Sephiroth -セフィロト-

(30)



【魔術師の館】
魔術師危ないところだったな。
エアリスお兄さん…!私を助けてくれたの…?
魔術師全く…世話の焼けるおてんば娘だ。
いくら古代種だからと言って、人間一人で魔王の再来に太刀打ちできるとでも思ったのか?
エアリス確かに私一人の力は限られているけど、でも、少しでも出来ることがあるならやらなくちゃ…。
それより国王陛下は?
『セフィロスが呼んでいる』って言葉を残して、私の目の前で消えてしまったんだけど…。
魔術師それが妖魔セフィロスを示すのならば、リユニオンの進行を意味するが、一旦、取り込まれかけた私が逃れられたと言う事は……。
エアリス一体…何が起きているの?
魔術師全てが終われば判る。
エアリス全てが…って、まさか……。
魔術師うろたえるな。騒ぎ立てたところで、宿命は変えられない。
お前も、ここで全てを見守っていれば良い。
エアリス……。
 
 
【王の間】
ザックスクラウド、どうして…。それに、どうやってここへ?
妖精連れて来たのは俺だ。もっとも、クラウドだから連れて来る事が出来たとも言えるが。
ザックスセフィ…!無事だったのか?
妖精危ないところだったが、何とか逃れた。
ザックスでもリユニオンは…?それより、どういう事なんだか説明してくれ、クラウド。
クラウド15年前、俺はセフィロス王子に訊いたんだ。『もしも神さまみたいな力が手にはいったら、なにがしたい?』って。
 
--15年前。王弟の部屋。
王弟この国と民を護る。だがそれは王族として当然の責務で、神のような力などなくても為すべき事だな。
本当に神のような力があれば、全ての国と全ての民を護れるのだろうな…。
この国と民を護る為とは言え、戦で他の国の民を傷つけるのは本意では無い。
クラウドほんいではない…って?
王弟そんな事は望んでいないという意味だ。
俺が望むのは、全ての国の平和と、全ての民の幸福だ。
クラウドみんなが、しあわせになれるってこと?
王弟そうだ。俺が神に等しい力を手に入れたなら、その為に尽力する。
それに、兄上の病を癒す。一緒に行きたい場所があるが、今の兄上の身体では遠出は無理だ。
クラウドじゃあぼく、おにいさんに天使をあげる。
王弟…天使?
クラウドつばさが一つだけの、天使をあげる……。
 
クラウドセフィロス王子は15年前の約束を覚えていると言った。覚えているのは、あの時の心を失っていないからだ。
だから俺は信じたんだ。セフィロス王子が継承したセフィラの力が解放されたら、復活するのは闇のセフィロスではなく、光のセフィロスなのだ…と。
ザックスだけど、セフィラっていうのは闇のセフィロスである魔王が自分の力を封印したものじゃ無いのか?
妖精闇のセフィロスと光のセフィロスは元々、一つの存在だったと話しただろう?
ザックスああ。元々は神様の一部なんだよな?
妖精そうだ。だから人間に魔王と呼ばれた存在も英雄と呼ばれた者も、共にセフィロト、すなわち神性の顕現である事に変わりは無い。
ザックス…もうちょっと判り易く言うと?
妖精神は完全な存在だから、その一部であっても完全なんだ。それが更に光と闇に分かれても、その完全性は失われない。
つまり、セフィラは闇の力であると同時に光の力も内包しているんだ。
ザックス何となく判ったけど…。じゃあ、クラウドがセフィロス王子を殺したのは、光のセフィロスの力を復活させて妖魔に対抗する為だったのか?
クラウドそうだ。峻厳のセフィラの継承者である妖魔セフィロスに対抗する力を持つ者は、慈悲のセフィラの継承者である王弟セフィロスしかいないんだ。
ザックスだったら、何であの時、俺にあんな事を言ったんだ?
クラウド妖魔は俺を監視しているから…。心まで読まれているのだったら芝居をしても無駄だけど、そこは賭けだった。
ザックス……少なくとも俺は、完全に騙された。
クラウド悪かった…。
ザックス嫌…俺の方こそ。お前を信じるって言ったのに……。
それより、リユニオンは?
妖精どうやら妖魔と王弟――と言うより、闇のセフィロスと光のセフィロスの戦いが始まったようだ。
それでリユニオンが中断されて、俺は解放されたんだ。
ザックスセフィロス王子が妖魔と戦ってるなら、加勢に行かないと。
妖精お前……いい加減、自分の力をわきまえたらどうだ?
魔王レベルの戦いに人間が首を突っ込んでも、足手まといにしかならないぞ。
ザックスでも、さっきの奴は倒せたじゃないか。あいつは妖魔の仲間なんだろう?
妖精仲間では無く、眷属だ。主と眷属とでは、その力は比べ物にならない程に違う。
ザックスだったら……せめて応援するとか…。
クラウド…俺も戦いの様子は気になる…。
妖精仕方ないな……。ここから様子を見られるようにしてやる。
 
