東ウータイ戦役

(3)



程なく重厚なドアが開き、次々と来客が到来した__招かれざる客も含めて。
微妙な表情のプレジデント神羅。
見るからに不機嫌な、陸海空三軍の元帥たち。
治安維持部門統括ハイデッガーとソルジャー統括。
前者は赤く、後者は青くなって小刻みに震えている。

「それで、東ウータイ戦役の問題点に関する話とは何かね、セフィロス?」
会議用テーブルの上座に腰を下ろし、プレジデントは訊いた。
「将軍達のセクト争いだ」
セフィロスの言葉に、元帥達の間に緊張が走る。
「ほう。具体的には?」
元帥達を見やってから、プレジデントはライティング・デスクに寄りかかるようにして立っているセフィロスを促した。
「ジェネシスが説明する」
「俺が?」
思わず、ジェネシスは聞き返した。
「他に誰がいる?」

部屋中の視線が一斉に自分に注がれるのを、ジェネシスは痛いほどに感じた。
まさかこんな事になるなどと思ってもいなかった。
が、こうなってしまった以上、腹を括るしか無い。

「誰だね、その男は」
陸軍元帥が訊いた。
訊いた相手はハイデッガーだ。
「ソルジャー・クラス1st。ジェネシス・ラプソードスだ」
良く言えば堂々とした、悪く言えば高慢な態度でジェネシスは言った。
幾らなんでも60代の元帥相手にその態度はまずいだろうとアンジールは思ったが、もう、こうなってしまったらどうしようもない。
元帥達はあからさまに眉を潜め、ソルジャー統括を睨み付ける。
ソルジャー統括は俯いて、自分の膝の上に置いた手を見つめていた。
「もう一人の若者もソルジャーかね。どうして軍服を身に着けていない?」
「そんな事はどうでも良い」
海軍元帥の問いに、セフィロスは言った。
そして、話すようにジェネシスを促す。
ジェネシスは一度、深く息を吸い、それから改めて元帥達に向き直った。



30分後。
三軍の間のセクト争いを止め、東ウータイ戦役の戦略全体を見直すようにプレジデントに命じられた元帥達は、怒りに打ち震え、足早に執務室を出て行った。
ソルジャー統括は卒倒せんばかりに青くなり、ハイデッガーは相変わらず怒りに震えている。
対照的に、プレジデントは上機嫌だった。
「軍部のセクト意識には、わしも以前から手を焼いておったんだ。よくやってくれたな、セフィロス」
「俺じゃない。ジェネシスと、アンジールの二人だ」
プレジデントの言葉に、セフィロスは言った。
幾分か意外に思い__元帥たちの前で演説したのはジェネシス一人だ__アンジールはセフィロスを見た。
「軍部の問題点を洗い出したのはジェネシスで、俺をそれに向き合わせたのはアンジールだ」
「…何故、先に私に言ってくれなかったんだ、セフィロス?」

恨めしそうに、ハイデッガーは言った。
プレジデントの言葉で、怒りは別の感情に変わったようだ。
セフィロスは、ハイデッガーを冷ややかに見遣る。

「お前は、将兵に信任が無い」
セフィロスの言葉に、ハイデッガーは血管が切れそうなほどの形相になり、プレジデントは哄笑した。
プレジデントは口元に笑みを浮かべたまま__だが目は笑っていない__ハイデッガーの肩をぽんと叩く。
「軍部のセクト争いを今まで放置してきた件に関しては、後でゆっくり話そう」
言って、部屋を後にしたプレジデントの後を追いかけるようにして、ハイデッガーも執務室を出る。
ソルジャー統括は、深くため息を吐いた。
そして、アンジールとジェネシスを見る。
「…今後、神羅軍から陰湿な嫌がらせをされる事があっても、私に文句を言うなよ…?」

覚束ない足取りでソルジャー統括が部屋を去ると、セフィロス、アンジール、ジェネシスの3人だけになった。
言いようの無い疲労と脱力感に、ジェネシスとアンジールは幼馴染を見た。
------事を荒立てたのはお前だぞ、アンジール
------言い出したのは、お前だ、ジェネシス
無言で、相手をなじる。
「今日は良い暇つぶしになった」
振り向くと、機嫌の良さそうなセフィロスの姿があった。
「楽しかった」
言って、幽かに笑う。
「そ…そうか。それなら、良かった…」
暇つぶしで済む問題か、こっちは寿命が10年、縮んだんだぞ__内心の叫びは、何故か別の言葉に変わる。
「また、遊びに来てくれ。俺は暇なんだ」
「あ…ああ。勿論」
当初の目的を当初の期待以上に果たしたものの、喜ぶべきか後悔すべきか判らないまま、ジェネシスは答えた。








ウータイ戦争の開始時期、勘違いしてました;
「15年前に始まった」から、戦争が15年間、続いたんだと思い込んじゃいましたが、無印の15年前に始まって、CCの時代に終わってたんですね;;
でもまあ、うちではCCの15年前に始まった事にしておきます。
或いは第一次ウータイ戦争が始まったのがCCの15年前で、第二次が7,8年前開始とか(←こじつけも甚だしい;;)

誰もセフィにしつけをしなかったし、育てた宝条が誰に対してもタメ口な人間なので、セフィロスは敬語が使えません。
学校みたいな集団生活も経験していないので、組織の秩序を無視します。
セフィのそういう態度と手柄を独り占めされる事もあって、神羅軍の将軍たちはセフィを快く思っていませんが、若い将校たちと殆どの兵士はセフィに憧れ、畏敬の念を抱いています。
ジェネシスの子供の頃とクラウドの子供の頃は時代が多少違うし、バノーラとニブルヘイムの差もあるのでクラウドは地主の子じゃなくても雑誌を手に入れることが出来ました。
でも多分、1ヶ月遅れの新古品とかそんなの。

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