相手からのメールの返信が遅いとソワソワする【セフィロス】


(2)



「セフィロス…。どうしてあんたがここに…?」
白銀の髪を靡かせて歩み寄って来る相手に、ジェネシスは訊いた。
その頃、ジェネシスとアンジールは何度かセフィロスの任務に同行し、ある程度は親しくなり始めていた。
だがまだ友人と呼べるほどの間柄では無く、自分たちの救助の為にわざわざ英雄が自ら出向いたとは、とても信じられなかったのだ。
「お前たちにメールを送ったのに返事が無いから、どうしたのかと思って様子を見に来た」
「セフィロス…」
セフィロスの言葉に、アンジールもジェネシスも、感動を覚えた。
もしかしたら神羅から見捨てられたのかも知れないと捨て鉢な気持ちになりかけていただけに、感動もひとしおだ。
「ソルジャー統括に、お前達がミッションでこっちに来ていると聞いた。1週間前に、消息を絶ったのだ…とも」
「心配かけて、済まない…。帰還途中でヘリが故障して、ここで立ち往生していた」

そう、アンジールは言った。
感動のせいか、セフィロスが神々しく見える。
ジェネシスは、感動のあまり、言葉も出ないようだ。

「ずっと救援隊を待っていたんだが……」
「救援隊は、モンスターに阻まれて近づけなかったんだ」
アンジールの言葉に、セフィロスは言った。
「このあたりには翼竜タイプの、空を飛べるモンスターが巣食っているからな」
俺が全て倒したが、と、セフィロスは続ける。
「それで、どうしてメールの返事を寄越さなかった?」
「え?__あ…ああ、済まない。ここはこんな山の中だからな。携帯は使えないんだ」
「携帯が、使えない…?」
鸚鵡返しに、セフィロスは訊いた。
ああ、と、アンジールは答えた。
「ウータイは、元々、携帯の中継局が少ないからな。こんな山奥では、電波が届かないんだ」
「そういう事か」
短く、セフィロスは言った。
意外に不便な物だなと呟き、そして、踵を返す。

……え?

予想外の出来事に、アンジールは自分の目を疑った。
「セ…セフィロス。どこに行くんだ?」
「ミッドガルに戻る」
呼び止められ、振り向いてセフィロスは言った。

……は?

再び、アンジールは自分の耳を疑う。
アンジールの隣で、ジェネシスも面食らっている。
「ちょ…っと待ってくれないか?2ndの連中も連れて来ないと__」
「何故?」
アンジールの言葉を遮り、短く、セフィロスは訊いた。
「何故…って……」
何となく嫌な予感がし、アンジールは口篭った。
それから、思い切って尋ねる。
「…俺達の事を、迎えに来てくれたんじゃ無いの…か?」
「俺は、お前達が何故メールの返事を寄越さないのか、訊きに来ただけだ」

……はい…?

内心で、アンジールは固まった。
「理由が判ったから、帰る」
「い…いや、ちょっと待ってくれ。お前が先に帰ってしまったら、俺達はどうなるんだ?」
「お前達は、救援隊を待っていたんだろう?」
そう、セフィロスは言った。
「このあたりのモンスターは掃討したから、もうじき来る筈だ」
それだけ言い残すと、セフィロスは踵を返し、ヘリに乗り込んだ。





「もしかしてセフィってさ、携帯ってどこででも使えると思ってたのか?」
アンジールの話が終わると、そう、ザックスが訊いた。
ああ、と、アンジールは頷く。
「どうやら、そうだったらしい」
「へえー。都会っ子らしいな。ゴンガガなんかじゃ、携帯が使えるようになったのって、最近の話だもん」
今の話を聞いて、感想はそれか…?__内心で、アンジールはぼやいた。
「都会っ子なのに全然、スレてなくてさ。やっぱセフィって可愛いよなー」
言ってザックスがニパッと笑った時、携帯の着信音が鳴った。
「エアリス…!全然、繋がらないから何かあったんじゃないかって心配__え?電源、入れ忘れてた?あー判る判る。オレもたまにやるしー」
幸せそうに話すザックスを見、アンジールは軽く笑った。
そして、夕食の後片づけを続ける。
「ゴメン、アンジール。すっかり話し込んじゃって、何も手伝えなかった」
「別に、良いさ」
やがて電話を切って謝ったザックスに、アンジールは言った。
「とにかく、エアリスが無事で良かったな」
「うん!」
満面の笑顔で、ザックスは答えた。
それから、ところで、と、続ける。
「さっきの話だけどさ。セフィがアンジールたちに送ったメールって、そんなに重要な用件だったのか?」
「…あー、嫌…」

曖昧に、アンジールは語尾を濁した。
無意識の内にがしがしと髪を乱し、それから口を開く。

「テストメールだった…」
ぽつりと、アンジールは言った。
「テストメール?」
「そうだ。テストメールだ」
鸚鵡返しに訊いたザックスに、アンジールは答える。
「ソレって、どういう意味?」
「…届くかどうか確かめる為に送っただけのメールだった__という意味だ」
「そんなのの返事が来ないからって、わざわざウータイまで行ったのか?」
ザックスの問いに、アンジールは頷いた。
何故か、説明するのが恥ずかしい。
「やっぱ、セフィってすげぇな」
感心して言ったザックスに、アンジールは全身の力が抜けるのを感じた。
そして、あの後、ジェネシスが、暫く立ち直れなかったのを思い出す。
アンジール自身、セフィロスの行動の意味が理解できず、暫く悩んだ。
後になって知った話だが、ウータイの空軍基地では時折、来襲するモンスターに悩まされていた。
それをセフィロスが掃討したとの目撃証言があり、一体、何の為に神羅の英雄がウータイのモンスター退治をしたのかと、暫くの間、物議をかもしたらしい。
セフィロスの行動は、無駄に多くの人間を悩ませたのだ。

だがそれも、今となっては良い思い出だ。
「明日も天気、良さそうだな…」
窓から満天の星空を眺め、アンジールは独り言のように呟いた。
神羅屋敷の1日は、今日も平穏に暮れていった。









■相手からのメールの返信が遅いとソワソワする【セフィロス】
セフィはソワソワなんてせずに、行動に出ると思います。
まあ、セフィの交友関係って社内に限られているので、大概は待ってるより直接、行った方が早い訳ですが。
そんなこんなで、神羅カンパニーには『英雄からメールを受け取ったら時と場合に拘わらず最優先で即、返信すべし』との不文律があったに違いありません(^_^;)

にしてもCCのザックスって、何で宝条の元から逃げた後に、カンセルにもエアリスにも連絡しなかったんでしょうね。
携帯を使うと居場所を特定される恐れがあるからって考え方もありますが、それだったら発信しなくてもカンセルのメールを受信した時点(と言うか、電源入れた時点)でアウトな訳だし。
それより何より、神羅から追われてるのに、神羅の本拠地たるミッドガルに向かっちゃった(しかもゴンガガにタークスが来てるの判ってて)ザックスに、そんな頭があったとは到底、思えな(ry

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