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【地下】 |
| 少年 | 皆…?どうしたんだ、どこに行った…!? |
| お前…俺の仲間たちに何をした…!? |
セフィロス | …亡霊とは、死者の想いがこの世に留まっているだけだ。 |
| 生きた人間の生命力を凌駕する事はできない。 |
少年 | 皆を……消してしまったのか…? |
セフィロス | もう20年も経っている。無念だろうが…眠りに就くべきだ。 |
| お前もお前の母親も、彼らと共に眠るが良い。 |
少年 | 俺達を殺すのか? |
セフィロス | …本当は自分でも気づいているんじゃないのか?お前や母親も、仲間たちと同じだ…と。 |
少年 | ……俺や母さんも、もう死んでいるって言いたいのか…? |
セフィロス | 言っただろう。20年だ。この研究所が廃棄されてから、20年以上の月日が流れている。 |
母 | そんな筈は無いわ。確かに、一緒にいた仲間達は皆、殺されてしまったけれど、 |
| あの時、私はこの子だけは護ろうとして…そして……。 |
セフィロス | …殺したんだな…。 |
母 | ……! |
セフィロス | 非人道的な実験の実験体にされてしまうのを防ごうとして、自ら手に掛けた…。 |
母 | 違うわ…!我が子を手に掛けるなんて、そんな恐ろしい事を私がする筈が……。 |
セフィロス | 自分がモンスター化してしまった時に、実験に協力した事を悔いたのだろう? |
| そんな実験だと判っていたら、我が子を実験台にはしなかった筈だ…。 |
母 | 私は……夫が借金を残して蒸発して…出産費用もなにも無くて……。 |
| 困り果てている時に、知り合いから実験に協力する妊婦を探しているって聞かされて、安全性は保証するし借金も全て肩代わりするからって言われて…。 |
セフィロス | …ここには妊婦ばかりが集められたのか? |
母 | ええ…。皆それぞれの事情を抱えてお金に困っていた。でも実験に協力したのは絶対に安全だって言われたからよ。それがあんな恐ろしい事になるなんて……! |
少年 | 母さん……。 |
母 | 私はあなただけは助けたかった…。何があっても護りたかったのよ……! |
| でも私は醜いモンスターの姿になってしまって、余りに無力だった……。 |
少年 | ……母さんは醜くなんかないよ。世界中の誰よりも一番、綺麗だ…。 |
母 | セフィロス……。 |
セフィロス | ……。 |
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【廃墟2】 |
| アンジール | ジェネシス……。おい、ジェネシス、眼を覚ませ…! |
ジェネシス | アンジール……?一体…今のは何だったんだ…? |
アンジール | どうやら…亡霊に取り憑かれそうになったようだな…。 |
ジェネシス | 取り憑かれそうになった…だと? |
アンジール | ああ…。理由はよく判らないが、どうやら俺たちは取り憑かれずに済んだらしい。 |
| 最初に取り憑かれそうになった時も、一旦、意識を失ったが、どうにか逃げられた。 |
| ただ、気を失っている間にザックスとはぐれてしまったんだ。亡霊に連れ去られてしまったのか……。 |
ジェネシス | いい加減にしてくれ。 |
| バノーラならまだしも、そんな非科学的な話をミッドガルで信じる者がいると思うのか? |
セフィロス | 俺は信じるが…な。 |
ジェネシス | セフィロス…! |
アンジール | お前は…本物なのか? |
セフィロス | ああ。さっきはすまなかった。偽者と混戦になるのを防ぎたかったから。 |
| 他のソルジャーたちは地下にいる。アレイズをかけておいたから、すぐに回復する筈だ。 |
アンジール | 無事だったのか?それは良かったが……。 |
ジェネシス | 亡霊を信じるとは、どういう事なんだ? |
セフィロス | この建物は、昔、神羅の研究所だったんだ。 |
アンジール | 神羅の…!?まさか…人体実験を行なっていたのは神羅だったのか……? |
セフィロス | ああ…。金に困っている妊婦達を言葉巧みに騙して、実験体にしていたらしい。 |
アンジール | 酷い話だ……。それでモンスターにされてしまったのなら、怨みも残るだろうな…。 |
ジェネシス | セフィロス…。あんたはそういう話を信じるのか? |
| 何より、どうしてあんたがそんな事を知っている? |