 
--神殿。妖魔と王弟が戦い、王弟が勝利する。
 
妖魔何故だ…?お前と私の力は完全に拮抗している筈だ。
王弟兄上が力を貸してくれた。
妖魔あの者が継承したセフィラなど、覚醒したところで取るに足らない力しか無い筈なのに……。
王弟2000年前にも、お前は白魔術師たちの力を『取るに足りない』と見下していたな。
妖魔……良かろう。敗北は認める。だが何故、邪魔をするのだ?
私はただ、失われた秩序を取り戻してこの世を静寂と安寧とで満たしたいだけだ。
王弟その為にお前が犠牲にしようとしているもの。
お前が『取るに足りない』と切り捨てた者たちが、俺に取っては護るべき大切な存在だからだ。
 
 
【宿】
エアリス皆が無事で、本当に良かった。
ザックスエアリスを助ける役割は、俺がやりたかったのに…。
エアリスザックスが私を助けようと色々、頑張ってくれた話は、お兄さんから聞いてる。
ザックス……え?あいつ、意外と良い奴だったんだな。
妖精(単純な奴だ…)
ザックスそれにしても、色々あったよな…。
ユフィはミッドガルとウータイの和平条約を締結させてウータイに帰ったし、クラウドはニブルヘイムに…。
エアリス…帰ったら、ティファに全部、話すのかな。
全てをありのままに話すのが本当に良い事なのかどうなのか、私には判らない…。
ザックス俺にも判らないけど…でもきっと、クラウドなら大丈夫だ。
皆を生き返らせて全てを無かった事にするっていう妖魔の誘惑にも打ち勝ったんだし。
エアリス…そうだね。それにティファも、きっと強い心を持った人なんだと思う。
皆が嘘つきだって言ってたクラウドを、一人で信じ続けたんだもの。
ザックスああ。きっとそうだな。
それにしても…クラウドって結局、何者だったんだ?
4歳の時にセフィロス王子と会ったとか、タダ者じゃなさそうなんだけど。
エアリスクラウドは、11番目のセフィラの継承者だったんだよ。
ザックス11番目?10のセフィラが集まってセフィロトの樹になるんじゃ無かったのか?
妖精11番目のセフィラは『隠れた叡智』のセフィラと呼ばれ、セフィロトの樹には含まれない。
クラウドは魔王の力の継承者では無いが、リユニオンの成就に不可欠な知識の継承者なんだ。
ザックスだから色々な事を知ってたのか…。
それより、死んだ筈のセフィロス王子が王宮に戻ってるのはどういう事なんだ?
それに、リユニオンは結局、どうなったんだ?
妖精セフィロトの樹は別名、生命の樹と呼ばれていて、不死の象徴だ。
王弟は生身の身体を捨てて一度は死んだが、セフィラを覚醒させて再生した。
但し、覚醒させたのは元々自分が継承していた慈悲のセフィラの力だけで、他の継承者から力を奪うことはしなかった。
ザックス…欲が無いんだな。
エアリス王弟殿下は慈悲のセフィラの継承者だから、言い換えれば神様の慈悲の権化なんだよ。
ザックスだから他の継承者を死なせる事になっちまうリユニオンを避けたのか…。
だけど、妖魔との戦いの時、『兄上が力を貸してくれた』って…。
妖精それは恐らく最後の手段だったのだろう。兄王のセフィラを覚醒させてその力を奪えば、兄を殺すことになるからな。
エアリス王弟殿下は、皆を護る為であっても、兄上を犠牲にはしたくなかった。
そしてその気持ちが、妖魔との戦いに勝つ力になったんだと思う。
ザックス…そうだったんだ。
王様が前より元気になって自ら閣議を行うようになったのも、慈悲のセフィラのお陰なのか?
