【魔術師の館】 |
魔術師 | 危ないところだったな。 |
エアリス | お兄さん…!私を助けてくれたの…? |
魔術師 | 全く…世話の焼けるおてんば娘だ。 |
| いくら古代種だからと言って、人間一人で魔王の再来に太刀打ちできるとでも思ったのか? |
エアリス | 確かに私一人の力は限られているけど、でも、少しでも出来ることがあるならやらなくちゃ…。 |
| それより国王陛下は? |
| 『セフィロスが呼んでいる』って言葉を残して、私の目の前で消えてしまったんだけど…。 |
魔術師 | それが妖魔セフィロスを示すのならば、リユニオンの進行を意味するが、一旦、取り込まれかけた私が逃れられたと言う事は……。 |
エアリス | 一体…何が起きているの? |
魔術師 | 全てが終われば判る。 |
エアリス | 全てが…って、まさか……。 |
魔術師 | うろたえるな。騒ぎ立てたところで、宿命は変えられない。 |
| お前も、ここで全てを見守っていれば良い。 |
エアリス | ……。 |
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【王の間】 |
ザックス | クラウド、どうして…。それに、どうやってここへ? |
妖精 | 連れて来たのは俺だ。もっとも、クラウドだから連れて来る事が出来たとも言えるが。 |
ザックス | セフィ…!無事だったのか? |
妖精 | 危ないところだったが、何とか逃れた。 |
ザックス | でもリユニオンは…?それより、どういう事なんだか説明してくれ、クラウド。 |
クラウド | 15年前、俺はセフィロス王子に訊いたんだ。『もしも神さまみたいな力が手にはいったら、なにがしたい?』って。 |
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--15年前。王弟の部屋。 |
王弟 | この国と民を護る。だがそれは王族として当然の責務で、神のような力などなくても為すべき事だな。 |
| 本当に神のような力があれば、全ての国と全ての民を護れるのだろうな…。 |
| この国と民を護る為とは言え、戦で他の国の民を傷つけるのは本意では無い。 |
クラウド | ほんいではない…って? |
王弟 | そんな事は望んでいないという意味だ。 |
| 俺が望むのは、全ての国の平和と、全ての民の幸福だ。 |
クラウド | みんなが、しあわせになれるってこと? |
王弟 | そうだ。俺が神に等しい力を手に入れたなら、その為に尽力する。 |
| それに、兄上の病を癒す。一緒に行きたい場所があるが、今の兄上の身体では遠出は無理だ。 |
クラウド | じゃあぼく、おにいさんに天使をあげる。 |
王弟 | …天使? |
クラウド | つばさが一つだけの、天使をあげる……。 |
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クラウド | セフィロス王子は15年前の約束を覚えていると言った。覚えているのは、あの時の心を失っていないからだ。 |
| だから俺は信じたんだ。セフィロス王子が継承したセフィラの力が解放されたら、復活するのは闇のセフィロスではなく、光のセフィロスなのだ…と。 |
ザックス | だけど、セフィラっていうのは闇のセフィロスである魔王が自分の力を封印したものじゃ無いのか? |
妖精 | 闇のセフィロスと光のセフィロスは元々、一つの存在だったと話しただろう? |
ザックス | ああ。元々は神様の一部なんだよな? |
妖精 | そうだ。だから人間に魔王と呼ばれた存在も英雄と呼ばれた者も、共にセフィロト、すなわち神性の顕現である事に変わりは無い。 |
ザックス | …もうちょっと判り易く言うと? |
妖精 | 神は完全な存在だから、その一部であっても完全なんだ。それが更に光と闇に分かれても、その完全性は失われない。 |
| つまり、セフィラは闇の力であると同時に光の力も内包しているんだ。 |
ザックス | 何となく判ったけど…。じゃあ、クラウドがセフィロス王子を殺したのは、光のセフィロスの力を復活させて妖魔に対抗する為だったのか? |
クラウド | そうだ。峻厳のセフィラの継承者である妖魔セフィロスに対抗する力を持つ者は、慈悲のセフィラの継承者である王弟セフィロスしかいないんだ。 |
ザックス | だったら、何であの時、俺にあんな事を言ったんだ? |
クラウド | 妖魔は俺を監視しているから…。心まで読まれているのだったら芝居をしても無駄だけど、そこは賭けだった。 |
ザックス | ……少なくとも俺は、完全に騙された。 |