セフィロス | ……話しても、信じないだろう。 |
アンジール | 俺は信じるぞ。 |
セフィロス | …ここに最後まで残っていた死者と話した。 |
ジェネシス | 最後まで残っていた死者…? |
| まさか、顔だけが人間でモンスターの姿をした女の事か……? |
セフィロス | ああ…そうだ。 |
ジェネシス | あれが…本当に亡霊だったのか…? |
アンジール | お前も自分の目で見たのなら、信じるしかないんじゃないのか…? |
ジェネシス | ……。 |
| だが…報告はどうするんだ?モンスターの正体が亡霊だったなんて、言っても信じては貰えないぞ。 |
セフィロス | この件には会社の機密が関わっているからな。 |
| 本当の事など言っても揉み消されるだけだ。 |
| 表向きは、単なるモンスター事件として処理する。同行した兵達にも、そう言い含める。 |
アンジール | まさかこのまま有耶無耶にするのか?昔の事とは言え、非人道的な実験が行なわれていたのに…。 |
セフィロス | このままにはしない。彼らにも、そう約束した。 |
ジェネシス | 彼ら…? |
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--回想 |
| 少年 | 俺は母さんを護る。神羅の犬なんかに、消させはしない。 |
セフィロス | 人を襲っても人間に戻れる訳では無いのに、無関係な人々を襲い続ける気か? |
少年 | 多くのモンスターを殺して英雄と崇められるお前に、俺達の気持ちなんか判らないんだ…! |
セフィロス | ……俺には家族がいないからな。 |
少年 | 家族が…いない…? |
セフィロス | それでも…何があっても大切な人を護りたいと思うお前の気持ちは判る。 |
母 | セフィロス…ごめんなさい。私はあなたを護りたかったのに、それが出来なかった…。 |
| その後悔と自責の念と…我が子を殺してしまったのだと信じたくない気持ちが、あなたをこの世に縛り付けていたのね…。 |
少年 | 母さん…。 |
セフィロス | お前は母親の想いに応えようとして、亡者でありながら『成長』したんだな…。 |
| だが、その姿になるのが限界だった。 |
少年 | 俺はもっと強くなりたかった。もっと強くなって、母さんや仲間たちを護りたかった……。 |
セフィロス | …もう戦う必要は無い。 |
少年 | 大人しく消えろって言うのか? |
| 俺たちをこんな目にあわせた神羅が、のうのうと繁栄しているのに? |
セフィロス | 神羅はいずれ、報いを受けるだろう。 |
| 20年前にここで何が行なわれたのか、いつか明らかにしてみせる。 |
少年 | お前が…?お前は神羅のソルジャーなのに…。 |
セフィロス | 確かに神羅のソルジャーだが、神羅の犬では無い。 |
少年 | ……判った。お前を……信じる。 |
セフィロス | 一つだけ訊きたい。何故、子供にセフィロスと名づけた? |
母 | 研究員たちが何度も口にしていた言葉だったからよ。何かとても希少な…価値あるものの名前らしかったわ。 |
セフィロス | (何故、ここの研究員たちが俺の名を…?) |
母 | ありがとう…。あなたのお陰で、やっと解放される…。 |
セフィロス | ……。 |
母 | さあ…行きましょう、セフィロス。仲間達がまっているわ。 |
少年 | うん…ずっと一緒にいよう。 |
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【ミッドガルに戻るヘリの中】 |
ザックス | あれが全部、モンスターの幻惑だったなんて、信じらんね…。 |
| それに俺、何の手柄も立てられなかったし。 |
クラウド | でも…皆、無事だったんだから、良かったじゃないか。 |
ザックス | けどさ、モンスターが喋る訳ないのに、全てがモンスターの仕業だったなんて、やっぱり納得いかねぇ。 |
クラウド | それは…モンスターの正体が亡霊だったなんて、報告する訳に行かないからじゃないかな…。 |
ザックス | つまり、本当は幽霊なんだけど、モンスターの幻惑って事にして報告するって事か…? |
クラウド | 多分……。 |
ザックス | じゃあ、セフィも幽霊だったのか…。死んじまってからも、お袋さんを護りたいって気持ちだけで、この世に留まってたんだな…。 |
