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【礼拝堂】 |
| ジェネシス | もう良い、アンジール。その小僧は、俺が片付ける。 |
| 前世でどんな力を持っていたか知らないが、今はただのガキだ。 |
クラウド | ……! |
セフィロス | ジェネシス、止めろ。 |
ジェネシス | セフィロス…。何故、止める…? |
セフィロス | さっきも言った筈だ。神聖な礼拝堂を、血で穢すな…と。 |
ジェネシス | 何を言っているんだ?そんなたわ言は、愚民だけが信じていれば良い。 |
セフィロス | 神に生贄を捧げる儀式は神聖なものだ。単なる殺戮とは異なる。 |
ジェネシス | 本気でそんな中世の人間みたいな事を信じてるのか? |
セフィロス | それが、真実だ。 |
アンジール | ああ…そうだ。お前が、長い時をかけて創り上げた『真実』… |
| 正義が相対的なものであるように、真実も同じだ。 |
クラウド | …あんたは護るべき領民がいると言った。それは嘘だったのか? |
セフィロス | 嘘ではない。今まで私は、領民と領地を護って来た。 |
クラウド | だったらどうして今まで護ってきた人たちを犠牲にするんだ? |
| それに、人間を生贄にするのは残酷だと言ったのはまやかしだったのか? |
セフィロス | ……。 |
アンジール | …まやかしじゃ無かった筈だ。お前が慈悲深い領主なのも、ジェノバが女神なのも |
| この世界の人々に取っては、等しく真実だ。 |
| そして、お前に取っても……。 |
ジェネシス | セフィロス…、あんたは神だ。人間のたわ言なんぞに、耳を貸すな。 |
| 俺がリユニオンしてあんたに力を与える。一緒に、この星を支配しよう。 |
クラウド | …あんたは略奪者じゃない。ただ…奪われた物を取り戻したかっただけの筈だ。 |
| ジェノバが女神となってこの星を『取り戻した』のに、星を棄てて行くのか…? |
セフィロス | 我らは約束の地を求めて旅する民だ。 |
| 永遠に、この地に留まる訳には行かない。 |
アンジール | …誰も犠牲にせずに、旅立つ力を得る方法は無いのか…? |
セフィロス | …星が終焉を迎える時、全ての生命はライフストリームに還る。 |
| そのままでは、星と共に朽ちてしまうだけだが、それを得れば… |
ジェネシス | その時まで待つとでも言う気か?気の遠くなる程の未来だぞ? |
アンジール | …独りではとても無理だろう。だが…お前には俺達がいる。 |
セフィロス | ……。 |
アンジール | あの時俺は、先に一人で死んで、運命から逃れようとした。 |
| 今は…後悔している…。 |
セフィロス | …知っている。さもなければ、お前たちは今ここにいない。 |
ジェネシス | …俺達をこの世界に呼び寄せたのは、あんたの意思じゃないのか? |
セフィロス | 時が満ち、全てがあるべき姿になれば、 |
| 復活の為の生贄も、旅立つ為の力もおのずと手に入る。 |
| 何百年もの間…私はそれを待っていた。 |
| 今がその時である筈なのに… |
ジェネシス | 迷う事は無い。あんたは神であり、この星の支配者だ。 |
| 思うままに振舞えば良い。 |
アンジール | …お前は神になる為に感情を棄てようとしたんだろうが… |
| お前は感情の無い神なんかじゃない。俺達の知っているセフィロスだ。 |
| さもなければ、どうして今、人として生きているんだ? |
セフィロス | ……。 |
アンジール | お前が星を傷つけて力を奪うのを止めたのは、 |
| それを望んでいないからだと言ったな。 |
| 多くの人々を犠牲にする事だって、望んではいない筈だ。 |
ジェネシス | セフィロス、機会を逃すな。旅立てなくなっても良いのか? |
クラウド | …あんたは約束の地に、至上の幸福を求めていた筈だ。 |
| 人間に復讐する為に、復活したんじゃない…。 |
セフィロス | …充分、長く待ったと思っていたが…。 |
| 時は、まだ満ちていなかったようだ…… |
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翌年、薔薇戦争が勃発。 |
エルムドア侯爵は名誉の戦死を遂げた。 |
侯爵の死後、ランベリーは国王直轄地となり |
『白亜城』とまで呼ばれた美しいランベリー城は |
廃墟となった。 |
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【廃墟】 |
| 10年後。 |
| エアリス | …あれからもう、10年も経つんだね…。 |
| あの時、私が生贄になっていれば、きっとこんな事にはならなかったのに… |
ザックス | 俺が悪いんだ。俺がエアリスを逃がそうなんてしたせいで、教皇が介入してきて |
| 結局、儀式は取りやめになっちまった。 |
| 儀式を中断なんかしたから、女神が怒ったんだ…。 |
エアリス | …正直に言うと、あの時…生贄になるのが怖かった。 |
| だから助けてくれようとしたのは嬉しかったけど、 |
| 私のせいで侯爵様があんな事になったのかと思うと…… |
ザックス | 俺のせいだ。エアリスは悪くない。 |