エアリスそれもあるし、今まで陛下のご病状を悪化させていた闇の力が消えたからでもある。
一時はどうなる事かと思ったけど、国中の皆もとても喜んでるし。
謎の男全てが丸く収まった所で、俺との約束を果たしてもらおうか。
ザックスそうだったな。武器を買うのに大分、使い込んじまったから、まとまった金額を稼ぐまでちょっと待ってくれれば――
謎の男誰が金が欲しいと言った?俺の望みを一つ、叶えるというのが約束の筈だ。
ザックス勿論、覚えてるけど…。金でなければ、何をすれば良いんだ?
謎の男お前が気に入ったんだ。俺の騎士になれ。
ザックス…は?騎士にって……。
思い出した…!アイシクルのセフィロスって、新しい王の名前じゃないか…!
妖精……お前、本名を聞いた時点で気づかなかったのか?
ザックス……全然。だってまさか、王様が自らこんな所を出歩いてるなんて思わないから……。
謎の男王と言っても元は傭兵の成り上がり者だからな。王城の奥で偉そうにしているのは性に合わない。
ザックスそれにしても、どうしてミッドガルに…?
謎の男ユフィと同じで、この国の内情を探りに来た。
アイシクルの金鉱を狙う国々は戦で勝って抑えたが、ミッドガルだけは、攻めて来られたら勝てる気がしないんでな。
それで?俺の騎士になるか、ザックス?
ザックス約束は約束だし、騎士になれるんだったら願ったり叶ったりだけど、アイシクルに行っちまったら、エアリスに会えなくなる……。
エアリスザックス……。
謎の男目標どおり英雄になって、それから迎えに来れば良いだろう?
妖精俺は反対だぞ。『エアリスの事をお願い』ってイファルナに頼まれてるのに、アイシクルに行かせるなんて…。
謎の男だったらお前も来るか?アイシクルも、中々良い所だぞ。
妖精そういう問題じゃない…!
ザックス……待っててくれなんて言わないけど、でも…少しだけ考えてみてくれないか?
エアリス……うん。考えておく。
 
 
【桜の咲く湖畔】
美しい景色だな…。
王弟そうだろう?俺がこの国で、一番、好きな場所だ。
…私は今まで王宮に篭りきりで、自分の国にこんな場所があるのも知らなかった…。
王弟これから知っていけば良い。体調がもっと良くなったら、もっと多くの場所に案内する。
……矢張り、私はお前に位を譲るべきだと思う。
妖魔に唆されて無実のお前を牢に入れ、この国を内乱の危機に晒した罪は重い…。
王弟そう思うなら、退位などせずに責任を取ってくれ。
私腹を肥やす事しか関心の無い貴族たちに代わって新しく有能な家臣を登用し、妖魔のせいで弱体化した騎士団を建て直す。
他にも、やるべき事はたくさんある。
それに俺はもっと多くの国々を見て回りたいから、今後はミッドガルを留守にする事も多くなる。
…お前はもう、人ではなくなってしまったのだったな…。
王弟不安か?俺が手に入れた力は、古の魔王のものだ。
不安など、無い。お前は子供の頃から欲が無かった。
王弟それは誤解だ。俺は欲張りなんだ。この国と民を護るだけでは飽き足らない。
全ての国の平和と全ての民の安寧。それを実現させる為に、俺は力を覚醒させた。
ほんの数十年しか生きられないのでは、不十分なんだ。
……不思議なものだな。
お前はもう、神にも等しい存在なのに、こうして話していると、以前と少しも変わらない。
王弟変わらないさ。
ただ、勝手に城を抜け出して家臣を慌てさせていた頃に戻るだけだ。
…そうだな。あの頃から、お前には翼があったのだ。
自由に天翔ける翼が。
 