クラウド | 気持ちはわかる…と思う。亡霊に襲われた時に、自分が死ぬ事は、不思議と怖くなかった。 |
| それよりも、死んだら大切な人たちを護れなくなってしまう……それが、すごく悔しかった。 |
ザックス | あーわかるわかる。俺もエアリスとまだ1回しかデートしてないのに、こんな所で死んでたまるかって思ったもん。 |
クラウド | (それ、かなり違う……) |
ザックス | セフィ……もう消えちまったのかな。余計な事は訊くなってアンジールに釘を刺されちまったから、どうなったのかわからないんだけど…。 |
クラウド | 多分……還るべき所に帰ったんだと思う。 |
ザックス | 還るべき所…? |
クラウド | どこかはわからないけれど…全ての生命が最期に辿り着いて、安らかに眠れる場所。そんな所に、帰ったんだと思う…。 |
ザックス | そうだな…。きっと、お袋さんや、仲間たちと一緒に……。 |
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ジェネシス | ムスペルヘイムで何が行われていたか調べるなら、俺に任せてくれ。 |
セフィロス | お前に…? |
ジェネシス | あんたが動くと目立つからな。俺の方が、調査しやすいだろう。 |
セフィロス | (……何故、あの少年は俺の子供の頃に似ていたんだ?) |
| (それに…何故、ムスペルヘイムの研究員たちが、俺の名を口にしていた…?) |
ジェネシス | …セフィロス? |
セフィロス | …慎重にした方が良いだろう。会社は当然、実験の存在を隠蔽しているだろうからな。 |
ジェネシス | わかっている。安心して任せてくれ。 |
アンジール | (今回、功績を上げられなかった穴埋めをする積りか…?) |
| それよりセフィロス、救助に来てくれて感謝する。相手が相手だからな。お前が来てくれなかったら、どうなっていた事か……。 |
ジェネシス | それにしても、よく来れたな。神羅はよほど重要な任務でない限り、英雄を動かさない方針の筈だが…。 |
セフィロス | 宝条やプレジデントには止められたが、振り切った。友人が危機に陥っているかも知れないのに、放ってはおけない。 |
アンジール | 友人だと…思ってくれているのか? |
セフィロス | ……違うのか? |
ジェネシス | 違う訳、ないだろう。勿論、友人だ。 |
アンジール | 俺はただ…お前は余り自分の事を話さないし、感情を表に出さないタイプだから、俺達の事をどう思っているのか、確信が持てなくてな…。 |
セフィロス | そうなのか…? |
ジェネシス | 気にするな、セフィロス。そんなうじうじした事を考えているのはアンジールだけだ。 |
アンジール | (嫌われたら終わりだとか何とか言っていたのは誰だ…?) |
ジェネシス | とにかく、任務は無事完了したんだ。ミッドガルに戻ったら、祝杯を挙げよう。 |
アンジール | 祝杯は良いが…はっきり言って、俺とお前は何もしていないぞ? |
ジェネシス | 水を注すような事を言うな。セフィロスのお陰で全員無事だったし、今後は近隣の村人がモンスターに襲われる事もなくなるんだから、任務は成功だろう? |
アンジール | それはそうだが……。余り後味の良い任務じゃなかったからな。 |
ジェネシス | アンジールは誰にでもすぐ同情するからな。怨念を残して死んだ亡者にまで同情していたら、後味も悪くなる。 |
セフィロス | …彼らがこの世に留まっていたのは、恨みを晴らす為では無いだろう。 |
| 少なくともあの少年は、母親を護ろうとしていただけだ。 |
ジェネシス | いずれにしろ、20年もこの世に留まっていたなんて、かなりの執念だな。 |
セフィロス | …あの少年が、母親を護ろうとした気持ちは判る。 |
アンジール | だが、確かお前のお袋さんは、お前を産んですぐに亡くなったと―― |
| 済まん……。余計な事を言った…。 |
セフィロス | 別に構わない。子供の頃には、母に生きていて欲しかったと思う時もあったが…。 |
| 少なくとも今は、お前たちという友人がいるからな。 |
| 自分が孤独だとは、思わない。 |
アンジール | セフィロス……。 |
ジェネシス | やはりミッドガルに戻ったら乾杯しよう。 |
| 俺たち3人の、変わらぬ友情に。 |
セフィロス | …そうだな。 |
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