クラウド | 悪かった…。 |
ザックス | 嫌…俺の方こそ。お前を信じるって言ったのに……。 |
| それより、リユニオンは? |
妖精 | どうやら妖魔と王弟――と言うより、闇のセフィロスと光のセフィロスの戦いが始まったようだ。 |
| それでリユニオンが中断されて、俺は解放されたんだ。 |
ザックス | セフィロス王子が妖魔と戦ってるなら、加勢に行かないと。 |
妖精 | お前……いい加減、自分の力をわきまえたらどうだ? |
| 魔王レベルの戦いに人間が首を突っ込んでも、足手まといにしかならないぞ。 |
ザックス | でも、さっきの奴は倒せたじゃないか。あいつは妖魔の仲間なんだろう? |
妖精 | 仲間では無く、眷属だ。主と眷属とでは、その力は比べ物にならない程に違う。 |
ザックス | だったら……せめて応援するとか…。 |
クラウド | …俺も戦いの様子は気になる…。 |
妖精 | 仕方ないな……。ここから様子を見られるようにしてやる。 |
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--神殿。妖魔と王弟が戦い、王弟が勝利する。 |
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妖魔 | 何故だ…?お前と私の力は完全に拮抗している筈だ。 |
王弟 | 兄上が力を貸してくれた。 |
妖魔 | あの者が継承したセフィラなど、覚醒したところで取るに足らない力しか無い筈なのに……。 |
王弟 | 2000年前にも、お前は白魔術師たちの力を『取るに足りない』と見下していたな。 |
妖魔 | ……良かろう。敗北は認める。だが何故、邪魔をするのだ? |
| 私はただ、失われた秩序を取り戻してこの世を静寂と安寧とで満たしたいだけだ。 |
王弟 | その為にお前が犠牲にしようとしているもの。 |
| お前が『取るに足りない』と切り捨てた者たちが、俺に取っては護るべき大切な存在だからだ。 |
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【宿】 |
エアリス | 皆が無事で、本当に良かった。 |
ザックス | エアリスを助ける役割は、俺がやりたかったのに…。 |
エアリス | ザックスが私を助けようと色々、頑張ってくれた話は、お兄さんから聞いてる。 |
ザックス | ……え?あいつ、意外と良い奴だったんだな。 |
妖精 | (単純な奴だ…) |
ザックス | それにしても、色々あったよな…。 |
| ユフィはミッドガルとウータイの和平条約を締結させてウータイに帰ったし、クラウドはニブルヘイムに…。 |
エアリス | …帰ったら、ティファに全部、話すのかな。 |
| 全てをありのままに話すのが本当に良い事なのかどうなのか、私には判らない…。 |
ザックス | 俺にも判らないけど…でもきっと、クラウドなら大丈夫だ。 |
| 皆を生き返らせて全てを無かった事にするっていう妖魔の誘惑にも打ち勝ったんだし。 |
エアリス | …そうだね。それにティファも、きっと強い心を持った人なんだと思う。 |
| 皆が嘘つきだって言ってたクラウドを、一人で信じ続けたんだもの。 |
ザックス | ああ。きっとそうだな。 |
| それにしても…クラウドって結局、何者だったんだ? |
| 4歳の時にセフィロス王子と会ったとか、タダ者じゃなさそうなんだけど。 |
エアリス | クラウドは、11番目のセフィラの継承者だったんだよ。 |
ザックス | 11番目?10のセフィラが集まってセフィロトの樹になるんじゃ無かったのか? |
妖精 | 11番目のセフィラは『隠れた叡智』のセフィラと呼ばれ、セフィロトの樹には含まれない。 |
| クラウドは魔王の力の継承者では無いが、リユニオンの成就に不可欠な知識の継承者なんだ。 |
ザックス | だから色々な事を知ってたのか…。 |
| それより、死んだ筈のセフィロス王子が王宮に戻ってるのはどういう事なんだ? |
| それに、リユニオンは結局、どうなったんだ? |
妖精 | セフィロトの樹は別名、生命の樹と呼ばれていて、不死の象徴だ。 |
| 王弟は生身の身体を捨てて一度は死んだが、セフィラを覚醒させて再生した。 |
| 但し、覚醒させたのは元々自分が継承していた慈悲のセフィラの力だけで、他の継承者から力を奪うことはしなかった。 |
ザックス | …欲が無いんだな。 |
エアリス | 王弟殿下は慈悲のセフィラの継承者だから、言い換えれば神様の慈悲の権化なんだよ。 |
