクルを一人で行かせるわけはない、が!
「駄目だあぁぁぁぁ!!!」
 初めて見る妖怪爺のオラクル専用全開の笑みにしょっぱなからやっつけられて、硬直状態になってしまったのだった。
「駄目だ、俺! しっかり見るんだ、これに慣れないとオラクルの守護者なんてやってられないんだ!」
 さっきから叫び、喚きながらオラトリオがしているのはクエーサー対策のための秘密特訓。どれだけ不気味な気持ち悪い笑みでも慣れてしまえば平気になるはず。そう思って、どうやって手に入れたのかわからない『クエーサー微笑みCG』をじっと見つめて……見つめようとしているのだった。
 ちなみに『クエーサー微笑みCG』は肝試し用にシンクタンク=アトランダムの売店で売っている、はいいとして。オラトリオに与えられた部屋の壁一面に、微笑むクエーサー。いろんな角度、いろんな微笑、だけど全部オラクルに向けられた超!破壊兵器並みの微笑………。
 オラトリオは気持ちが悪くなった。
「だ、駄目だ。続きはまた明日……」
 ふらふらふらとオラトリオは部屋から転げ出る。休むためにあるはずの部屋なのに、不気味なCGのせいで、休む時にはかえって外に出なければいけないのはいったい。
「あ、オラトリオ♪」
 出た途端に可愛いオラクルに会って口直し(目直しか?)どころか目の保養をできたのは幸いだった。
「オラクル。どうしたんだ、暇だったらお茶でも……」
 言いかけたオラトリオは固まった。ドアはまだ全開。オラクルの位置からは部屋の様子が丸見えで………。
 何を思ったのか、オラクルがにっこり笑う。
「オラトリオ、もしかしてドクターのことが好きなの?」
 これだけCGを貼りまくれば、恋愛関係には超鈍感なオラクルでも簡単に察することができる。それが思いっきり誤解だったとしても。
「違っ…」
 オラトリオの呻き声も耳に入らない様子で、オラクルはうきうきしていた。
「ドクター、いい人だもんね。頑張って、オラトリオ。私はオラトリオもドクターも大好きだから、2人のこと応援するね♪」
 私が役に立つことができる日が来るなんて……、オラクル、目をきらきらさせて、とっても嬉しそう……。
「だから、オラクル、違うんだ」
 必死に言い募るオラトリオにオラクルは理解の微笑を向けた。
「わかってるって。二人とも男同士だから悩んでるんでしょう? でも大丈夫! アトランダムにそんな偏見を持った人なんていないよ」
 そうだ、みのるさんたちにも教えて、皆で応援しよう〜♪ 楽しそうに行ってしまうオラクルに何よりの打撃を受け、オラトリオは廊下に倒れこんだ。


Fin.





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