クラウド | …ザックスのせいでもエアリスのせいでも無いよ… |
ザックス | エアリスを無理やり逃がそうとしたのは俺だ。だから―― |
クラウド | 侯爵が亡くなったのは、儀式を中断して神の怒りに触れたからじゃない。 |
| あの方が亡くなったのは、50年戦争の時に受けた傷が原因だ。 |
ザックス | そんな話…誰に聞いたんだ? |
クラウド | 噂だけど……。侯爵は、本来ならその時に亡くなる筈だった。 |
| でも領民を護ろうとする侯爵のお気持ちを女神が汲んで、 |
| その後20年の間、生き永らえさせたのだ…って。 |
ザックス | 20年の間、ずっと若い姿のままだったのはそのせいなのか…? |
クラウド | さあ…そうかも知れない…。 |
エアリス | …侯爵様は女神ジェノバの申し子だから…御許に還られただけなんだね…。 |
ザックス | そうだな…。何となく、この世の者じゃないような雰囲気があったし。 |
| 俺もクラウドも騎士になれたけど…出来れば侯爵に仕えたかった…。 |
クラウド | ああ…。それが、俺の夢だった… |
ザックス | 侯爵が亡くなって…ここも廃墟になっちまったな… |
エアリス | でも、お花が…。 |
ザックス | ああ…。俺達の他にも誰か来たんだな。 |
クラウド | 今でも俺達みたいに侯爵を慕う人たちが花束を捧げるから、 |
| 廃墟になっても花が絶えないんだ。 |
エアリス | それに、天使様が護って下さるから、侯爵様が亡くなった今も |
| ランベリーの平穏が保たれているんだって、シスターが。 |
ザックス | 天使…? |
エアリス | 白い翼と黒い翼を持った、二人の天使様。 |
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【街を見下ろす丘】 |
アンジール | 俺に双方向性コピーの能力があって良かった…。 |
ジェネシス | 翼を再生させた事を言っているのか? |
アンジール | ああ…。翼だけのコピーに失敗してモンスター化する恐れもあったし、 |
| 初めはモンスターの証のようで嫌だったが… |
| こういうサバイバルな世界で生きていくには便利だな。 |
ジェネシス | 何を暢気な事を言っているんだ。 |
| あの時、お前が邪魔しなければ、俺はセフィロスとリユニオンして |
| 神になれたのに… |
アンジール | 感情を持たない神になっても、退屈なだけだろう? |
ジェネシス | …俺はまだ諦めた訳じゃない。 |
| 次にセフィロスが復活した時には、お前に邪魔はさせない。 |
アンジール | …邪魔なんかしないさ。あの時だって、邪魔をした訳じゃない。 |
ジェネシス | 邪魔していないだと? |
アンジール | ああ…。セフィロスが言っていた通り、時が満ちていなかっただけだ。 |
ジェネシス | だったら、いつになったら時が満ちるんだ?セフィロスは、いつ復活する? |
| あれからもう、10年も経ったのに… |
アンジール | あいつは俺達がこの世界に来るのを、独りで何百年も待ってたんだ。 |
| それに比べたら……俺達は一人じゃない。 |
ジェネシス | …無理して俺に付き合う事はないんだぞ? |
| 仔犬の生まれ変わりの所に行きたいんじゃないのか? |
アンジール | ……いいや、やめておこう。 |
| セフィロスが戻って来るまでこの地を護らなきゃならないし、 |
| それに俺は…手間のかかる奴の世話をするのが好きなんだ。 |
ジェネシス | ……勝手にしろ…。 |
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【廃墟】 |
| ザックス | もしかして…俺は天使の翼を斬っちまったのか?なんて罰あたりな…! |
クラウド | …罰なんてあたらないさ。 |
ザックス | …クラウド…? |
クラウド | あの時、侯爵は俺達を赦してくれた。俺達は…もう、赦されているんだ。 |
ザックス | だけど…俺、アンジールに謝らないと。 |
| このままじゃ、俺の気が済まない。ランベリーにいるんだったら探し出して… |
クラウド | …会えるよ。いつか、きっと。 |
エアリス | …そうだね。女神の御許に召される時が来れば…。 |
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--「約束の地に行こう」とジェノバに語りかけるセフィロスの姿が、クラウドの脳裏に蘇る |
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クラウド | 願いが叶うと良い…な。 |
ザックス | …え? |
クラウド | 何でもない…。――帰ろう。そして、新しい夢を見つけよう。 |
ザックス | 苦労してやっと騎士になれたのに、それだけじゃ不満なのか? |
クラウド | 不満なんじゃない。ただ…夢と誇りを持ち続けろって、アンジールが…。 |
ザックス | そうだな…。じゃあ俺、英雄になる。 |
エアリス | …ずいぶん、大きく出たね。 |
ザックス | 夢は大きい方が良いさ。だろ? |
クラウド | ああ…。その通りだ。想い続けていれば、それはいつかきっと叶う。 |
| 俺は…そう信じる。 |