ポスター盗難事件
(2)
カジュアルなイタリアン・レストランで夕食を済ませ__ジェネシスは小洒落たフレンチに行こうとしたが、アンジールが嫌がった__2人はセフィロスのポスターが貼ってある駅を端からチェックした。
盗まれたポスターはすでに補充がなされ、新しいポスターが貼ってある。
どこも駅構内で人目のある場所に貼ってあり、盗むのは容易くはなさそうだ。
「ニュースでは、昨日だけで200枚以上が盗まれたって言ってたな」
「…許せん」
アンジールの言葉に、ジェネシスは言った。
「昨夜のは恐らく内部の者の犯行だ。駅員か、駅で働く従業員の仕業だろう」
「なるほど。それなら盗む機会は充分にある、という事になるが……」
それにしてもどうして駅員が?とアンジールは疑問を口にした。
「セフィロスに憧れている人間は確かに多いだろうが、駅の従業員の中に、それ程多くのセフィロス信奉者がいるとは思えないんだが」
「知人、友人に頼まれた。或いは転売目的、だ」
転売目的?と、鸚鵡返しにアンジールは訊いた。
「世の中にはセフィロス・ファンクラブを自称するグループがいくつもあって、セフィロスの盗んだポスターやら自作フィギュアやらを、アングラで売りさばいている」
このポスター盗難事件をきっかけに、公式なセフィロス・ファンクラブが設立されるが、この時点ではまだファンクラブは非公式な存在だった。
「ふぃぎゅあ…?何だ、それは」
「フィギュアも知らんのか、お前は!小は5センチ程度の3頭身デフォルメがたまらなくキュートなミニセフィロス、一般的に出回ってるサイズとしては20センチ前後の可動式。手足が動いて好きなポーズを取らせられる。更に1/6スケールの作品ともなると細部までリアルに再現され、セフィロスの魅力を余すことなく表現しているんだ!」
今回のポスターがフィギュア製作に与える影響を考えてもみろ、と、ジェネシスは息巻く。
「次に主流になるのは間違いなく1/6スケールかそれ以上の大作、それもコートを脱がせる事の出来る『お着替えセフィロス』だ!」
「……詳しいな」
「ソルジャーの常識だろう!」
普段は冷静なジェネシスの熱くなった姿に、アンジールは唖然とする。
どうやらフィギュアというのは人形みたいな物の事らしい。
確かにセフィロスに憧れている兵士やソルジャーは少なくないが、ソルジャーが人形を集めて楽しいのか……?
「…それにしてもジェネシス。お前一体、そんな情報をどこから仕入れて来るんだ?アングラで取引されてるって事は、違法じゃないのか?」
「この駅がアヤシイな」
アンジールの言葉を軽く無視し、ジェネシスは言った。
アンジールを促し、列車から降りる。
「他は地下鉄になってるから終電後は侵入が難しくなる。が、ここは駅が地上にあるから、改札のシャッターが降りていても線路に忍び込むのは簡単だ」
「…で、どうするんだ?」
「線路の外で張り込んで、盗難を防ぐ!」
再びぐっ、と拳を握り締めて宣言した幼馴染に、アンジールは軽く溜息を吐いた。
ポスターが貼ってあるのはここだけでは無いのだ。
この一箇所で盗難が防げたところで、それに何の意味がある…?
だがジェネシスは既に熱くなってしまっている。
こういう時のジェネシスには何を言っても無駄なのが判っているアンジールは、渋々徹夜の覚悟を決めた。
どうやら徹夜はしなくて済みそうだとアンジールが思ったのは、終電が走り去り、駅の明かりが消された30分後だった。
ジェネシスたちが潜んでいる物陰の反対側に、動きがあったのだ。
ソルジャーは暗闇でもある程度、物が見える。
フェンスを乗り越えて線路に降り立ったのが、自分たちと同い年くらいの少年である事が、見て取れた。
ジェネシスはアンジールに軽く頷き、音も無く静かにフェンスを登る。
アンジールも、それに続いた。
予想通り、少年は懐中電灯を手にセフィロスのポスターにまっすぐに近づき、そこで立ち止まった。
それから、ポスターを留めている画鋲を一つずつ、外してゆく。
「そこまでだ!」
足音も気配も無く少年の背後に歩み寄ると、ジェネシスは言った。
ひっと、少年は悲鳴を上げる。
逃げようとした少年の首根っこを捕まえて羽交い絞めにすると、少年は観念したのかすぐに大人しくなった。
「貴様。これが神羅の英雄、セフィロスのポスターと知っての狼藉か」
「だって、セフィロスのポスターを取ってきたらデートしてくれるって、ジェシカが…」
「そんなアバズレの為にセフィロスを利用しようとしただと!?」
怒り心頭に発したジェネシスが少年を締め上げるのを、アンジールは慌てて止めた。
訓練も受けていない一般人にそんな事をしたら、大怪我をする可能性がある。
「…転売目的では無さそうだし、それほど悪質でも無いんじゃないか?」
「お前はこんな薄汚いガキにセフィロスを奪われても平気なのか!?」
いやだから、こいつが盗もうとしたのはただのポスターだぞ…?__アンジールは思ったが、それを言うとジェネシスの怒りの火に油を注ぐ結果になりそうなので、黙っていた。