ザックス | だから他の継承者を死なせる事になっちまうリユニオンを避けたのか…。 |
| だけど、妖魔との戦いの時、『兄上が力を貸してくれた』って…。
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妖精 | それは恐らく最後の手段だったのだろう。兄王のセフィラを覚醒させてその力を奪えば、兄を殺すことになるからな。
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エアリス | 王弟殿下は、皆を護る為であっても、兄上を犠牲にはしたくなかった。
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| そしてその気持ちが、妖魔との戦いに勝つ力になったんだと思う。
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ザックス | …そうだったんだ。
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| 王様が前より元気になって自ら閣議を行うようになったのも、慈悲のセフィラのお陰なのか? |
エアリス | それもあるし、今まで陛下のご病状を悪化させていた闇の力が消えたからでもある。 |
| 一時はどうなる事かと思ったけど、国中の皆もとても喜んでるし。 |
謎の男 | 全てが丸く収まった所で、俺との約束を果たしてもらおうか。 |
ザックス | そうだったな。武器を買うのに大分、使い込んじまったから、まとまった金額を稼ぐまでちょっと待ってくれれば―― |
謎の男 | 誰が金が欲しいと言った?俺の望みを一つ、叶えるというのが約束の筈だ。 |
ザックス | 勿論、覚えてるけど…。金でなければ、何をすれば良いんだ? |
謎の男 | お前が気に入ったんだ。俺の騎士になれ。 |
ザックス | …は?騎士にって……。 |
| 思い出した…!アイシクルのセフィロスって、新しい王の名前じゃないか…! |
妖精 | ……お前、本名を聞いた時点で気づかなかったのか? |
ザックス | ……全然。だってまさか、王様が自らこんな所を出歩いてるなんて思わないから……。 |
謎の男 | 王と言っても元は傭兵の成り上がり者だからな。王城の奥で偉そうにしているのは性に合わない。 |
ザックス | それにしても、どうしてミッドガルに…? |
謎の男 | ユフィと同じで、この国の内情を探りに来た。 |
| アイシクルの金鉱を狙う国々は戦で勝って抑えたが、ミッドガルだけは、攻めて来られたら勝てる気がしないんでな。 |
| それで?俺の騎士になるか、ザックス? |
ザックス | 約束は約束だし、騎士になれるんだったら願ったり叶ったりだけど、アイシクルに行っちまったら、エアリスに会えなくなる……。 |
エアリス | ザックス……。 |
謎の男 | 目標どおり英雄になって、それから迎えに来れば良いだろう? |
妖精 | 俺は反対だぞ。『エアリスの事をお願い』ってイファルナに頼まれてるのに、アイシクルに行かせるなんて…。 |
謎の男 | だったらお前も来るか?アイシクルも、中々良い所だぞ。 |
妖精 | そういう問題じゃない…! |
ザックス | ……待っててくれなんて言わないけど、でも…少しだけ考えてみてくれないか? |
エアリス | ……うん。考えておく。 |
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【桜の咲く湖畔】 |
王 | 美しい景色だな…。 |
王弟 | そうだろう?俺がこの国で、一番、好きな場所だ。 |
王 | …私は今まで王宮に篭りきりで、自分の国にこんな場所があるのも知らなかった…。 |
王弟 | これから知っていけば良い。体調がもっと良くなったら、もっと多くの場所に案内する。 |
王 | ……矢張り、私はお前に位を譲るべきだと思う。 |
| 妖魔に唆されて無実のお前を牢に入れ、この国を内乱の危機に晒した罪は重い…。 |
王弟 | そう思うなら、退位などせずに責任を取ってくれ。 |
| 私腹を肥やす事しか関心の無い貴族たちに代わって新しく有能な家臣を登用し、妖魔のせいで弱体化した騎士団を建て直す。 |
| 他にも、やるべき事はたくさんある。 |
| それに俺はもっと多くの国々を見て回りたいから、今後はミッドガルを留守にする事も多くなる。 |
王 | …お前はもう、人ではなくなってしまったのだったな…。 |
王弟 | 不安か?俺が手に入れた力は、古の魔王のものだ。 |