エアリスあそこにいらっしゃるの、国王陛下と王弟殿下じゃない?
魔術師そんな事より…私をこんな所に呼び出して、何の用だ?
エアリス…お兄さんが生まれた時、子供が歩けるくらいに大きくなったら3人でここに来ようって、お父さんとお兄さんのお母さんは約束したんだって。
でも、その約束は果たせなかった。だからせめて、ここの景色だけでもお兄さんに見せたくて…。
魔術師…下らない。私は景色になど興味は無い。
エアリスでも…お兄さんのお母さんもここを気に入ったから、3人で来ようって約束したんじゃないかな。
魔術師まさか…。妖魔がこんな明るい場所を気に入る筈が無いだろう?
それより、あの男はもう死んだのに、どうしていつまでも私に関わろうとするのだ?
エアリス私、元々お兄さんが欲しかったんだ。だから私にお兄さんがいるってお父さんに聞かされた時、すごく嬉しかった。
魔術師……それが、妖魔の血を引く者でも…か?
エアリスそんなの関係ない。だって、お兄さんはお兄さんだもの。
魔術師…お前がどう思おうと勝手だが、これ以上、私を煩わすのは止めてくれ。
エアリス……うん。じゃあ、今度、うちで焼いたパイを持って遊びに行くね。
魔術師何を言っているのだ?私は煩わせないでくれと――
エアリスもしもお兄さんが本当に私に会いたくないなら、魔物をけしかけて追い返す筈でしょう?
でも今まで、一度もそんな事は無かった。
それにあの時、妖魔から私を助けてくれたし。
魔術師……思い上がるな。
母は気まぐれな女だった。私にもその血が流れている。
それだけの事だ。
エアリス…判ってる。それで、リンゴと胡桃、どっちのパイが良い?
魔術師……全く、お前は……。
 
 
【ニブルヘイム】
ティファクラウド…!帰って来たんだね?
クラウドティファに話さなければならない事がたくさん、あるんだ。
何から話したら良いのか判らないけれど……。
ティファ……。
クラウド15年前…それに5年前も、俺を信じてくれて、ありがとう。
ティファが俺を信じてくれたお陰で、とても救われた。
ティファ……もう良い。
クラウド…え?
ティファ聞きたかったのは、その言葉だけ。だから、他の事はもう良いの。
クラウドティファ……。
ティファ皆にも会いに行こう?
クラウド…ティファには全てを話さなければと思ったから戻って来たけど、帰って来た訳じゃないんだ。
あれだけの事をしてしまったんだし、ここにいる資格は、俺には……。
ティファ何、言ってるの?クラウドは村を焼き払った犯人を捜す旅に出て、そしてその相手と戦って勝ったんでしょう?
クラウド……皆はそう、思ってるけど、でもそれは――
ティファ戦って、勝ったんだよね?だってクラウド、昔みたいに暗い眼をしていないもの。
だから、笑って皆に『ただいま』って言えば良いんだよ。
クラウド……ティファは、全部お見通しなんだな。
ティファだってクラウドは、家族より身近な存在だから。
さ、行こう。行って、みんなに会おう。
クラウド…うん。でも誰よりも先に。
ただいま、ティファ。
ティファお帰り、クラウド。










今回の動画はWOLR RPG エディタを使って、RPG作成に挑戦しました。
何ヶ月もかかってしまいましたが、セフィロスがたくさん、出てくるので、特にセフィロス同士の会話は作っていて楽しかったです^^

『謎の男』は当初は登場予定がなく、彼が出てきた事で話が広がって長くなってしまいましたが、あの落ち着いた大人の男の魅力は、実は結構、気に入っています^^;

ここまでお付き合い頂き、有難うございました。
少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。


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