ジェネシスの腕から助け出された少年は、激しく咳き込みながらアンジールの後ろに隠れる。
そして可哀想な位に震えながら、「ごめんなさい、もうしません」と繰り返していた。
「…どうするんだ、ジェネシス?未遂だし、もうやらないって言ってるんだから許してやらないか?」
アンジールの言葉に、ジェネシスはまだ怒りが収まらないといった表情を見せていたが、やがてフン、と顔を背ける。
「お前のような汚らわしいガキの顔はこれ以上、見たくない。行け。そして二度とセフィロスの前に姿を現すな」
だから、ただのポスター__言いたいのを、アンジールはぐっと堪えた。
少年が逃げ去った後、改めてジェネシスはポスターの前に立った。
普通のポスターより大きなそれは、ちょうどセフィロスの写真が等身大で収まるサイズだ。
しかも、セフィロスの身長に合わせた位置に貼ってある。
セフィロスは伏目がちで俯いていて、こちらを見てはいない。
長い睫の陰の瞳の碧(みどり)が美しいが、こちらを見てくれないのがもどかしいと、ジェネシスは思った。
それにしても何という美しさだ、と、ジェネシスは内心で溜息を吐く。
中性的で繊細な美貌と、男らしく逞しい肉体。
普通に考えればミスマッチなその組み合わせが、これ以上はありえない完璧さで調和している。
透けるように白い肌は、大理石の彫刻を思わせる。
思わずジェネシスは手を伸ばしたが、指先に伝わるのは、平坦な紙の感触でしか無い。
「お前ももっとトレーニングすれば、セフィロスに近づけるさ」
アンジールの言葉に、そこに幼馴染がいたのだとジェネシスは改めて思い出した。
相変わらず無粋な奴だと、内心でぼやく。
セフィロスは確かに追いつくべき目標ではあるが、同時に冒してはならない聖域でもあるのだ。
ジェネシスは少年が外しきっていなかった画鋲を、丁寧に外した。
そして端が折れたりしないよう、細心の注意を払って細く丸める。
「何をやっているんだ、ジェネシス?」
あらかじめ用意した筒に収めたところで、アンジールが訊いた。
「ソルジャーの義務として、セフィロスを盗人の手から護る」
「あの少年はもう、戻っては来ないだろう。だから元の場所に__ってまさかお前、そのまま持ち帰る積りか?」
アンジールの問いを無視して、ジェネシスは歩き出した。
「お前まさか、自分がそのポスター、欲しかっただけじゃないだろうな」
「このままこんな場所にセフィロスを置いておくなんて出来るか」
言って、フェンスを越えようとしたジェネシスの脚を掴んで、アンジールは止めた。
「このままそれを持ち出したら立派な窃盗罪だぞ。ソルジャーの誇りはどうした?」
「俺に取ってのソルジャーの誇りは即ちセフィロスだ。誰にも邪魔はさせん!」
言うなりアンジールの胸を思い切り蹴ると、ジェネシスはそのままフェンスを越え、走り去った。
翌日。
セフィロスのポスターが一斉に撤去された。
写真は元々身体測定の折に科学技術部門で撮影したものを勝手に宣伝広告部門が流用したもので、流用を知った宝条が抗議して撤去させたのだ。
宣伝広告部門は無断流用を謝罪したものの撤去には抵抗したが、「セフィロスがこの事を知ったら、正宗の錆にされるだけでは済まんぞ」と脅され、即刻、撤去に応じた。
掲載期間が短かった為に、セフィロスのポスターは伝説的な存在となり、アングラ市場で高値で取引される事になる。
そしてその希少性のゆえに却ってセフィロスへの憧憬の念がかきたてられ、神羅軍、ソルジャーともに志願者が増え、全ては丸く収まった。
ただそれは、セフィロスがこの事を知らずにいる間だけである。
DFFのセフィのアナザーコスを見てしまったらネタにしない訳には行かないでしょう、ってな訳で、ネタにしてみました(^^ゞ
何なんですか、あのぱっつんぱっつんの腕、エロい大胸筋、バリバリに割れまくった腹筋。
そして前から見ても横から見ても細すぎのウエスト!
DFFではコートの上から飾りベルトしてますから、細腰強調は意図的ですね。
んで、DFFのセフィ、ずいぶん気合入れて着飾ってるな…と思ったら、天野絵準拠だったんですね(多分)
ただでさえ並外れた美人さんなんだから、あんなに着飾らなくても…と最初は思ったんですが、今は何となく納得です。
因みに管理人はチラリズム派です(^^ゞ
ジェネシスの寝室に、盗んだセフィのポスターとアングラ市場で手に入れたフィギュアが飾られている事は言うまでもありません。
特大パネルは宝条が没収して、研究所の自室に飾っている事も、言うまでもありません。
ところでフィギュアって言い方は古いんですか?判りません;
アンジーが知ったら反対するような事に敢えてアンジーを巻き込むのが、ジェネのジェネたる所以ですね。
16歳のアンジールが筋肉発展途上なのに同い年のセフィがぱっつんぱっつんなのは、7歳の頃から高濃度魔晄を浴びせられて、成長促進しているからです。
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