(3)



イルカは幾分か驚き、暫く躊躇っていたがやがて決意して頷いた。
額宛を外し、髪を降ろす。
ベストを脱ぎ、アンダーを脱ぎ捨てた。
全てを脱いでから、カカシの服を脱がせた。
カカシの身体は痛々しいほどにやつれ果てていたが、身体を重ねると確かな温もりを感じる。
「…役に立たなかったらゴメーン、ね?」
「……あんたが俺に勃たなかった事なんか無いでしょう」
幾分か茶化して言ったカカシの言葉に、イルカは幽かに頬を赤らめ半ば拗ねるように言った。
カカシは笑い、指をイルカの身体に這わせた。
頬から首筋。鎖骨から胸の突起へ。
それから脇腹、更に下腹部へと、舐めるような優しい愛撫が続く。
ナルトの若く性急な愛撫に馴れたイルカには、それがひどくもどかしく感じられた。
「……カカシさん、俺が……」

少し躊躇ってから、イルカは言った。
そして身体の位置をずらし、カカシを口に含む。
初めてカカシにせがまれてそうした時の事を思い出し、身体が熱くなるのをイルカは感じた。
カカシはかつてのようにすぐには反応を示さなかったが、愛撫を繰り返すうちに確かな変化が感じられる。
暫く続けてから、イルカはカカシの上に馬乗りになった。

「いきなり入れたんじゃ、アナタが辛いでショ?」
「…でも…」
カカシの言葉に、イルカは戸惑った。
カカシが自分で動かせるのは右腕くらいのもので、ベッドに起き上がるのも一人では出来ない。
完全に不随となった左半身だけでなく、右半身もかなり不自由だ。
「俺は動けないから、俺の顔の上に座って」
「…!」
予想外の言葉にイルカは真っ赤になった。
もともとイルカはノーマルで、男に身体を開いたのはカカシが初めてだ。
付き合いが長くなるにつれ行為そのものには慣れたが、それでも大胆な行いには羞恥心を感じずにはいられない。
「俺はもう、アナタの全てを知っているんだから今更、恥ずかしがる事もないでショ?」
意地悪く笑って言うカカシの姿は2年前と少しも変わらない。
そう思うと嬉しくもあり、哀しくもある。
意を決して、イルカは言われるままにカカシの顔の両側に膝をついた。
カカシはイルカを口に咥え、舌で愛撫しながら指を後ろに這わせた。
イルカの身体がぴくりと振るえ、すぐに反応を示し始める。
ひとしきり中心を愛撫してから後孔に舌を這わせると、イルカが甘い吐息を漏らした。
その声が、カカシをさらにかき立てる。
「カカシさん……もう…」
「まだ早いでショ?」
「…焦らさないで……」
カカシが指を入れると、イルカがのけぞった。
イルカの中は熱く蕩けるようでカカシに吸い付いて締め付ける。
カカシが指の数を増やすと、イルカは半ば無意識の内に腰を振った。
「そろそろ良いかも…ね」
やがてそう言って、カカシはイルカを離した。
イルカは改めてカカシの上に乗り、身体を前後に激しく動かし始めた。
カカシを__その想いの全てを__自らの内に刻み付けるように。






数日後、カカシは死んだ。
イルカに看取られての最期だった。






「…イルカ先生。ごめんってばよ」
ひと月後。
イルカと共に慰霊碑を訪れたナルトは言った。
「カカシ先生の事、ずっと黙ってて」
「……あれで良かったんだ」
暫くの沈黙の後、イルカは言った。
「カカシさんが辛い時に側にいてあげられなかったのは悔やまれるが、あの人がゆっくり死んでいくのを目の当たりにしていたら……耐えられたかどうか判らない…」
「…カカシ先生はそう思って、イルカ先生の為に黙ってろって言ったんだってばよ。それなのに俺は、最後にどうしてもガマン出来なくなって話しちまった」
イルカはナルトを見た。
「イルカ先生は2年前、カカシ先生が『死んだ』って聞かされた時、すごく苦しんでた。その苦しみからやっと立ち直ったっていうのに実はカカシ先生が生きてたとか、だけどもうすぐ死んじゃうんだなんて知らせるのは、凄く残酷だったんじゃないかって」
「……俺は、あの人を一人で死なせてしまったと思ってたのが、何より心苦しかった。異国の地で、たった一人で孤独に死なせてしまった…と」
だから、と、イルカは笑顔を見せて続けた。
「知らせてくれて良かった。カカシさんも、きっと同じ気持ちだったと思う」
「……うん」
言って、ナルトも笑った。
二人は無言のまま慰霊碑を見つめ、同じ事を考えていた。
カカシの事は忘れない…と。
記憶はいつか風化し、全ての感情は淡い記憶になってしまうだろう。
だがそれでも、忘れはしない。
いつか自分の生が終わりを告げる、その時まで。









後書きのようなモノ
ももんがさん、20万ヒット、おめでとうございます〜♪
#いつの話だってのはおいといて(^^ゞ
もともと「最後の贈り物」はももんがさんの日記に萌を得て書いたものでしたので、最終話は是非ともももんがさんに捧げなくては…ということで押し付けさせて頂きました。
「最後の贈り物」はイル誕アップ、「階梯」はカカ誕アップでラストはナル誕アップの予定だったんですけど…ナルトの誕生日っていつでしたっけ?(と、白々しい事を言って誤魔化す;)
ともあれ、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。


BISMARC

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