王 | 不安など、無い。お前は子供の頃から欲が無かった。 |
王弟 | それは誤解だ。俺は欲張りなんだ。この国と民を護るだけでは飽き足らない。 |
| 全ての国の平和と全ての民の安寧。それを実現させる為に、俺は力を覚醒させた。 |
| ほんの数十年しか生きられないのでは、不十分なんだ。 |
王 | ……不思議なものだな。 |
| お前はもう、神にも等しい存在なのに、こうして話していると、以前と少しも変わらない。 |
王弟 | 変わらないさ。 |
| ただ、勝手に城を抜け出して家臣を慌てさせていた頃に戻るだけだ。 |
王 | …そうだな。あの頃から、お前には翼があったのだ。 |
| 自由に天翔ける翼が。 |
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エアリス | あそこにいらっしゃるの、国王陛下と王弟殿下じゃない? |
魔術師 | そんな事より…私をこんな所に呼び出して、何の用だ? |
エアリス | …お兄さんが生まれた時、子供が歩けるくらいに大きくなったら3人でここに来ようって、お父さんとお兄さんのお母さんは約束したんだって。 |
| でも、その約束は果たせなかった。だからせめて、ここの景色だけでもお兄さんに見せたくて…。 |
魔術師 | …下らない。私は景色になど興味は無い。 |
エアリス | でも…お兄さんのお母さんもここを気に入ったから、3人で来ようって約束したんじゃないかな。 |
魔術師 | まさか…。妖魔がこんな明るい場所を気に入る筈が無いだろう? |
| それより、あの男はもう死んだのに、どうしていつまでも私に関わろうとするのだ? |
エアリス | 私、元々お兄さんが欲しかったんだ。だから私にお兄さんがいるってお父さんに聞かされた時、すごく嬉しかった。 |
魔術師 | ……それが、妖魔の血を引く者でも…か? |
エアリス | そんなの関係ない。だって、お兄さんはお兄さんだもの。 |
魔術師 | …お前がどう思おうと勝手だが、これ以上、私を煩わすのは止めてくれ。 |
エアリス | ……うん。じゃあ、今度、うちで焼いたパイを持って遊びに行くね。 |
魔術師 | 何を言っているのだ?私は煩わせないでくれと―― |
エアリス | もしもお兄さんが本当に私に会いたくないなら、魔物をけしかけて追い返す筈でしょう? |
| でも今まで、一度もそんな事は無かった。 |
| それにあの時、妖魔から私を助けてくれたし。 |
魔術師 | ……思い上がるな。 |
| 母は気まぐれな女だった。私にもその血が流れている。 |
| それだけの事だ。 |
エアリス | …判ってる。それで、リンゴと胡桃、どっちのパイが良い? |
魔術師 | ……全く、お前は……。 |
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【ニブルヘイム】 |
ティファ | クラウド…!帰って来たんだね? |
クラウド | ティファに話さなければならない事がたくさん、あるんだ。 |
| 何から話したら良いのか判らないけれど……。 |
ティファ | ……。 |
クラウド | 15年前…それに5年前も、俺を信じてくれて、ありがとう。 |
| ティファが俺を信じてくれたお陰で、とても救われた。 |
ティファ | ……もう良い。 |
クラウド | …え? |
ティファ | 聞きたかったのは、その言葉だけ。だから、他の事はもう良いの。 |
クラウド | ティファ……。 |
ティファ | 皆にも会いに行こう? |
クラウド | …ティファには全てを話さなければと思ったから戻って来たけど、帰って来た訳じゃないんだ。 |
| あれだけの事をしてしまったんだし、ここにいる資格は、俺には……。 |
ティファ | 何、言ってるの?クラウドは村を焼き払った犯人を捜す旅に出て、そしてその相手と戦って勝ったんでしょう? |
クラウド | ……皆はそう、思ってるけど、でもそれは―― |
ティファ | 戦って、勝ったんだよね?だってクラウド、昔みたいに暗い眼をしていないもの。 |
| だから、笑って皆に『ただいま』って言えば良いんだよ。 |
クラウド | ……ティファは、全部お見通しなんだな。 |
ティファ | だってクラウドは、家族より身近な存在だから。 |
| さ、行こう。行って、みんなに会おう。 |
クラウド | …うん。でも誰よりも先に。 |
| ただいま、ティファ。 |
ティファ | お帰り、クラウド。 |
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